おでんに合う日本酒5選 — 薄いだしと練り物の甘さ、両方に合わせる
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おでんは日本酒の相手として、鍋よりも一段ややこしい料理です。鍋なら「出汁は繊細だから酒も穏やかに」で話が済みますが、おでんはだし自体は薄いのに、鍋の中に置かれている具の味は濃淡がばらばらです。長く煮た大根と玉子は塩気を吸い、ちくわやさつま揚げは練り物由来の甘みと揚げ油を持ち、牛すじや豚バラは脂と濃い旨味を持ち込む。一つの鍋から取る皿ごとに、酒に求める仕事が入れ替わります。
整理すると、おでんの酒に必要な働きは三つです。
- 薄いだしを消さない低い香り(華やか控えめ・穏やか) — 温かい料理は香りが立つので、吟醸香の強い酒はだしの香りを上から塗りつぶす
- 具に入った塩気と練り物の甘みを流すキレ(ドライ) — 長時間煮込まれた具は見た目より味が濃く、甘みは一皿ごとに積み上がる
- 濃い具に押し負けない厚み(芳醇・重厚) — 牛すじや味噌だれには、穏やかなだけの酒だと酒が水に感じられる
もうひとつ、おでん特有の事情があります。この料理は熱いまま長時間かけて少しずつ食べるものだということ。一気に食べ切る料理ではないので、酒にも「飲み疲れしないこと」と「温度を合わせられること」が効いてきます。
当サイトが利用しているさけのわデータの飲用レビュー(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快の6軸)から、さけのわランキング100銘柄を対象に、おでんの具と場面ごとに5本を選びました。5本のうち味の方向が最も離れているのは2番の日高見と4番の雪の茅舎(コサイン類似度0.933)、最も近いのは1番の〆張鶴と4番の雪の茅舎(0.984)です。
1. 大根・玉子・こんにゃくに、まず1本 — 〆張鶴(新潟県・宮尾酒造)
「穏やか」が0.455で全体上位23.3%(ランキング100銘柄で13位)、「ドライ」が0.388で全体上位18.9%(同9位)。この2軸がどちらも全体上位25%に入る銘柄は全収録1346銘柄で75本(5.6%)しかなく、ランキング100銘柄では4本だけです。一方で「華やか」は全体上位44.3%(同83位)、「芳醇」は上位75.5%(同71位)と、香りも旨味の厚みも控えめに収まります。
おでんの土台になる大根・玉子・こんにゃくは、素材自体の味が薄いぶん、長く煮たぶんのだしの塩気だけが口に残ります。ここで香りの強い酒を合わせるとだしの香りが消え、厚みのある酒を合わせると具より酒が前に出る。かといってキレがないと、染みた塩気が流れないまま次の皿に進むことになります。穏やかさとキレだけを持ち、香りと厚みを持たないこの構成は、おでんの最初の一杯として迷いが少ない型です。冷やから常温で。
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2. ちくわ・さつま揚げ・がんもの甘みと揚げ油に — 日高見(宮城県・平孝酒造)
「ドライ」が0.542で全体上位3.1%、ランキング100銘柄のなかで最も高い1本です。対して「芳醇」は全体上位93.4%(同96位)、「重厚」は上位85.2%(同65位)とどちらも最下位クラス。「軽快」は0.484で上位25.0%(同49位)。つまり厚みを一切持たず、キレと軽さだけで構成された酒です。
練り物はおでんのなかでいちばん味が足されている具です。すり身そのものに甘みがつけられていて、さつま揚げやがんもどきは揚げてあるぶん油も持つ。甘みと油は口の中に膜として残るタイプの味なので、一皿、二皿と続くと舌の感度が落ちていきます。ここで必要なのは旨味を重ねることではなく、口をいったん空にすることです。厚みがないぶん練り物の甘みの上に味を積み上げず、キレだけが働きます。冷やしてグラスで飲むと役割がはっきりします。
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3. 牛すじ・豚バラ・味噌だれに — 王祿(島根県・王祿酒造)
「重厚」が0.455で全体上位12.4%、ランキング100銘柄では5番目に高い1本です。「芳醇」0.542も全体では上位49.7%ながらランキング100銘柄では38位、「ドライ」0.346は上位32.0%(同21位)。そして「華やか」は上位74.3%(同94位)で、今回の5本で最も低い。香りを持たず、厚みとキレを積んだ構成です。
牛すじや豚バラの串、つくね、そして味噌だれをかけて食べるタイプのおでんは、おでんのなかでは別枠の濃さを持ちます。脂が溶けてだしに広がり、味噌だれなら塩気と甘みがさらに乗る。1番や2番のような香りと厚みを持たない酒だと、こうした皿では酒の側が薄く感じられます。厚みで並びながら、脂に対してはキレも残しておくというのが、この具に向いた構成です。常温からぬる燗まで振れる幅があります。
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4. 熱いおでんに燗を合わせ、だしの旨味に重ねる — 雪の茅舎(秋田県・齋彌酒造店)
「芳醇」が0.589で全体上位22.7%(ランキング100銘柄で15位)、「穏やか」が0.462で上位21.2%(同12位)。旨味とまろやかさが両方とも上位に来る構成で、そのうえ「ドライ」は上位70.1%(同53位)、「軽快」は上位64.8%(同91位)と、キレも軽さも持ちません。香りも上位33.4%(同71位)で、強く主張する側ではありません。
おでんは熱いまま食べる料理なので、冷えた酒を合わせると口の中の温度差が開き、だしの旨味と酒の味が別々に通り過ぎます。燗にすると温度が揃うだけでなく、一般にまろやかさや旨味が前に出て、キレは鈍ります。だからもともとキレで仕事をするタイプを燗にしても良さが出にくく、旨味とまろやかさで寄り添う型が燗向きになります。昆布やかつおのだしと同じ方向の旨味を重ねたいときは、ぬる燗から上燗あたりが扱いやすいです。
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5. 一人おでんで、ゆっくり長く飲む日に — 篠峯(奈良県・千代酒造)
「軽快」が0.571で全体上位5.8%(ランキング100銘柄で15位)、同時に「ドライ」0.35が上位30.8%(同20位)。「芳醇」は上位80.6%(同84位)、「重厚」は上位79.2%(同52位)とどちらも低く、「華やか」も上位29.6%(同70位)で、軽快の高い銘柄のなかでは香りが出てこない側です。軽さとキレを持ち、厚みを持たない型と言えます。
おでんは一皿ずつ取りながら、長い時間をかけて食べ進める料理です。酒も一杯を短く空けるのではなく、同じペースで長く付き合うことになります。この飲み方でいちばん効くのは、厚みのある酒の満腹感でも強い香りでもなく、何杯飲んでも疲れが出ない軽さです。だしの薄い味に対して香りで割り込まないので、途中で大根に戻っても味の流れが途切れません。冷やから常温で、小ぶりのぐい呑みで少しずつ。
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迷ったら「何から取るか」で決める
5本の選び分けは、その日の皿の中身にほぼ対応します。大根・玉子・こんにゃく中心の淡い組み合わせなら1番、練り物を多めに取るなら2番、牛すじや味噌だれなど濃い味が入るなら3番。熱いうちに燗で合わせたいなら4番、長居するつもりなら5番です。
1本で通すなら、迷ったときの基準は香りの低さに置くのが無難です。おでんのだしは味も香りも薄いので、酒の香りが強いほど料理が後ろに下がります。逆に言えば、香りが控えめでキレのある酒なら、淡い具から練り物まで一本でおおむね通せます。もう一つ有効なのが温度の使い分けで、序盤の淡い具は冷やから常温で、鍋が煮詰まって味が濃くなる後半は燗に切り替えると、料理の濃さと酒の表情が最後まで揃います。
辛子をたっぷりつけて食べる人は、2番や5番のようなキレる側を選んでおくと、辛子の刺激と酒の旨味がぶつかりません。厚みのある酒と辛子を同時に口に入れると、旨味が辛子の後に浮いて残ることがあります。
同じ鍋料理でも出汁で煮る鍋との違いは鍋料理に合う日本酒5選、燗の付け方と燗に向く銘柄は燗酒に合う日本酒5選、今回1番や4番のような落ち着いたタイプをもっと知りたい場合はまろやかで穏やかな日本酒5選、5番のような軽い型は軽快で飲み疲れしない日本酒5選が参考になります。自分の好みが穏やか寄りかキレ寄りかは1分の日本酒診断で確かめられるので、おでんを仕込む前に一度試してみてください。