山形のフルーティーな日本酒5選 — 本数は全国3位、でも「軽い香り系」は少ない県

※ 本記事にはアフィリエイト広告(PR)のリンクを含みます

山形は、当サイトのデータでは辛口の県です。さけのわデータの「ドライ」県平均0.356は収録10銘柄以上の40都道府県中5位で、山形の辛口日本酒5選ではその話を書きました。

同じデータで「華やか」を数えると、まったく別の顔が出てきます。収録1346銘柄の華やか値で上位25%の境界は0.414。山形県の63銘柄のうちこれを超えるのは18銘柄で、長野(33)、新潟(20)に次ぐ全国3位です。

本数は3位、県平均は16位

まず県全体の数値です。山形県63銘柄の平均と全国平均を並べます。

山形平均 全国平均
華やか 0.349 0.339 +0.010
芳醇 0.512 0.535 -0.023
重厚 0.290 0.328 -0.038
穏やか 0.400 0.393 +0.007
ドライ 0.356 0.310 +0.046
軽快 0.435 0.422 +0.013

華やかは全国平均をわずかに上回る程度で、県平均の順位は40都道府県中16位。上位25%に入る比率でも28.6%(18/63)で15位です。1位の長崎県は60.0%、2位の山口県は52.4%なので、比率で見れば山形は中位の県ということになります。

それでも本数が3位まで来るのは、収録63銘柄という母数の大きさによるものです。山形は比率でいえば普通の県、本数でいえば上位の県という位置にいます。

香りの側に振ると、山形はドライを手放す

面白いのは、辛口県である山形の華やか上位18本が、県平均からどう外れているかです。

華やか上位18本の平均 山形県平均
華やか 0.466 0.349 +0.117
芳醇 0.528 0.512 +0.015
重厚 0.252 0.290 -0.038
穏やか 0.354 0.400 -0.046
ドライ 0.271 0.356 -0.085
軽快 0.458 0.435 +0.023

ドライが0.085も落ちます。県平均0.356は全国5位の高さでしたが、華やか上位18本だけを見ると0.271で全国平均(0.310)を下回ります。18本のうちドライが上位25%(境界0.367)に残るのは1本だけです。

この「県平均から華やか群への落差」を、華やか上位25%が10本以上ある14県で比べると、山形の-0.085は新潟(-0.100)に次ぐ2番目の大きさでした。辛口の県ほど、香りの側に振ったときの落差が大きいという並びになっています。

ただし「軽い香り系」ではない

もうひとつ、新潟や長野との違いがはっきり出る数字があります。華やか上位25%の銘柄が、他の軸でも上位25%に入っている割合です。

華やか上位25%の本数 うち芳醇も上位25% うち軽快も上位25%
山形県 18本 5本(28%) 5本(28%)
新潟県 20本 4本(20%) 11本(55%)
長野県 33本 5本(15%) 17本(52%)
群馬県 13本 2本(15%) 11本(85%)

新潟のフルーティーでは20本中11本が軽快でも上位25%に入り、「香り+軽さ」が主流の形でした。山形はそれが18本中5本(28%)しかありません。かわりに芳醇が上位25%に入る割合は28%で、この4県のなかでは最も高くなります。

つまり山形の華やか系は、香りを軽さに乗せるより、旨味の側に置いている銘柄が相対的に多いということです。同じ「フルーティー」でも、県によって組み合わさる第二の軸が違います。

そこで18銘柄を6軸フレーバーベクトルで比べ、互いのコサイン類似度がなるべく低くなるように(=香りの出方と、それに組み合わさる味の方向が重ならないように)5本を選びました。蔵は重複させていません。並び順は華やか値の高い順です。

なお十四代・栄光冨士・くどき上手・出羽桜もこの18本に入りますが、知名度が高いぶん比較の役に立ちにくいので、後半の表にまとめました。

1. ひととき(六歌仙)|華やか全国10位、他の4軸が全部下位

華やか0.628は収録1346銘柄中全国10位(上位0.7%)。山形県内では最高値です。同時に軽快0.688も全国12位(上位0.9%)。

残りの4軸が徹底して低いのがこの銘柄の形です。ドライ0.055は全体最下位クラス(下位0.7%)で県内63位、芳醇0.274は下位1.0%、穏やか0.167は下位1.6%、重厚0.164も下位3.3%。

香りと軽さだけが全国トップクラスに突き抜け、キレも旨味も丸みも重さも数値が出ていないという極端なプロフィールです。辛口県・山形の銘柄でありながら、ドライ値は県内で最も低い1本でもあります。

今回の5本の全10ペアのうち、ひとときが絡む4ペアの類似度は0.820〜0.930。残り6ペアは0.960〜0.973に固まっているので、この1本だけが明確に離れた位置にいます。

ひとときの味わいチャートを見る楽天で探す(PR)Amazonで探す(PR)

2. 雅山流(新藤酒造店)|香りは高いのにドライは平均どおり

華やか0.529は全国53位(上位3.9%)で県内3位、軽快0.550も上位9.4%です。ここまでは1本目と同じ方向ですが、ドライ0.314が全国607位(ほぼ全体平均の0.310どおり)で止まっているのが違いです。

芳醇0.441は下位8.8%、重厚0.204は下位9.3%、穏やか0.288も下位12.6%。

香りと軽さを立て、旨味・重さ・丸みを削り、キレだけは平均値のまま残した形になります。華やか上位18本の平均ドライは0.271なので、この銘柄は香り系のなかではキレが残っている側です。ひとときとの類似度0.930は、他の4本(0.82〜0.85)に比べれば近いものの、ドライ0.055対0.314の差がそのまま出ています。

雅山流の味わいチャートを見る楽天で探す(PR)Amazonで探す(PR)

3. 嵐童(杉勇蕨岡酒造場)|芳醇全国67位、香り+旨味型の代表

華やか0.433は上位19.8%と今回の5本では中位ですが、芳醇0.639が全国67位(上位5.0%)まで来ます。これは山形県内でも2位の高さです。

対して重厚0.191は下位6.5%、穏やか0.323は下位21.0%、ドライ0.264も全国平均以下。軽快0.440は全国590位でほぼ全体平均どおりです。

先に見た「山形は芳醇と組み合わさる割合が高い」の典型がこの数値です。香りが立って旨味の厚みもあり、そのぶんどっしり感だけを抜いてあるという形。軽快が平均どおりなので、香り系にありがちな「軽くて流れていく」方向ではありません。

2本目の雅山流とは芳醇0.441対0.639、軽快0.550対0.440とちょうど裏返しの関係になります。香りに軽さを足すか旨味を足すか、の分岐点です。

嵐童の味わいチャートを見る楽天で探す(PR)Amazonで探す(PR)

4. 和田来(渡會本店)|フルーティーで、なおかつ辛口

華やか0.427(上位21.1%)に、ドライ0.413が乗ります。これは上位14.0%で、華やかとドライの両方が上位25%に入る全国24本のうちの1本。山形県内では、この条件を満たすのは和田来だけです。

さらに重厚0.362は上位30.5%(県内9位)と、18本のなかでは最も高い値。芳醇0.474は下位17.1%、軽快0.409は全国767位でやや低め、穏やか0.352はほぼ全体平均です。

香りがありながらキレもあり、重心も低いという、今回の5本で唯一「削っていない」タイプです。華やか上位18本の平均ドライが0.271まで落ちるなかで、県平均0.356を超える唯一の銘柄でもあります。辛口県・山形の性格を残したままフルーティー側にいる、という意味で例外的な位置です。

ひとときとの類似度0.820は5本の全10ペア中で最も低い値でした。同じ「山形のフルーティー」の両端がこの2本です。

和田来の味わいチャートを見る楽天で探す(PR)Amazonで探す(PR)

5. 上亀元(酒田酒造)|穏やか上位13%、香りが立つのに当たりが柔らかい

華やか0.425は上位21.7%で、18本のなかでは下限に近い位置。かわりに穏やか0.492が上位12.9%(全国174位・県内10位)まで来ます。

18本の穏やか値は0.167〜0.492で、上亀元がその上限です。他の4本が穏やか下位1.6%〜31.9%であることを考えると、明確に逆側にいます。重厚0.230は下位17.6%、芳醇0.484は下位20.4%、ドライ0.272は全国平均以下、軽快0.465は上位32.6%とやや高め。

香りはあるのに、重くも鋭くもなく、当たりが柔らかいという並びです。フルーティー=軽快・華やかが尖るもの、という等式から外れる側の1本で、香りのある酒を飲みたいが刺激は要らない、という向きの数値をしています。

上亀元の味わいチャートを見る楽天で探す(PR)Amazonで探す(PR)

人気銘柄から選ぶなら

山形の華やか上位25%のうち、さけのわランキングに入っているのは次の4銘柄です。

銘柄 ランキング 華やか 芳醇 ドライ 軽快
十四代 5位 0.498 0.602 0.183 0.418
栄光冨士 23位 0.473 0.586 0.270 0.474
くどき上手 29位 0.435 0.626 0.284 0.365
出羽桜 48位 0.426 0.541 0.285 0.439

4本とも芳醇が全国平均(0.535)以上で、4本ともドライは全国平均(0.310)以下です。とくに十四代の芳醇0.602・ドライ0.183、くどき上手の芳醇0.626・軽快0.365は、香り+旨味型の数値そのもの。

山形のフルーティーで人気を取っているのは、軽さではなく旨味と組んだ側という結果になります。県全体としては先ほどの表のとおり芳醇0.512と全国平均を下回るので、有名銘柄のほうが県平均から外れている構図です。

もっと香りの強い方向に振りたいなら

華やか値だけを追うなら、山形の上位はこの並びです。

銘柄 全国順位 華やか 芳醇 ドライ 軽快
ひととき 10位 0.628 0.274 0.055 0.688
有加藤 30位 0.560 0.473 0.310 0.410
雅山流 53位 0.529 0.441 0.314 0.550
十四代 99位 0.498 0.602 0.183 0.418
奥羽自慢 124位 0.485 0.546 0.240 0.515
吾有事 173位 0.464 0.525 0.284 0.556

県内最高のひとときで全国10位。長野の最高値(0.678)ほどではありませんが、上位30位以内に2本が入ります。

この6本でも芳醇は0.274〜0.602、軽快は0.410〜0.688と大きく開きます。華やか値が近い銘柄を比べるときは、芳醇か軽快を第二の物差しにすると方向を取り違えにくくなります。有加藤と雅山流は華やかがほぼ同じ帯にいて、軽快が0.410対0.550と別れる好例です。

山形でフルーティーを選ぶときの物差し

山形は辛口の県として数値が出る一方、華やか上位25%の本数では全国3位につけます。ただし比率では15位で、県の傾向というより母数の産物です。

そして香り側に絞ると、18本のドライ平均は0.271まで落ち、県平均から-0.085。にもかかわらず軽快が上位25%に入るのは28%どまりで、新潟や群馬のような「香り+軽さ」一色にはなりません。18本の値は華やか0.425〜0.628、芳醇0.274〜0.639、穏やか0.167〜0.492、ドライ0.055〜0.413と、どの軸でも広く散らばります。

香りに何を組み合わせたいのか——軽さか、旨味の厚みか、キレか、当たりの柔らかさか。山形の場合はとくに芳醇軸を第二の物差しに置くと選びやすくなります。

フルーティー全般の選び方はフルーティーな日本酒の選び方、県内の辛口側は山形の辛口日本酒5選にまとめています。自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。