青森の辛口日本酒5選 — 収録33本中20本が辛口、該当率60.6%は全国1位

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青森の日本酒を辛口で選ぼうとすると、逆に困ります。候補が絞れないのではなく、ほとんど全部が辛口側に入ってしまうからです。当サイトが利用しているさけのわデータの6軸フレーバーベクトル(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)で整理すると、青森は数字の上でも明確にそういう県でした。

収録1346銘柄のドライ値で上位25%の境界は0.367。青森県の33銘柄のうち、これを超えるのは20銘柄です。

該当率60.6%は全国1位

該当本数だけなら新潟(41)、山形(25)、長野(22)のほうが多いのですが、それぞれ収録数も多い県です。収録数に対する割合で見ると順位が変わります。

都道府県 収録数 該当本数 該当率
青森県 33 20 60.6%
高知県 20 11 55.0%
静岡県 25 13 52.0%
北海道 22 10 45.5%
山形県 63 25 39.7%
新潟県 112 41 36.6%
長野県 93 22 23.7%

収録10銘柄以上の40都道府県で、半数以上が辛口上位25%に入るのは青森・高知・静岡の3県だけ。青森はその筆頭です。県平均のドライ値0.408も、高知の0.416に次ぐ全国2位で、全国平均0.310を大きく上回ります。

裏を返すと、青森で「辛口です」と言われても情報量がほとんどありません。この県では辛口が標準装備だからです。

全国ドライ1位も青森、ただし数値の形が特殊

全国1346銘柄をドライ値で並べた上位10本のうち、青森県の銘柄は2本入ります。

順位 銘柄 都道府県 ドライ
1 りんごぽむぽむ 青森県 0.876
2 水神 岩手県 0.846
3 あざくら 秋田県 0.827
4 船中八策 高知県 0.788
5 ばくれん 山形県 0.761
6 あおりんごぽむぽむ 青森県 0.759

ただしこの2本は、ドライ以外の数値の形が他と違います。りんごぽむぽむは芳醇0.066が全国1345位、重厚0.000が全国1346位(=最下位)、穏やか0.081が全国1341位。あおりんごぽむぽむも芳醇0.090・重厚0.047・穏やか0.032と、6軸のうち3軸がほぼ底に張り付いています。

一般的な日本酒のフレーバーベクトルは、芳醇が全国平均0.535・重厚が0.328あたりに集まります。この2本はそこから完全に外れた位置にあるため、以下の分析と5選では外れ値として別枠に置きます。この2本を除いた青森の該当18本のドライ値は0.368から0.605の範囲です。

青森の辛口は「互いに最も似ていない」

該当10本以上の県について、県内の該当銘柄の全ペアで6軸ベクトルのコサイン類似度を出し、平均しました。値が低いほど「その県の辛口は互いにバラバラ」ということになります。

都道府県 該当本数 平均類似度
青森県 20 0.919
秋田県 13 0.933
高知県 11 0.949
山形県 25 0.952
新潟県 41 0.972
長野県 22 0.978
静岡県 13 0.980
北海道 10 0.982

青森が最も低い値です。もっとも、この0.919は先ほどの外れ値2本がかなり引き下げています。2本を除いた18本で計算し直すと0.965。それでも長野の0.978や新潟の0.972より低く、青森の辛口が散らばっているという結論は変わりません。

軸ごとの幅で見ると差がはっきりします。外れ値を除いた青森18本と、長野の該当22本の比較です。

青森18本の幅 長野22本の幅
ドライ 0.237 0.165
穏やか 0.452 0.322
華やか 0.356 0.322
重厚 0.246 0.217
軽快 0.220 0.189
芳醇 0.195 0.196

芳醇以外の5軸すべてで青森のほうが広く、とくに穏やか軸は1.4倍の開きがあります。長野の辛口日本酒5選で見た長野が「本数は多いが振れ幅が狭い」県だったのに対し、青森はちょうど逆の形です。

有名銘柄で辛口を探すと1本しか出てこない

これだけ辛口の県でありながら、さけのわランキングに入っている青森勢3銘柄はこうなります(全国平均は0.310)。

銘柄 ランキング ドライ 全国順位
田酒 6位 0.304 662位
陸奥八仙 28位 0.360 366位
豊盃 46位 0.394 240位

上位25%の境界0.367を超えるのは豊盃だけ。全国6位の田酒にいたっては全国平均を下回ります。県全体では6割が辛口なのに、知名度の高い側から入ると辛口に当たらない——青森はそういうねじれ方をしています。

そこで該当20銘柄から外れ値2本を除き、残る18本を6軸で比べて、互いのコサイン類似度がなるべく低くなるように(=キレ以外の方向が重ならないように)5本を選びました。蔵は重複させていません。5本の全10ペアの平均類似度は0.911、最大でも0.961です。並び順はドライ値の高い順です。

1. 陸奥男山(八戸酒造)|削れるものを全部削った1本

ドライ0.605は全国22位(上位1.6%)。外れ値2本を除けば青森県内の最高値です。

数値の形が徹底しています。芳醇0.368は全国1309位で下位2.8%、穏やか0.238は下位5.3%、重厚0.201は下位9.0%。旨味の厚み・丸み・どっしり感の3つを同時に落としたうえで、軽快0.549を上位9.7%まで上げています。華やか0.317だけが全国平均(0.339)近辺です。

キレを邪魔するものを片っ端から抜いたという並びで、今回の5本のなかで最も割り切った形をしています。

同じ蔵にはランキング28位の陸奥八仙がいますが、そちらのドライは0.360で上位25%に届きません。両者の類似度は0.948で、方向としては近いものの、辛口かどうかの線はまたいでいます。

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2. 亀吉(中村亀吉)|青森にはある「重い辛口」

ドライ0.520は全国55位(上位4.1%)。そのうえで重厚0.436が全国197位=上位14.6%(県内4位)に入ります。

重厚とドライの両方で全国上位25%に入る銘柄は、全国1346銘柄中**46本(3.4%)**しかありません。青森はそのうち2本(亀吉・白神)を持っています。前回の長野は該当22本中0本でしたから、ここが県の性格の分かれ目です。

残りの軸は、華やか0.205が下位12.3%、芳醇0.381が下位3.5%、軽快0.401と穏やか0.438は平均近辺。旨味の厚みと香りは抜いてあるのに、口に残る重さだけは残っているという、やや珍しい組み合わせになります。

飲みごたえは欲しいが甘さや香りは要らない、という方向に数値上いちばん近い1本です。

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3. 華一風(カネタ玉田酒造店)|県内で最も香りが立つ辛口

ドライ0.396(上位17.3%)に、華やか0.561が乗ります。これは全国29位=**上位2.2%**で、青森県33銘柄中の1位です。

華やかとドライの両方で全国上位25%に入る銘柄は、全国で24本(1.8%)。青森はそのうち3本を持ち(豊盃・華一風・外れ値のあおりんごぽむぽむ)、華やかが最も高いのがこの銘柄です。

ほかの軸は、重厚0.190が下位6.4%、穏やか0.264が下位9.0%、芳醇0.490が下位22%、軽快0.426はほぼ平均。香りだけを大きく立てて、それを支える重さや丸みは置いていないという形です。香りが強い酒にありがちな甘い余韻が数値上は乗っていない、と読めます。

ランキング46位の豊盃との類似度は0.979で、青森の「香り系の辛口」としては同じ方向。ただし華やかは0.415対0.561で、こちらのほうが1段階強く出ます。

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4. 八甲田おろし(鳩正宗)|辛口なのに、当たりが全国4位の柔らかさ

ドライ0.376は上位22.1%と5本のなかでは控えめですが、注目は穏やか0.690です。全国1346銘柄中4位(上位0.3%)で、もちろん青森県内1位。

同時に軽快0.329は下位16.0%、芳醇0.410は下位4.8%、重厚0.201は下位9.0%、華やか0.256も下位23.6%。ゆっくり流れて、当たりが柔らかく、香りも旨味も前に出さない辛口という並びです。

キレのある酒はアルコールの当たりが強く出ることがありますが、この数値の形はその逆方向。1本目の陸奥男山との類似度0.845は今回の全10ペアで最も低く、「青森の辛口」という同じ括りのなかで最も離れた2本になります。

穏やかとドライの両方で上位25%に入る銘柄は全国71本、青森はうち4本(八鶴・ん・八甲田おろし・佐藤企)。青森の穏やか軸の広さを最も極端にした1本です。

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5. 桃川(桃川)|旨味を残したまま辛口側に置いた1本

ドライ0.370は上位24.3%と、上位25%の境界0.367ぎりぎりです。5本のなかでは最も辛口寄りではありません。

代わりに芳醇0.563が上位37.6%(県内5位)にあります。今回の5本のうち、芳醇が全国平均0.535を上回るのはこの1本だけです(他の4本は0.368〜0.490)。穏やか0.448も上位26.0%、重厚0.351は平均近辺、軽快0.348は下位20.4%、華やか0.317は平均やや下。

旨味の厚みと丸みを残したまま、キレをぎりぎり辛口側に置いたという形になります。ドライ値の高い1〜4本目が軒並み芳醇を落としているなかで、真逆のアプローチです。

キレより先に旨味が欲しい、食事と長く付き合わせたい、という条件に数値上いちばん近い選択肢です。

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もっとキレの強い方向に振りたいなら

外れ値2本を除き、ドライ値だけを追うと青森の上位はこの並びです。

銘柄 ドライ 芳醇 重厚 穏やか 軽快
陸奥男山 0.605 0.368 0.201 0.238 0.549
ねぶた 0.566 0.407 0.196 0.392 0.520
亀吉 0.520 0.381 0.436 0.438 0.401
鳩正宗 0.509 0.439 0.263 0.349 0.436
七力 0.500 0.504 0.274 0.327 0.460
じょっぱり 0.464 0.475 0.335 0.372 0.421

ドライ0.5以上が5本並びます。この並びで面白いのは、上位5本の重厚が0.196から0.436まで開くことです。同じ「ドライ0.5台」でも、亀吉のように重さを残す型と、陸奥男山・ねぶたのように重さを抜く型がはっきり分かれます。

青森で辛口を選ぶときの物差し

青森は該当率60.6%で全国1位、県平均ドライ0.408で全国2位、全国ドライ1位の銘柄も抱える県です。それでいて該当銘柄同士の平均類似度は該当10本以上の県で最も低く、外れ値を除いても0.965と長野・新潟を下回ります。辛口の割合が高く、しかも辛口の中身がバラけている、というのが数値に出た青森の姿です。

だから青森では、「辛口かどうか」はほとんど選別の役に立ちません。今回の5本も、ドライは0.370から0.605に散らばる一方で、穏やかは0.238から0.690、華やか0.205から0.561、芳醇0.368から0.563、重厚0.190から0.436まで開きました。重さを残すか抜くか、香りを立てるか消すか、当たりを柔らかくするか速くするか——決めるべきはそちらです。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。辛口そのものの考え方は辛口日本酒入門、他県の辛口については新潟の辛口日本酒5選山形の辛口日本酒5選長野の辛口日本酒5選もあわせてどうぞ。