山形の日本酒おすすめ5選 — 人気銘柄と県平均が逆を向いている県
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山形の日本酒と聞いて浮かぶのは、十四代やくどき上手のような華やかで甘みのある酒ではないでしょうか。ところが当サイトが利用しているさけのわデータで県全体を集計すると、山形の平均像はそのイメージとかなり違います。
収録している山形県の63銘柄を、6軸フレーバーベクトル(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)で見ていきます。
データで見る山形の県平均
山形県63銘柄の平均値を、収録1346銘柄の全国平均と並べます。
| 軸 | 山形平均 | 全国平均 | 差 | 県順位 |
|---|---|---|---|---|
| 華やか | 0.349 | 0.339 | +0.010 | 16位 |
| 芳醇 | 0.512 | 0.535 | -0.023 | 37位 |
| 重厚 | 0.290 | 0.328 | -0.038 | 35位 |
| 穏やか | 0.400 | 0.393 | +0.007 | 15位 |
| ドライ | 0.356 | 0.310 | +0.045 | 5位 |
| 軽快 | 0.435 | 0.422 | +0.013 | 15位 |
県順位は収録10銘柄以上の40都道府県で比べたものです。目立つのはドライ5位・芳醇37位・重厚35位という組み合わせで、県としての山形は「キレを残して、厚みを削る」方向にそろっています。ドライが全国平均を上回る銘柄は63本中37本(58.7%)、逆に重厚が全国平均を上回るのは15本(23.8%)しかありません。
そして華やかは16位、平均値でいえば全国とほぼ同じです。県全体で見れば、山形は華やかな県ではありません。
人気銘柄は、県平均とほぼ逆を向いている
ではなぜ「山形=華やか」というイメージになるのか。さけのわランキングに入っている山形の6銘柄(十四代・栄光冨士・くどき上手・出羽桜・上喜元・楯野川)だけを平均すると、こうなります。
| 軸 | 人気6銘柄 | 山形63銘柄 | 全国 |
|---|---|---|---|
| 華やか | 0.437 | 0.349 | 0.339 |
| 芳醇 | 0.549 | 0.512 | 0.535 |
| ドライ | 0.293 | 0.356 | 0.310 |
華やかは県平均を+0.088上回り、ドライは-0.063下回る。人気銘柄だけを見ると、山形の県平均とはほぼ反対側の数値になります。
これは偶然というより、県内の構造です。山形63銘柄で華やかとドライの相関を計算すると-0.493。全国1346銘柄での相関が-0.251なので、山形は「香りが立つ酒ほどキレを削る」という関係が全国よりはっきり出ている県です。つまり県内は香り側とキレ側にきれいに二分されていて、全国的に名前が知られているのは香り側のほう、という構図になります。
以下では、ランキング入りの6銘柄から6軸の形が互いに重ならない5本を選びました。楯野川を外したのは、出羽桜との6軸コサイン類似度が0.994と6銘柄中で最も近く、記事内で違いを説明しにくいためです(後半で触れます)。順番はランキング順です。
1. 十四代(高木酒造)|香りと旨味を両方取って、キレは捨てる
華やか0.498は全体の上位8%、芳醇0.602も上位17%。一方でドライ0.183は下位9%、重厚0.239は下位20%です。
香りも旨味も高い位置にあるのに、キレとどっしり感だけを抜いてあるという形。山形の県平均(ドライ0.356)と比べるとドライは半分程度で、県の傾向からは最も遠い1本です。今回の5本のなかで華やか・芳醇がともに上位20%に入るのはこれだけで、後述の上喜元との類似度は0.944——5本の全ペアで最も離れた組み合わせになりました。
冷やして単体で飲むほうが数値の形を素直に味わえるタイプです。
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2. 栄光冨士(冨士酒造)|香りと軽さを取り、落ち着きを削る
華やか0.473は上位11%、軽快0.474も上位29%。特徴的なのは穏やか0.263で、これは下位8%です。
十四代と同じ「華やか高め・ドライ低め」の側にいますが、穏やかさを下位1割まで削っている点が違います。数値の形としては、香りが前に出たまま輪郭がぼやけない方向。芳醇0.586(上位26%)と旨味も残っているので、薄く感じるタイプではありません。
十四代との類似度は0.990と近いので、両方を同時に開けるより、香りの出方の違いを確かめたい日に少量ずつ比べるのが向いています。
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3. くどき上手(亀の井酒造)|今回の5本で最も旨味が濃い
芳醇0.626は上位8%で今回の最高値。華やか0.435も上位19%ですが、軽快0.365は下位26%、穏やか0.318も下位20%です。
香りは十分に高いのに軽さがない、つまり口に残る密度が高い形。重厚0.322はちょうど全体の真ん中(54%)で、重いというより濃いというプロフィールです。十四代・栄光冨士が「香り+軽さ寄り」なのに対し、この1本だけが軽快を下げる方向に振れています。
味の濃い料理に当てても押し負けにくい数値なので、単体でも食中でも使えます。
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4. 出羽桜(出羽桜酒造)|山形の県平均に最も近い1本
華やか0.426は上位22%ですが、それ以外の5軸はすべて全体の38〜58%——つまりほぼ中央です(芳醇0.541・重厚0.285・穏やか0.414・ドライ0.285・軽快0.439)。
山形63銘柄の平均ベクトルとのコサイン類似度は0.994で、ランキング入り6銘柄のなかで最も高い値でした。香りだけ少し高く、あとは全部まん中という形は、県の平均像を1本で代表させるならこれ、という位置にあります。
今回の5本のなかでは尖った軸がない分、何に合わせるかを選びません。山形の酒をまず1本試すなら、比較の基準として置きやすい1本です。
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5. 上喜元(酒田酒造)|人気銘柄のなかで唯一、県平均の側に立つ
ドライ0.429は上位12%、軽快0.541も上位11%。逆に芳醇0.452は下位11%、重厚0.229は下位17%です。
キレと軽さを取って、旨味と厚みを落とす——冒頭に見た山形の県平均(ドライ5位・芳醇37位・重厚35位)を、そのまま濃くしたような数値です。ランキング入り6銘柄のうち、ドライが全国平均(0.310)を超えるのはこの1本だけ。残り5本は0.183〜0.308で全員が平均を下回ります。人気銘柄の並びのなかでは明確に例外です。
十四代との類似度0.944が示すとおり、同じ県の人気銘柄でもここまで離れます。「山形の酒=甘くて香る」だと思っている人が、その先入観を壊すために飲む1本としても向いています。食中で流れを切りたい場面に置きやすい形です。
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甘旨・どっしり方向をもう少し探すなら
今回の5本は重厚が0.229〜0.322に収まっていて、最も高いくどき上手ですら全体の中央(54%)です。山形の人気銘柄の範囲では厚みのある酒に行き着きません。県内から重心の違う銘柄を探すなら、ランキング外に候補があります。
十水(加藤嘉八郎酒造)は芳醇0.679で全体の上位1%。重厚0.392(上位23%)・ドライ0.198(下位13%)と、旨味を厚めに残す方向です。山吹極(朝日川酒造)は重厚0.599が上位3%、軽快0.122が下位1%、華やか0.057も下位1%という極端な形で、山形の県平均とは正反対に振り切っています。当たりの柔らかさを優先するなら若乃井(若乃井酒造)が穏やか0.568(上位4%)・重厚0.432(上位15%)です。
なお冒頭で外した楯野川(楯の川酒造)は、軽快0.522(上位15%)・芳醇0.489(下位21%)で、上喜元と同じ「軽くて厚みを残さない」側。ただしドライ0.308は全国平均並みで、上喜元(0.429)ほどキレに振っていません。上喜元が辛すぎると感じる人にとっては、こちらが中間の着地点になります。
山形の酒の選び方
山形は、県として見ればドライが高く厚みが薄い引き締まった県ですが、全国的に知られている人気銘柄はその逆側——華やかで、キレを抑えた層に固まっています。だから「山形だから」で選ぶと、期待と違うほうを引く可能性が両方向にあります。
今回の5本でいえば、香りと旨味なら十四代、香りと軽さなら栄光冨士、旨味の濃さならくどき上手、基準にするなら出羽桜、キレなら上喜元。同じ県の人気銘柄でも、これだけ行き先が分かれます。
県内の辛口側をまとめて見たい場合は山形の辛口日本酒5選、香りの立つ層を掘りたい場合は山形のフルーティーな日本酒5選にそれぞれ25銘柄・18銘柄分の比較があります。
自分がどの軸に寄っているか分からない場合は、1分の日本酒診断で確かめてから選ぶと、棚の前で迷う時間がぐっと減ります。