長野の辛口日本酒5選 — 該当22本は全国3位、なのに「突き抜けた1本」がいない県

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長野の日本酒は銘柄数が多く、辛口で選ぼうとすると候補が絞れません。当サイトが利用しているさけのわデータの6軸フレーバーベクトル(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)で整理すると、長野の辛口には他の辛口県とはっきり違う形が出ます。

収録1346銘柄のドライ値で上位25%の境界は0.367。長野県の93銘柄のうち、これを超えるのは22銘柄です。

本数は全国3位、なのに最高値は0.537

ドライ上位25%に入る本数を都道府県別に並べると、長野の22は新潟(41)、山形(25)に次ぐ全国3位です(4位が青森の20)。

ところが県内の最高値を見ると景色が変わります。

都道府県 該当本数 県内最高ドライ 最高値の銘柄
新潟県 41 0.656 鬼山間
山形県 25 0.761 ばくれん
長野県 22 0.537 斬九郎
青森県 20 0.876 りんごぽむぽむ

長野の最高値0.537は全国46位(上位3.4%)。十分に辛口ではありますが、他の3県が0.65〜0.88まで振り切っているのに比べると、明らかに手前で止まっています。県内最高値の順位で見ると、長野は収録10銘柄以上の40都道府県中21位と、ちょうど真ん中です。

「ドライ0.55以上」が1本もいない

もっとはっきり出るのがこの数値です。全国1346銘柄のうちドライ0.55以上は40銘柄ありますが、そのうち長野県のものは0本

収録40銘柄以上の県で0.55超がゼロなのは、長野県(93銘柄)と京都府(46銘柄)だけです。同じ規模の県を並べると差が分かります。

都道府県 収録数 ドライ0.55以上
新潟県 112 7本
長野県 93 0本
福島県 77 5本
山形県 63 4本
兵庫県 56 2本
京都府 46 0本
秋田県 45 2本

県平均のドライ値は0.317で、全国平均0.310とほとんど変わりません(40都道府県中14位)。つまり長野は、辛口の本数は多いのに、辛口の振れ幅が狭い県です。該当22本のドライ値は0.372(アルプス正宗)から0.537(斬九郎)まで、幅にして0.165しかありません。

22本は「互いによく似ている」

もうひとつ計算したのが、該当銘柄同士の似ている度合いです。該当20本以上の4県について、県内の該当銘柄の全ペアで6軸ベクトルのコサイン類似度を出し、平均しました。値が高いほど「その県の辛口は互いに似ている」ことになります。

都道府県 該当本数 平均類似度
長野県 22 0.978
新潟県 41 0.972
山形県 25 0.952
青森県 20 0.919

長野が最も高い値です。本数が多いぶんバラけそうなものですが、実際には逆でした。

理由のひとつは重厚軸です。該当22本の重厚は0.152から0.369までで、全国の重厚上位25%(0.381超)に入る銘柄が1本もありません。同じ計算を山形の25本でやると3本(住吉0.517など)、新潟の41本では2本が該当します。長野の辛口には「重い辛口」という選択肢が存在しない、ということです。

有名銘柄で辛口を探すと1本しか出てこない

さけのわランキングに入っている長野勢5銘柄のドライ値は次のとおりです(全国平均は0.310)。

銘柄 ランキング ドライ 全国順位
信州亀齢 16位 0.262 886位
大信州 51位 0.497 78位
真澄 52位 0.332 502位
ソガペール エ フィス 82位 0.193 1183位
亀の海 99位 0.263 880位

辛口側にいるのは大信州だけで、残り4本は全国平均前後かそれ以下。知名度の高い側から入ると、長野の辛口はほぼ1本しか見つかりません。

そこで該当22銘柄を6軸で比べ、互いのコサイン類似度がなるべく低くなるように(=キレ以外の方向が重ならないように)5本を選びました。蔵は重複させていません。並び順はドライ値の高い順です。

1. 斬九郎(宮島酒店)|香りだけを落とした、県内最高のキレ

ドライ0.537は長野県内1位、全国46位(上位3.4%)。長野の辛口の上限にあたる1本です。

特徴的なのは、削られている軸が華やか0.194(全国下位10%・県内92位/93)ひとつに集中していることです。芳醇0.540は全国平均0.535とほぼ同じ、重厚0.320も全国平均0.328どおり、軽快0.404、穏やか0.342もそれぞれ平均近辺に収まります。

つまり旨味の厚みもどっしり感も平均どおり残したまま、香りだけを落としてキレを立てているという形です。この記事の5本のなかで、ドライと華やか以外の4軸が最も「普通」なのがこの銘柄になります。

香りが立つ酒を辛口の邪魔だと感じる人にとっては、長野で最初に試す1本です。

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2. 真田六文銭(山三酒造)|旨味を抜いて、速さを足す

ドライ0.503は県内2位、全国71位(上位5.3%)。斬九郎とは0.034しか違いませんが、削っている軸がまったく違います。

芳醇0.387は全国下位3.7%(県内92位/93)。これは該当22本のなかでも最低値です。さらに軽快0.552が上位9.2%(県内7位)と高く、華やか0.263は下位25%。重厚0.307と穏やか0.359はほぼ平均です。

旨味の厚みをはっきり抜いたうえで、流れる速さを足しているという組み合わせ。斬九郎との類似度0.974は今回の5本で最も高いペアですが、芳醇0.540対0.387、軽快0.404対0.552と、飲んだときに効く2軸は逆を向いています。同じ「長野のドライ0.5台」でも中身は別物です。

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3. 寒竹(戸塚酒造)|辛口なのに、当たりがいちばん柔らかい

ドライ0.410は上位14.7%(県内14位)と辛口側にありながら、穏やか0.564が全国52位(上位3.9%・県内3位)に入ります。

同時に軽快0.363は下位25%、華やか0.213も下位13%、芳醇0.480は下位19%。重厚0.325は平均どおりです。ゆっくり流れて、当たりが柔らかく、香りは出さない辛口という並びになります。

キレのある酒はアルコールの当たりが強く出ることがありますが、この数値の形はその逆方向です。次の岩清水との類似度0.897は今回の全10ペアで最も低く、「長野の辛口」という同じ括りのなかで最も離れた2本になります。

辛口は好きだが刺激は要らない、という人向きの数値です。

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4. 岩清水(井賀屋酒造場)|香りが立っていて、しかも辛口

ドライ0.395(上位17.7%)に、華やか0.516(全国73位・上位5.4%、県内6位)が乗ります。長野の該当22本のなかで華やかの最高値です。

一方で穏やか0.242は下位5.6%(県内91位/93)。芳醇0.472は下位17%、軽快0.461と重厚0.291は平均近辺です。香りははっきり立つのに、丸みで受け止めずキレに直行するという形になります。

長野は華やかが全国平均を上回る県ですが、その香り系はたいていドライ値が低いほうに寄ります(長野のフルーティーな日本酒5選で扱った33銘柄がその層です)。華やかとドライの両方で全国上位25%に入る銘柄は、全国1346銘柄中**24本(1.8%)**しかありません。長野はそのうち3本(佐久乃花・夜明け前・岩清水)を持っていて、華やかが最も高いのがこの1本です。

香りは欲しいが甘さは要らない、という条件に数値上いちばん近い選択肢になります。

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5. 月吉野(若林醸造)|重さを消して、軽さで辛く感じさせる

ドライ0.388は上位18.9%と、5本のなかでは最も控えめです。ただし重厚0.152が全国1318位=下位2.2%(県内92位/93)まで落ちています。

そこに軽快0.533(上位12.9%)と穏やか0.458(上位22.4%)が乗り、芳醇0.439は下位8.3%、華やか0.374は平均よりやや上。どっしり感と旨味の厚みを両方抜いて、軽さと丸さだけを残したという形です。

ドライ値だけなら5本で最下位ですが、重厚と芳醇がここまで低いと、口に残るものが少ないぶん実際には辛口寄りに感じられやすい並びになります。重厚0.152は該当22本の最低値でもあり、「長野には重い辛口がいない」という県の傾向を最も極端にした1本です。

飲み疲れを避けたい日の晩酌向きの数値です。

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もっとキレの強い方向に振りたいなら

ドライ値だけを追うなら、長野の上位はこの並びです。

銘柄 ドライ 重厚 穏やか 軽快
斬九郎 0.537 0.320 0.342 0.404
真田六文銭 0.503 0.307 0.359 0.552
大信州 0.497 0.222 0.320 0.482
NEW ENGI 0.493 0.284 0.344 0.485
北光正宗 0.491 0.218 0.439 0.497
高天 0.483 0.305 0.452 0.402

上位6本のドライ値は0.483から0.537の範囲に収まっていて、差は0.054しかありません。選び分けの実質は他の軸のほうにあります。該当22本で見ると、軽快は寒竹の0.363から真田六文銭の0.552まで、穏やかは岩清水の0.242から寒竹の0.564まで開きます。長野で辛口を選ぶときは、ドライ値で並べ替えてもほとんど情報が増えないということです。

長野で辛口を選ぶときの物差し

長野は辛口の本数では全国3位につけながら、0.55を超える銘柄を1本も持たない県です。該当22本の平均類似度0.978は該当20本以上の4県で最も高く、重厚上位25%の銘柄はゼロ。振り切った辛口を探すには向かないが、中庸な辛口の層はいちばん厚い、というのが数値に出た長野の姿です。

だからこそ、選ぶときの物差しはドライ値ではありません。今回の5本も、ドライは0.388から0.537に収まる一方で、華やかは0.194から0.516、穏やかは0.242から0.564、重厚は0.152から0.325まで散らばりました。香りを出すか出さないか、当たりを柔らかくするか速くするか——決めるべきはそちらです。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。辛口そのものの考え方は辛口日本酒入門、振り切った辛口を持つ県については新潟の辛口日本酒5選山形の辛口日本酒5選、長野の全体像は長野の日本酒おすすめ5選もあわせてどうぞ。