新潟のフルーティーな日本酒5選 — 「淡麗辛口」の県に華やか上位25%が20銘柄
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新潟の日本酒に「フルーティー」を期待して棚の前に立つ人は、たぶんあまりいません。淡麗辛口という言葉が強すぎるからです。
ただ、当サイトが利用しているさけのわデータで数えると、話は少し変わります。収録1346銘柄の「華やか」値で上位25%の境界は0.414。新潟県の112銘柄のうち、これを超えるのは20銘柄で、本数では長野県(33銘柄)に次ぐ全国2位です。
新潟は「華やかな県」ではない、でも本数はある
まず県全体の数値を確認します。新潟県112銘柄の平均値と全国平均です。
| 軸 | 新潟平均 | 全国平均 | 差 |
|---|---|---|---|
| 華やか | 0.324 | 0.339 | -0.014 |
| 芳醇 | 0.516 | 0.535 | -0.019 |
| 重厚 | 0.317 | 0.328 | -0.011 |
| 穏やか | 0.408 | 0.393 | +0.015 |
| ドライ | 0.342 | 0.310 | +0.032 |
| 軽快 | 0.428 | 0.422 | +0.006 |
華やかは全国平均を下回っています。県平均の華やか値で見ると、新潟は収録10銘柄以上の40都道府県中27位。上位25%に入る銘柄の比率でも18%(20/112)で26位と、どちらも下から数えたほうが早い位置です。
それでも本数が全国2位になるのは、単純に収録銘柄数が112と全国最多だからです。全国の華やか上位50銘柄のうち4本、上位100銘柄のうち7本が新潟で、どちらも都道府県別トップタイ。県内の華やか値も0.060から0.585まで広がっています。
つまり新潟は、県の傾向としては香り控えめ、それでも母数が大きいぶん華やかな銘柄の絶対数は多い県です。「新潟だからフルーティー」は成立しませんが、「新潟にフルーティーがない」も同じくらい成立しません。
新潟のフルーティーは、辛口の延長線上にはない
もうひとつはっきり出ているのがこれです。華やか上位25%の20銘柄について、6軸の平均を県全体と並べます。
| 軸 | 華やか上位20本の平均 | 新潟県平均 | 差 |
|---|---|---|---|
| 華やか | 0.484 | 0.324 | +0.160 |
| 芳醇 | 0.531 | 0.516 | +0.015 |
| 重厚 | 0.238 | 0.317 | -0.079 |
| 穏やか | 0.304 | 0.408 | -0.104 |
| ドライ | 0.242 | 0.342 | -0.100 |
| 軽快 | 0.495 | 0.428 | +0.067 |
ドライが県平均から0.100も下に落ちます。20本のドライ値は0.119〜0.385で、上限ですら県平均(0.342)をわずかに超える程度。ドライ上位25%の境界0.367を超えるのは菱湖(0.385)の1本だけです。
一方で軽快は上がります。20本のうち11本が軽快でも上位25%(境界0.484)に入っていて、これが新潟のフルーティーの主流の形です。
要するに新潟の華やか系は、淡麗辛口に香りを足したものではなく、キレと落ち着きを引いて香りと軽さに置き換えたもの。県のイメージの延長ではなく、別系統として存在しています。
そこで20銘柄を6軸フレーバーベクトルで比べ、互いのコサイン類似度がなるべく低くなるように(=香りの出方と、それに組み合わさる味の方向が重ならないように)5本を選びました。蔵は重複させていません。並び順は華やか値の高い順です。
なお、たかちよ・加茂錦・雅楽代・菱湖はいずれも華やか上位25%に入りますが、新潟の日本酒おすすめ5選と新潟の辛口日本酒5選で扱っているのでここでは外しています(人気銘柄については後半にまとめました)。
1. 翔空(LAGOON BREWERY)|香りと旨味が両方あり、キレはない
華やか0.563は収録1346銘柄中全国27位(上位2%)。新潟県内では2位です。
ここに芳醇0.623(上位9%)が乗ります。対してドライ0.128は下位3%、穏やか0.130に至っては下位1%。重厚0.245は下位22%、軽快0.449はほぼ全体平均どおりです。
香りが強く、旨味の厚みもあり、キレも丸みも数値がほとんど出ていないという形。今回の5本で華やかと芳醇がそろって上位10%に入るのはこの1本だけです。飲み進めて消えていく方向ではなく、一杯の中で香りと甘みの余韻が残る側の数値をしています。
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2. 越弌(越後鶴亀)|軽快全国14位、香り以外はすべて削られている
華やか0.535は全国44位(上位3%)。そこに軽快0.669が組み合わさり、これは収録1346銘柄中全国14位(上位1%)です。
低いほうの数値が徹底しています。重厚0.155は下位2%、穏やか0.186も下位2%、ドライ0.153が下位5%、芳醇0.429も下位7%。華やかと軽快の2軸だけが突出し、残り4軸がすべて全体下位1割に沈むという、今回の5本で最も極端なプロフィールです。
同じ新潟の華やか上位でも、1本目の翔空との類似度は0.951。数値の形としては、香りを軽さに乗せて流し込む方向で、旨味の厚みを求める人とは逆を向きます。
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3. N-888(新潟銘醸)|フルーティーだが軽くはない
華やか0.512は上位6%(全国81位)、芳醇0.587も上位24%と全国平均を上回ります。
特徴は軽快0.411で、これは下位44%とほぼ全体平均。重厚0.304も全体平均どおり(下位47%)です。ドライ0.193は下位12%、穏やか0.307は下位17%。
新潟の華やか上位20本のうち11本が軽快でも上位25%に入るなかで、香りは高いのに軽さを売りにしていない側の1本です。フレーバーの重心が中央寄りにあるぶん、香りだけ浮くタイプが苦手な人には合いやすい数値の並びをしています。
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4. 髙龗(高千代酒造)|香りと軽さの両立型、県内の主流の形
華やか0.483は上位10%(全国130位)、軽快0.541も上位11%。この「華やか上位25%かつ軽快上位25%」が、先に見た新潟のフルーティー20本のうち11本を占める主流パターンで、髙龗はその代表的な数値です。
重厚0.195は下位7%、穏やか0.317は下位19%。芳醇0.499はほぼ全体平均、ドライ0.294も平均をやや下回る程度で、極端な低さはありません。
香りが立って口当たりが軽く、どっしり感だけをはっきり削った形。今回の5本のなかでは尖りすぎず、新潟のフルーティーを試す最初の基準点として使いやすい位置にいます。
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5. 宣機の一本(白瀧酒造)|穏やか上位3%、香りが立つのに落ち着いている
華やか0.439は上位18%と今回の5本では控えめな位置。代わりに穏やか0.579が全国40位(上位3%)まで来ます。
これが今回の並びで最も珍しい組み合わせです。20本の穏やか値は0.130〜0.579で、宣機の一本がその上限。他の4本が軒並み穏やか下位2〜19%であることを考えると、同じ「新潟のフルーティー」のなかで完全に逆側にいます。実際、越弌との類似度0.839は5本の全10ペア中で最も低い値でした。
軽快0.304は下位11%、重厚0.249は下位23%、芳醇0.501とドライ0.257はほぼ全体平均。香りはあるのに、軽くもなく、当たりが柔らかいという形で、フルーティー=軽快という等式から外れる側の1本です。香りのある酒を飲みたいが刺激は要らない、という向きの数値をしています。
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人気銘柄から選ぶなら
新潟の華やか上位25%のうち、さけのわランキングに入っているのは次の4銘柄です。
| 銘柄 | ランキング | 華やか | 軽快 | ドライ |
|---|---|---|---|---|
| 加茂錦 | 24位 | 0.477 | 0.555 | 0.246 |
| たかちよ | 33位 | 0.555 | 0.521 | 0.153 |
| あべ | 41位 | 0.466 | 0.596 | 0.209 |
| 雅楽代 | 64位 | 0.462 | 0.631 | 0.300 |
4本とも軽快が上位25%(境界0.484)に入り、4本ともドライは全国平均(0.310)以下です。新潟のフルーティーで人気を取っているのは、例外なく「香り+軽さ、キレは控えめ」の形という結果になります。県のイメージとはっきり違う方向のものが選ばれている、と読めます。
もっと香りの強い方向に振りたいなら
華やか値だけを追うなら、新潟の上位はこの並びです。いずれも全国100位以内に入ります。
| 銘柄 | 華やか | 芳醇 | 軽快 |
|---|---|---|---|
| 越後鶴亀 | 0.585 | 0.530 | 0.456 |
| 翔空 | 0.563 | 0.623 | 0.449 |
| たかちよ | 0.555 | 0.577 | 0.521 |
| 越弌 | 0.535 | 0.429 | 0.669 |
| イットキー | 0.519 | 0.625 | 0.377 |
| ゆきのまゆ(醸す森) | 0.513 | 0.519 | 0.592 |
県内最高の越後鶴亀(0.585)で全国22位。長野の最高値(0.678)ほど突き抜けた1本はいませんが、0.5超えが6本並ぶ厚みがあります。
この6本でも芳醇は0.429〜0.625、軽快は0.377〜0.669と開くので、華やか値が近い銘柄を比べるときは、芳醇か軽快を第二の物差しにすると方向を取り違えにくくなります。
新潟でフルーティーを選ぶときの物差し
新潟のフルーティーは、県の看板から探しても出てきません。県平均は華やか27位、比率26位で、棚の多数派は今も別の方向です。
ただし本数は全国2位あり、その20本は今回の5本のように、軽快0.304から0.669まで、穏やか0.130から0.579まで散らばります。共通しているのはドライが低いことだけで、それ以外は形がばらばらです。
香りに何を組み合わせたいのか——軽さか、旨味の厚みか、当たりの柔らかさか。先にそこを決めるほうが確実です。フルーティー全般の選び方はフルーティーな日本酒の選び方、県内の辛口側は新潟の辛口日本酒5選にまとめています。
自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。