福島のフルーティーな日本酒5選 — 全国でいちばん「ブレない」香り系17本
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福島は当サイトのデータでは穏やかの県です。さけのわデータの「穏やか」県平均0.426は収録10銘柄以上の40都道府県中4位で、福島の日本酒おすすめ5選ではその話を書きました。
同じデータで「華やか」を数えると、本数だけは上位に来ます。収録1346銘柄の華やか値で上位25%の境界は0.414。福島県の77銘柄のうちこれを超えるのは17銘柄で、長野(33)、新潟(20)、山形(18)に次ぐ全国4位です。
ただし、この17本を並べてみると、これまで書いた長野・新潟・山形のどれとも違う性質が出てきました。17本が互いに似すぎているのです。
17本の平均コサイン類似度は0.985で全国1位
6軸フレーバーベクトルのコサイン類似度を、華やか上位25%が10本以上ある14県それぞれについて、群の内側の全ペアで計算しました。値が1に近いほど「県内の香り系が同じ形をしている」ことになります。
| 県 | 該当本数 | 群内の平均類似度 | 最も離れたペア |
|---|---|---|---|
| 福島県 | 17本 | 0.985 | 0.938 |
| 岐阜県 | 12本 | 0.981 | 0.939 |
| 山口県 | 11本 | 0.981 | 0.947 |
| 長野県 | 33本 | 0.978 | 0.893 |
| 秋田県 | 15本 | 0.977 | 0.912 |
| 新潟県 | 20本 | 0.967 | 0.839 |
| 山形県 | 18本 | 0.966 | 0.809 |
| 栃木県 | 12本 | 0.938 | 0.709 |
福島が14県で最も高く、最も離れた2本ですら0.938。山形(0.809)や栃木(0.709)と比べると、群として散らばっていないことがはっきりします。
6軸それぞれの最大値−最小値を足した幅でも同じ結果になります。福島の17本は1.025で14県中いちばん狭く、山形の18本(1.776)や栃木の12本(2.205)の半分程度です。
なぜ狭いのか — 端が両方とも切れている
軸ごとに範囲を見ると理由が分かります。
| 軸 | 福島17本の範囲 | 上位25%該当数 |
|---|---|---|
| 華やか | 0.419〜0.528 | 17本 |
| 芳醇 | 0.470〜0.643 | 2本 |
| 重厚 | 0.159〜0.328 | 0本 |
| 穏やか | 0.260〜0.531 | 2本 |
| ドライ | 0.181〜0.311 | 0本 |
| 軽快 | 0.398〜0.571 | 7本 |
ドライと重厚が、17本そろって上位25%(境界0.367/0.381)に届きません。ドライの最大値は0.311で、全国平均(0.310)をかろうじて超える1本があるだけです。
華やかも0.419〜0.528と狭く、上限が全国54位止まり。長野の最高値0.678、山形の0.628のような突き抜けた1本がいません。上も下も切れているので、17本が中間の帯に固まるという構造です。
華やか上位25%が10本以上ある14県のうち、ドライ上位25%が0本なのは福島・群馬・京都・兵庫・山口の5県ですが、17本という母数でこうなるのは福島だけです。
穏やかの県は、香り側でも穏やかさを2本残した
もうひとつ、県の性格の出方が他県と違います。県平均から華やか上位群への変化を見ると——
| 軸 | 華やか上位17本の平均 | 福島県平均 | 差 |
|---|---|---|---|
| 華やか | 0.455 | 0.353 | +0.102 |
| 芳醇 | 0.546 | 0.527 | +0.019 |
| 重厚 | 0.251 | 0.298 | -0.047 |
| 穏やか | 0.361 | 0.426 | -0.065 |
| ドライ | 0.246 | 0.296 | -0.050 |
| 軽快 | 0.476 | 0.433 | +0.043 |
穏やかが0.065落ちます。全国4位だった県平均0.426が、香り側に絞ると0.361まで下がって全国平均(0.393)を割る。ここまでは「香りに振ると県の看板を手放す」という、山形や新潟と同じ話です。
違うのはその先です。華やかと穏やかの両方が上位25%に入る銘柄は、全国1346銘柄でわずか9本しかありません。この9本の内訳は山形2・新潟2・京都2・福島2・宮崎1。福島は最多タイの2本を持っています。兵庫・栃木・宮城・群馬はいずれも0本です。
群としては穏やかさを手放しているのに、例外的な2本は残している。以下の5本には、その1本も入れました。
17本=11蔵、選び方の前提
もうひとつ数字を出しておきます。福島の17本は11蔵から出ています。長野は33本で30蔵、新潟は20本で18蔵、山形は18本で16蔵、秋田は15本で12蔵。福島だけ1蔵あたりの本数が多く、同じ蔵の銘柄が並んでいるから群がまとまって見えるのでは、と疑いました。
結果は逆でした。17本の136ペアを分けると、同じ蔵どうしの7ペアの平均類似度は0.9858、違う蔵どうしの129ペアは0.9848。ほぼ差がありません。最も近いペア(0.9996)も違う蔵の2銘柄でした。福島の香り系が似ているのは、蔵が重なっているせいではなく、県として同じ帯に集まっているからです。
そこで17銘柄を6軸で比べ、蔵を重複させず、互いのコサイン類似度がなるべく低くなる5本を選びました。5本の全10ペアの類似度は0.946〜0.989、平均0.976です。前提として似た群なので数値は高めですが、この5本が福島のなかでは最も離れた組み合わせになります。並び順は華やか値の高い順です。
なお冩楽・楽器正宗・ロ万・天明もこの17本に入りますが、知名度が高いぶん比較の役に立ちにくいので、後半の表にまとめました。
1. 名倉山(名倉山酒造)|県内の華やか1位、そのぶん穏やかが県内75位
華やか0.528は収録1346銘柄中全国54位(上位4.0%)で、福島県77銘柄のなかでは1位です。
同時に穏やか0.265が県内75位(全国では下位9.1%)。重厚0.196も下位7.6%です。芳醇0.580は上位28.2%とやや高め、ドライ0.299と軽快0.433はどちらも全体平均のあたりに落ち着きます。
香りだけを県内最高まで持ち上げ、丸みと重さを削り、キレと軽さは平均どおりに置いたという形。穏やかの県・福島にあって、穏やか値が県内で下から3番目という位置にいます。
今回の5本のなかでは、5本目の「わ」との類似度0.946が全10ペア中で最も低い値でした。17本全体の136ペアで見ても2番目に離れたペアです。同じ「福島のフルーティー」の両端がこの2本になります。
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2. 猫魔の雫(末廣酒造)|17本で唯一、ドライが全国平均を超える
華やか0.446は上位16.8%(県内9位)。注目はドライ0.311で、これは17本のなかで唯一、全国平均0.310を超える値です。とはいえ全国617位で、上位25%の境界0.367には遠く届きません。
他の軸は穏やか0.422(上位37.4%)、重厚0.272(下位32.4%)、芳醇0.506(下位30.9%)、軽快0.443(ほぼ全体平均)。
どの軸も極端に振れず、香りだけが一段高いバランス型です。福島の17本のうちキレが最も残っている1本であり、同時に群の中心に最も近い1本でもあります。5本の全10ペアで、猫魔の雫が絡む4ペアの類似度は0.979〜0.989と、いずれも高い側に来ます。
香りのある酒を選びたいが、飲み終わりが甘く残るのは避けたい——という条件では、17本のなかでこれが上限です。
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3. 自然郷(大木代吉本店)|軽快全国78位、香り+軽さの極
華やか0.433(上位19.8%)に対して、軽快0.571が全国78位(上位5.8%)。福島県内では3位の高さです。
対して重厚0.205は下位10.0%、芳醇0.499も下位26.7%、ドライ0.248は下位28.3%、穏やか0.367はほぼ全体平均です。
香りを軽さに乗せて、厚みと重さを抜いたという、17本のなかで最も分かりやすい「香り+軽さ」型。福島の17本は7本が軽快上位25%に入りますが、その筆頭がこれです。
1本目の名倉山とは、華やか0.528対0.433、軽快0.433対0.571とちょうど裏返しの関係になります。香りの高さを取るか、飲み口の軽さを取るかの分岐点です。
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4. からはし(ほまれ酒造)|芳醇全国60位、香り+旨味の側
華やか0.422は上位22.4%で17本の下限に近い位置。かわりに芳醇0.643が全国60位(上位4.5%)まで来ます。県内77銘柄では4位です。
そのぶん軽快0.398は下位38.8%で、5本のなかでは最も低い値。穏やか0.348、ドライ0.251、重厚0.258はいずれも全体平均以下です。
香りが立って旨味の厚みもあり、軽さとキレを両方削ってあるという形。3本目の自然郷とは芳醇0.643対0.499、軽快0.398対0.571と正反対で、この2本の類似度0.973は5本の全10ペアで4番目に低い組み合わせです。
香りのある酒を単体でゆっくり飲むなら、17本ではこの方向が最も間が持ちます。料理と合わせるなら、味の押しがある側——揚げ物や照り焼きのように、こちらも厚みで受けられるものと重なります。
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5. わ(男山酒造店)|全国9本しかない「華やか×穏やか」の1本
華やか0.426(上位21.3%)に、穏やか0.531が乗ります。これは全国86位(上位6.4%)で県内8位。先に触れた、華やかと穏やかの両方が上位25%に入る全国9本のうちの1本です。
芳醇0.470は下位16.1%で17本の最低値、ドライ0.230は下位21.8%、軽快0.418も下位47.0%とやや低め。重厚0.296だけが全体平均に近く、5本のなかでは最高値です。
香りはあるのに、鋭くも軽くもなく、当たりが柔らかいという並び。フルーティー=華やかと軽快が同時に尖るもの、という等式から明確に外れる1本です。
17本全体の136ペアのうち、最も離れた5ペアはすべて「わ」が片方に入っていました。穏やかの県・福島が香り側でも手放さなかった性格が、この1本に集まっています。香りのある酒を飲みたいが刺激は要らない、という向きの数値です。
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人気銘柄から選ぶなら
福島の華やか上位25%のうち、さけのわランキングに入っているのは次の4銘柄です。
| 銘柄 | ランキング | 華やか | 芳醇 | 穏やか | ドライ | 軽快 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 冩楽 | 10位 | 0.436 | 0.618 | 0.390 | 0.217 | 0.411 |
| 楽器正宗 | 27位 | 0.508 | 0.528 | 0.260 | 0.233 | 0.563 |
| ロ万 | 53位 | 0.447 | 0.552 | 0.468 | 0.196 | 0.432 |
| 天明 | 76位 | 0.448 | 0.542 | 0.347 | 0.237 | 0.507 |
4本ともドライは0.196〜0.237で、全国平均(0.310)を大きく下回ります。福島のフルーティーで人気を取っているのは、例外なくキレを主張しない側という結果です。
一方で第二の軸はばらけます。冩楽は芳醇0.618(上位11.3%)の旨味型、楽器正宗は軽快0.563(上位7.1%)・穏やか0.260(下位8.3%)の軽さ型、ロ万は穏やか0.468で先ほどの「華やか×穏やか」全国9本のもう1本、天明は軽快0.507のやや軽さ寄り。同じ福島の人気銘柄でも、穏やかは0.260から0.468まで開きます。
もっと香りの強い方向に振りたいなら
華やか値だけを追うなら、福島の上位はこの並びです。
| 銘柄 | 全国順位 | 華やか | 芳醇 | 穏やか | 軽快 |
|---|---|---|---|---|---|
| 名倉山 | 54位 | 0.528 | 0.580 | 0.265 | 0.433 |
| 楽器正宗 | 83位 | 0.508 | 0.528 | 0.260 | 0.563 |
| 会津男山 | 90位 | 0.505 | 0.577 | 0.284 | 0.444 |
| 玄宰 | 103位 | 0.496 | 0.550 | 0.306 | 0.524 |
| 央 | 113位 | 0.491 | 0.523 | 0.300 | 0.537 |
| 人気一 | 194位 | 0.455 | 0.540 | 0.319 | 0.484 |
県内最高の名倉山で全国54位。長野の最高値(0.678)や山形(0.628)のような突出した1本はいませんが、0.49超えが5本並びます。
そして華やか上位5本の穏やかは0.260〜0.306と、そろって全国平均(0.393)を下回ります。福島では香りを追うほど穏やかさが落ちる、という関係が上位ほどはっきり出るということです。穏やかさも欲しいなら、華やかは0.42〜0.45の帯——今回の4本目・5本目やロ万のあたりで止めるのが、データ上の落としどころになります。
福島でフルーティーを選ぶときの物差し
福島の華やか上位25%は17本で全国4位。ただし比率では22.1%で40県中20位と、ちょうど真ん中です。本数は母数(77銘柄)の産物と言えます。
そして17本は、群内の平均類似度0.985で14県中いちばんまとまっています。ドライも重厚も上位25%に1本も入らず、華やかの上限も全国54位止まり。どれを選んでも大きく外さない代わりに、違いは微差で見るしかないというのが福島の形です。
微差を見るときの物差しは2つです。ひとつは軽快(17本で0.398〜0.571、7本が上位25%)、もうひとつは穏やか(0.260〜0.531で、この幅が福島では最も広い)。香りに軽さを足すのか、丸みを足すのか。県平均が穏やか全国4位である以上、後者を選べる銘柄が残っているのが福島の強みです。
フルーティー全般の選び方はフルーティーな日本酒の選び方、県全体の傾向は福島の日本酒おすすめ5選、当たりの柔らかい酒の探し方は日本酒の選び方にまとめています。
自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。