新潟の辛口日本酒5選 — 「ドライ」上位25%の42銘柄から味の違う5本を選ぶ

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新潟で辛口を探すとき、多くの人は名前を知っている数本のなかから選びます。ただ、当サイトが利用しているさけのわデータで見ると、新潟の「辛口」はもっと層が厚く、しかも中身がかなり違います。

収録1346銘柄の「ドライ」値で上位25%の境界は0.367。新潟県の112銘柄のうち、これを超えるのは42銘柄です。

新潟は「辛口の本数」が全国一、ただし突き抜けた激辛はいない

ドライ上位25%に入る本数を都道府県別に並べると、新潟の42はぶっちぎりの1位です(2位は山形県の25、3位は長野県の22)。

一方で県平均のドライ値は0.342で、収録10銘柄以上の40都道府県中8位。高知(0.416)、青森(0.408)、静岡(0.368)のほうが上です。全国のドライ上位10銘柄を見ても新潟勢はゼロで、県内最高の鬼山間(0.656)で全国15位。

つまり新潟の辛口は、「一本の尖り方」ではなく「辛口の在庫の厚さ」で全国一という形をしています。選択肢が多いぶん、同じ辛口でも当たり外れが出やすい、とも言えます。

そこで42銘柄を6軸フレーバーベクトルで比べ、互いのコサイン類似度がなるべく低くなるように(=味の方向が重ならないように)5本を選びました。蔵は重複させていません。並び順はドライ値の高い順です。

なお久保田・八海山・〆張鶴・鶴齢といった定番は、新潟の日本酒おすすめ5選辛口日本酒入門で扱っているのでここでは外しています。

1. 鬼山間(新潟第一酒造)|県内最辛、そして落ち着きがない

ドライ0.656は収録1346銘柄の上位1%(全国15位)、新潟県内では最高値です。特徴的なのは穏やか0.139で、これは全体の下位1%。県内でも下から3番目の低さです。

華やか0.179も下位8%なので、香りも丸みもほとんど出さず、キレだけが極端に立っているという数値の形になります。今回の5本のなかで他の4本との類似度が最も低く(最大でも0.959、最小は夏子物語との0.850)、新潟の辛口としてはかなり例外的な位置にいます。

淡麗辛口という言葉から連想される「上品でおとなしい」タイプを期待すると外れます。逆に、辛口を名乗る酒を飲んで「これのどこが辛口なのか」と思ってきた人向きの数値です。

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2. 麒麟山(麒麟山酒造)|キレは上位3%、なのに全体は静か

ドライ0.561は上位3%(全国36位)と鬼山間に次ぐ高さですが、穏やか0.396はほぼ全体平均どおり(下位49%)。ここが1本目との決定的な違いです。

さらに芳醇0.433は下位7%、重厚0.243も下位21%と、旨味の厚みは意識的に削がれた側の数値。軽快0.475は上位29%です。まとめるとキレが強く、旨味の厚みは薄く、それでいて角は立っていないという形になります。

味の濃い料理に合わせると存在感が消えますが、塩・出汁・酢のように輪郭のはっきりした薄味の料理と並べたときに数値どおり働くタイプです。飲み続けて舌が疲れにくい方向でもあります。

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3. 菱湖(峰乃白梅酒造)|香りのある辛口という珍しい組み合わせ

ドライ0.385(上位20%)に、華やか0.437(上位19%)が乗っています。辛口上位25%かつ華やかも上位25%という銘柄は多くなく、新潟の42本のなかでは最も華やか値が高い1本です。

重厚0.207は下位10%、穏やか0.290も下位13%、軽快0.531は上位14%。香りは立つのに、どっしり感も丸みもなく、するっと消えるという組み合わせで、辛口=香りが弱い、という思い込みから最も遠い数値をしています。

冷やして小さめのグラスで飲むと香りとキレの両方が拾えます。今回の5本で唯一、華やか軸で選んでも成立する辛口です。

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4. 夏子物語(久須美酒造)|穏やか上位2%の、当たりの柔らかい辛口

ドライ0.383は上位21%と辛口側にありながら、穏やか0.603は上位2%。今回の5本で最も丸い数値です。鬼山間との類似度0.850は、5本の全10ペア中で最も低い組み合わせでした。同じ「新潟の辛口」でここまで離れます。

華やか0.199は下位11%、芳醇0.429は下位7%、軽快0.393は下位36%。香りも旨味の厚みも前に出さず、口当たりの柔らかさとキレだけで構成されている形です。

キレのある酒はアルコールの当たりが強く感じられることがありますが、この数値の並びはその逆方向。辛口が好きだが刺激は要らない、という人に向きます。

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5. 萬寿鏡(マスカガミ)|旨味を残したまま辛口側にいる

ドライ0.380(上位21%)に対し、芳醇0.574は**上位32%**で全国平均(0.535)を上回ります。今回の5本で唯一、旨味の厚みが平均以上にある辛口です。

華やか0.330・重厚0.299・穏やか0.418はいずれもほぼ全体平均で、軽快0.392は下位36%。尖った軸がなく、旨味が少し厚めで、そのぶん軽さは控えめというバランス型です。

数値上は久保田・八海山・〆張鶴といった県内の定番と類似度0.99台と非常に近く、「新潟の辛口の標準形」に最も近い位置にいます。今回の5本のなかでは基準点として使える1本で、これを飲んでから他の4本に行くと差が分かりやすくなります。

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もっと辛い方向に振りたいなら

ドライ値だけを追うなら、新潟の上位はこの並びです。いずれも全国上位50位以内に入ります。

銘柄 ドライ 穏やか 軽快
鬼山間 0.656 0.139 0.461
想天坊 0.652 0.256 0.531
凌駕 0.602 0.295 0.568
雪男 0.588 0.439 0.423
魚沼 0.573 0.404 0.452
越乃景虎 0.552 0.449 0.433

同じ0.55以上でも、穏やか0.139の鬼山間と0.449の越乃景虎では飲んだ印象がかなり変わります。ドライ値が近い銘柄同士を比べるときは、穏やか軸を第二の物差しにすると外しにくくなります。

新潟で辛口を選ぶときの物差し

新潟県内のドライ値は0.062から0.656まで広がっていて、「新潟だから辛口」はまったく成立しません。逆に辛口側に絞っても、今回の5本のように穏やか0.139から0.603まで、華やか0.179から0.437まで散らばります。

辛口のなかでどこに行きたいのか——キレの強さそのものか、当たりの柔らかさか、香りか、旨味か。先にそこを決めるほうが確実です。自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。