唐揚げに合う日本酒5選 — 「にんにくの下味」と「衣の油」を切るか受けるかで選ぶ

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唐揚げは揚げ物のなかでも日本酒を合わせにくい料理だと思われがちです。理由は、味の強いものが二重になっている点にあります。天ぷらが「淡い種+衣の油」であるのに対して、唐揚げは下味のにんにく・生姜・醤油が肉の内側まで入っていて、その外側に片栗粉の衣の油がある。つまり味の強い肉と油を同時に相手にすることになります。

そこへさらに、食べ方の分岐が乗ります。レモンを搾るのか、マヨネーズやタルタルを付けるのか、甘酢やヤンニョムのタレで和えるのか。唐揚げは同じ名前でも、味の重心が食べ方で大きく動く料理です。

唐揚げに合わせる日本酒を選ぶときの考え方は、次の3つです。

  • 衣の油には「キレ」か「軽さ」 — 後口を断ち切るドライか、そもそも口に残らない軽快。唐揚げは手が止まらない料理なので、口の中に積み上がらないことが大事
  • 下味の香りとは張り合わない — にんにくと生姜が効いた下味に華やかな吟醸香を当てても、香りは潰れる。香りを立てたいのは塩やレモンで食べるときだけ
  • タレ・マヨ・甘酢には旨味か厚みで受ける — 「味のついた土台」が乗る食べ方では、キレだけの酒は途中で消えてしまう

当サイトが利用しているさけのわデータの飲用レビュー(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快の6軸)から、さけのわランキング100銘柄を対象に、唐揚げの食べ方別で5本を選びました。5本のうち最も味の方向が離れているのは2番の甲子と4番の天狗舞(コサイン類似度0.824)で、同じ「唐揚げに合う日本酒」でもここまで振り幅があります。逆に最も近いのは1番の上喜元と2番の甲子(0.977)です。

1. もも肉・にんにく醤油の王道唐揚げを揚げたてで — 上喜元(山形県・酒田酒造)

「ドライ」が0.429で全収録1346銘柄のなかで上位11.4%、ランキング100銘柄では5番目に高く、同時に「軽快」も0.541で全体上位10.8%(同28位)。キレと軽さを両方持っているのがこの1本の特徴です。一方で「芳醇」は上位88.8%(同91位)、「重厚」は上位82.5%(同59位)と、旨味の厚みとボリュームは下位に沈んでいます。

もも肉のにんにく醤油唐揚げは、脂と下味の塩気が噛むたびに口に残っていく料理です。ここで酒に求められる仕事は、残ったものを流して次の一個に備えること。旨味が薄いぶん下味の上に味を足さず、「華やか」が上位37.8%(同74位)と中庸なのでにんにくと香りで張り合いません。揚げたてを冷やしたグラスで、ビールやハイボールの代わりに飲む使い方がいちばん噛み合います。

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2. 塩唐揚げ・むね肉やささみに、レモンを搾って — 甲子(千葉県・飯沼本家)

「華やか」が0.514で全体上位5.8%(ランキング100銘柄では15位)、「軽快」も0.571で同じく上位5.8%(同15位)。そのうえ「重厚」は上位95.4%(同91位)、「穏やか」は上位95.5%(同95位)、「芳醇」は上位87.6%(同89位)と、重さ・まろやかさ・旨味がどれも最下位クラスです。香りと軽さだけで構成された型と言っていい配置です。

塩で下味をつけた唐揚げや、むね肉・ささみを使った唐揚げは、にんにく醤油の唐揚げと違って肉そのものの淡い甘みと衣の香ばしさが主役になります。ここに厚い旨味を当てると酒だけが残り、強いキレを当てると淡さが消えます。香りの高いタイプを合わせられるのは、下味が強くないこの食べ方だけです。レモンを搾ったときの柑橘の酸と、華やかな香りの方向が近いので、同じ方向に揃えると素直にまとまります。「ドライ」も上位35.0%(同26位)と平均より効いているので、衣の油はきちんと流れます。

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3. マヨ・タルタル・ヤンニョム・油淋鶏のタレに — 東洋美人(山口県・澄川酒造場)

「芳醇」が0.623で全収録1346銘柄のなかで上位9.0%、ランキング100銘柄では5位。「華やか」も0.488で全体上位8.7%(同28位)と、旨味の厚みと香りの高さを同時に持つ構成です。「ドライ」は上位85.3%(同78位)、「軽快」は上位63.8%(同90位)と、キレと軽さでは勝負しません。

マヨネーズやタルタルを付ける食べ方、ヤンニョムや油淋鶏の甘酢だれで和える食べ方では、唐揚げの上に濃い味の層がもう一枚乗ります。この状態の料理に1番のようなキレ重視の酒を合わせると、タレの味が口に残ったまま酒だけが先に消えてしまう。必要なのは受け止める側の厚みです。甘みのあるタレには香りの高さも効くので、「芳醇」と「華やか」が両方上位にあるこの型が扱いやすい選択になります。冷やしすぎるとせっかくの旨味が出てこないので、少し温度を上げて飲むとタレと馴染みます。

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4. 冷めた唐揚げ・作り置きや弁当のおかずに、ぬる燗で — 天狗舞(石川県・車多酒造)

「重厚」が0.517で全収録1346銘柄のなかで上位6.5%(ランキング100銘柄では4位)、「芳醇」も0.614で全体上位12.3%(同9位)。旨味とボリュームがどちらも最上位にあります。反対に「華やか」は上位89.5%(同97位)、「軽快」は上位90.0%(同97位)と、香りと軽さはランキング100銘柄のなかで最下位クラスです。今回の5本で最も味の方向が離れているのが、この天狗舞と2番の甲子(類似度0.824)という組み合わせです。

冷めた唐揚げは、揚げたてと別の料理になります。衣の香ばしさが落ち、脂が固まって重く感じられ、代わりに下味の醤油とにんにくの味だけがはっきり残る。この状態に軽い酒を合わせると、酒のほうが先に消えてしまいます。厚みで受け止めるほうが噛み合うので、作り置きの唐揚げや弁当のおかずをつまみにするなら、こちらの方向です。重厚タイプは温度を上げると表情が開くことが多いので、ぬる燗にして冷めた唐揚げの重さと同じ温度帯に揃えると馴染みます。「穏やか」が上位47.8%(同24位)と平均より高いのも、燗にしたときに角が立ちにくい利点になります。

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5. 唐揚げ定食・居酒屋の一品として1本で通すなら — 飛良泉(秋田県・飛良泉本舗)

6軸の全体順位が上位27.0%〜60.5%の範囲にすべて収まる、ランキング100銘柄のなかで2番目に振れ幅の小さい銘柄です。内訳は「重厚」が上位43.2%(同12位)、「穏やか」が上位42.6%(同21位)、「軽快」が上位27.0%(同52位)、「華やか」が上位40.4%(同78位)、「芳醇」が上位57.2%(同45位)、「ドライ」が上位60.5%(同46位)。厚み・まろやかさ・軽さをどれも平均前後で持ち合わせた中庸型です。

唐揚げだけで食卓が終わることは少なく、実際には定食のご飯と味噌汁、居酒屋なら枝豆や冷奴、サラダ、締めの麺類などが一緒に並びます。そういう味の濃さがバラバラな食卓では、どれか1つの軸に振り切った酒はどこかで必ず噛み合わなくなります。レモンを搾った一個目から、マヨを付けた三個目、冷めかけた最後の一個までを1本で通したいときは、特徴の尖っていないほうが扱いやすい。「華やか」が控えめなのも、にんにくの香りが行き交うテーブルでは利点です。

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レモンとマヨで、同じ唐揚げが別の料理になる

唐揚げは酒の側だけでなく、食べる側の調整幅が大きい料理です。何も付けずに食べると下味と油が主役になり、酒に求められるのはキレと軽さになります。レモンを搾ると酸が加わって全体が軽くなり、香りの高いタイプを合わせる余地が生まれる。マヨやタルタル、甘酢のタレを足すほど「味のついた土台」が厚くなり、3番のような旨味のあるタイプが効いてきます。合う酒がわからないときは、酒を変える前にレモンを搾るかタレを変えてみると、手持ちの1本のままで噛み合うことがあります。

温度は、揚げたてにはよく冷やしてキレを立たせ、冷めた唐揚げや濃いタレで和えたものには冷やしすぎないほうが馴染みます。2本以上開けるならキレるタイプ・軽いタイプ(1・2番)から、旨味と厚みのあるタイプ(3・4番)へという順番にすると、後から飲む酒が水っぽく感じられません。

同じ揚げ物でも衣の薄い天ぷらでは酒に求める役割が変わるので天ぷらに合う日本酒5選、鶏の脂と塩・タレの組み合わせは焼き鳥に合う日本酒5選、にんにくの強い香りをどう扱うかは餃子に合う日本酒5選が参考になります。自分の好みがキレ重視なのか旨味重視なのかは1分の日本酒診断でわかるので、唐揚げを揚げる前に一度確かめてみてください。