まろやかで穏やかな日本酒5選 — 「穏やか」は甘辛をまったく教えてくれない軸

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「まろやかな酒がいい」と言うとき、たいていの人は同時に「甘めがいい」か「でも辛口で」のどちらかを思い浮かべています。ところがデータを見ると、その2つはまったく別の話でした。

当サイトが利用しているさけのわデータの6軸フレーバー(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)で1346銘柄を集計すると、穏やかという軸の性格がはっきり出ます。

穏やか × ドライは、15ペア中で最も無関係

6軸から2つ選ぶ組み合わせは15通り。それぞれの相関係数を絶対値の小さい順に並べると、先頭がこうなります。

組み合わせ 相関係数
穏やか × ドライ +0.058
芳醇 × 穏やか +0.113
ドライ × 軽快 +0.163
華やか × 芳醇 -0.177
重厚 × 穏やか +0.217

相関係数は+1に近いほど連動し、0に近いほど無関係です。穏やか×ドライの+0.058は15ペア中で0に最も近い、つまり6軸のなかで最も互いを予測できない組み合わせでした。

これが意味するのは単純です。ある酒の穏やかが高いと分かっても、それが甘く感じる側か、キレる側かはまったく判断できない。まろやかさと甘辛は、6軸の上では独立した別々のものさしだということです。

一方、穏やかがはっきり反発する相手は別にいます。

組み合わせ 相関係数
華やか × 穏やか -0.512
穏やか × 軽快 -0.413

華やかと軽快、つまり重厚の記事で見た「いまの人気銘柄の形」を作っている2軸です。穏やかはその両方と逆に動きます。

穏やかが顔の105銘柄、人気100入りは2本

6軸のうち最も値が大きい軸を「その銘柄の顔」として1346銘柄を分類すると、穏やかが顔の銘柄は105本。そのうち人気トップ100に入っているのは2本(1.9%)だけでした。芳醇6.6%・軽快15.5%と比べると、明確に低い数字です。

人気トップ100の平均プロフィールでも、穏やかは全体平均0.393に対して0.351と下に振れています。華やか(+0.086)と軽快(+0.062)が上に振れる分、穏やかは押し出される側にいます。

つまり穏やかで選びたい人には、ランキングという物差しが効きません。数値そのもので探す必要があります。

今回の母集団:穏やか0.58以上の帯

穏やかは全体平均0.393・標準偏差0.096、最大値は0.738です。ここでは平均から標準偏差2つ分以上高い0.58以上の39銘柄を母集団にしました。

この39本のうち、人気トップ100に入っているのは0本です。

39本から7本を外しています。全国1位の超濃厚ヨーグルト酒(0.738)は華やか0.000・ドライ0.000と2軸が下限に張り付いた極端な形のため。ダイヤ菊・八甲田おろし・夏子物語の3本は長野のおすすめ青森の辛口新潟の辛口で既に扱っているため。残る3本は、後で選ぶ銘柄と同じ蔵の別銘柄が重複していたため外しました。

帯39本の平均は、全体平均と比べてこうなります。

穏やか0.58以上の39本 全体平均 倍率
穏やか 0.625 0.393 1.59倍
芳醇 0.492 0.535 0.92倍
重厚 0.322 0.328 0.98倍
軽快 0.326 0.422 0.77倍
ドライ 0.274 0.310 0.88倍
華やか 0.224 0.339 0.66倍

落ちるのは華やかと軽快です。39本中33本が華やか0.3未満、34本が軽快で全体平均を下回ります。相関のとおり、穏やかの帯に入ると香りと軽さが引く

一方でドライは39本中15本(38%)が全体平均以上でした。帯全体としては平均をわずかに下回るものの、中身は辛口寄りと甘口寄りが混在しているという状態です。相関+0.058がそのまま形になっています。

問題は、この32本が互いによく似ていることでした。総当たりのコサイン類似度(1に近いほどそっくり)は平均0.968、最大は白神山地の四季×藤娘の0.999。そこで32本から、都道府県が重ならず、最も似ているペアの類似度が最小になる5本の組み合わせを総当たりで探しました。選ばれた5本の最大ペア類似度は0.957、最小は0.853です。穏やかの高い順に並べます。

1. 寧音(石川県・白藤酒造店)|穏やかしか高い軸がない

穏やか0.709は全国2位。外れ値の超濃厚ヨーグルト酒を除けば実質の全国最高値です。

特徴的なのは残りの軸で、芳醇0.230は全国1338位(下位0.6%)、重厚0.158は全国1311位。旨味の量も重さも数値にほとんど出ていません。芳醇は1346銘柄中884本で最大軸になる「標準装備」の軸なので、ここまで低いのは珍しい位置です。

そのうえで軽快0.460は全国466位=上位34.6%。穏やか×軽快は-0.413の逆相関があり、まろやかな酒はふつう軽さの評価を落とすのですが、この銘柄は落としていません。華やか0.322・ドライ0.322はどちらもほぼ全体の中央値です。

まろやかさだけが突出し、他はどれも押してこないという形です。飲みごたえや旨味の量を求める人には物足りない数値ですが、穏やかという軸を一番濃く体験したいなら起点になります。

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2. Snow drop(福島県)|穏やかの帯で最も甘い側

穏やか0.682は全国5位。そこにドライ0.021=全国1345位(1346銘柄中の下から2番目)が組み合わさります。

キレの評価がほぼゼロということは、甘辛の物差しでは最も甘い側に振れているということです。芳醇0.554は全国571位=ほぼ中央で、旨味の量は5本のなかで2番目。重厚0.210(全国1189位)・華やか0.236(全国1105位)・軽快0.358(全国1025位)はいずれも平均以下です。

丸さと甘やかさだけで構成され、キレも香りも重さも足していないという並びになります。穏やかを甘さの方向で解釈したい人には、この形が最も近いはずです。香りの立つ甘さがほしい場合は甘口日本酒入門のほうが合います。

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3. 白神山地の四季(秋田県・八重寿銘醸)|同じ穏やかで、真逆の甘辛

穏やか0.654は全国7位。ここまでは前の2本と同じ帯にいます。違うのはドライ0.409で、**全国204位=上位15.2%**です。

前項のSnow dropはドライ0.021でした。穏やかがほぼ同じ高さなのに、ドライは19.5倍の開きがあります。相関+0.058という数字が実際にどう出るかを、この2本が一番はっきり示しています。まろやかさを手がかりに選ぶと、甘辛では正反対の酒を引き当てうるということです。

残りの軸は華やか0.154(全国1269位)・芳醇0.454(全国1191位)・軽快0.327(全国1138位)・重厚0.260(全国970位)と、すべて平均以下。丸さと引き締まりの2点だけを高く取る構成です。

穏やかな酒は甘ったるく感じそうで避けてきた、という人の不満は多くの場合ドライの低さに対応します。この1本はその心配が数値上ない側です。キレを主役にするなら辛口の日本酒5選もどうぞ。

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4. 鶴の友(新潟県・樋木酒造)|旨味の量が5本の最大

**穏やか0.604(全国26位)に、芳醇0.633=全国83位(上位6.2%)**が乗ります。旨味の量は今回の5本で最も高い数値です。

芳醇×穏やかの相関は+0.113とほぼ無関係で、まろやかな酒に旨味が伴う保証はありません。実際、穏やか0.58以上の39本のうち芳醇が全体平均(0.535)を超えるのは12本だけです。

代わりに軽快0.219は**全国1300位(下位3.4%)**で、5本のなかで断然の最低値。華やか0.177も全国1242位です。重厚0.331・ドライ0.215は平均前後で、旨味と丸さで飲ませ、軽さと香りは取らないという並びになります。

寧音との類似度0.853は今回の10ペア中の最小値で、5本のなかで最も個性が離れた組み合わせです。同じ穏やか0.6前後でも、芳醇0.230と0.633では別の酒になります。旨味を主役にするなら芳醇な日本酒5選、産地から広げるなら新潟のおすすめが続きです。

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5. 坤滴(京都府・東山酒造)|穏やかなのに香りが立つ側

**穏やか0.594(全国30位)と華やか0.418(全国320位・上位23.8%)**の同居が、この銘柄の位置です。

華やか×穏やかは-0.512と、穏やかにとって最も強い逆相関の相手です。穏やか0.58以上の39本でも華やかが0.3を超えるのは6本しかありません。そのなかで上位25%圏の華やかを持つこの銘柄は、統計的にはかなり外れた形にいます。

さらに重厚0.175は**全国1285位(下位4.5%)**で、5本で最も軽い側。軽快0.417は全国718位=ほぼ中央、芳醇0.475・ドライ0.205は平均以下です。丸さと香りがあり、重さがないという構成になります。

穏やかな酒は地味に感じる、というのが避ける理由なら、効くのはこの華やか0.418です。香りをもっと主役にしたい場合はフルーティーな日本酒5選へ。

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5本の数値を並べる

銘柄 華やか 芳醇 重厚 穏やか ドライ 軽快
寧音 0.322 0.230 0.158 0.709 0.322 0.460
Snow drop 0.236 0.554 0.210 0.682 0.021 0.358
白神山地の四季 0.154 0.454 0.260 0.654 0.409 0.327
鶴の友 0.177 0.633 0.331 0.604 0.215 0.219
坤滴 0.418 0.475 0.175 0.594 0.205 0.417
(全体平均) 0.339 0.535 0.328 0.393 0.310 0.422

穏やかは0.594〜0.709と1.19倍の幅に収まります。対してドライは0.021〜0.409で19.5倍、芳醇は2.75倍、華やか2.71倍、軽快2.10倍、重厚2.09倍に開きます。

まろやかさの量はほぼ揃っていて、違いは全部それ以外で出る。しかもいちばん開くのが甘辛の軸だというのが、この5本を並べたときの結論です。

穏やかの全国トップ10

順位 銘柄 都道府県 穏やか ドライ 華やか
1 超濃厚ヨーグルト酒 宮城県 0.738 0.000 0.000
2 寧音 石川県 0.709 0.322 0.322
3 ダイヤ菊 長野県 0.691 0.331 0.232
4 八甲田おろし 青森県 0.690 0.376 0.256
5 Snow drop 福島県 0.682 0.021 0.236
6 無窮天穏 島根県 0.661 0.108 0.148
7 白神山地の四季 秋田県 0.654 0.409 0.154
8 勢起 長野県 0.652 0.271 0.225
9 藤娘 高知県 0.645 0.392 0.149
10 喜久酔 静岡県 0.644 0.275 0.305

上位10本のドライ列を縦に読むと、0.000から0.409までばらばらに並んでいます。穏やかの順位表は、甘辛については何も並べ替えていないということです。

人気銘柄のなかで穏やかを取るなら

知っている名前から選びたい場合は、人気トップ100の穏やか上位がこうなります。

銘柄 都道府県 穏やか 穏やかの全国順位
勝駒 富山県 0.538 73位
廣戸川 福島県 0.517 113位
福井県 0.497 161位
八海山 新潟県 0.493 167位
田中六五 福岡県 0.487 194位
浦霞 宮城県 0.486 200位

このうち穏やかが最大軸になるのは勝駒と八海山の2本だけで、これが冒頭の「人気100入りは2本」の中身です。勝駒は鍋料理に合う日本酒、八海山は辛口の日本酒5選、浦霞は焼き鳥に合う日本酒で扱っています。

ただし人気100の最高値である勝駒でも全国73位で、今回の5本の最下位(坤滴・全国30位)より下です。人気銘柄の範囲で選ぶと、まろやかさの上限がここで止まります

穏やかな酒が多い県、少ない県

穏やか0.5以上は全国で155銘柄。収録10銘柄以上の県で比率を出すと、偏りが出ます。

都道府県 穏やか0.5以上 収録数 比率
京都府 11 46 24%
福島県 17 77 22%
神奈川県 4 19 21%
静岡県 5 25 20%
石川県 6 36 17%
新潟県 16 112 14%
広島県 1 37 3%
山口県 0 21 0%
佐賀県 0 22 0%

京都府は収録46銘柄の4分の1が該当します。逆に山口県と佐賀県は収録21・22銘柄で該当ゼロ。産地によって、そもそも穏やかな酒が集計上ほぼ存在しない県があります。銘柄名より先に、産地で当たりを付けるだけでも効率が変わります。

穏やかな酒を選ぶときの順番

穏やか0.58以上の帯なら、まろやかさはどれを選んでも足りています。決め手は、そこに何を足すかです。

  • まろやかさを最大化したい → 寧音の型(穏やか実質全国1位、芳醇・重厚は下位1〜3%)
  • 甘やかな側がいい → Snow dropの型(ドライ全国1345位)
  • 甘ったるいのが苦手 → 白神山地の四季の型(ドライ上位15.2%)
  • 旨味も欲しい → 鶴の友の型(芳醇上位6.2%)
  • 地味なのは避けたい → 坤滴の型(穏やか帯では例外的に華やかが上位23.8%)

この記事で一番覚えて損がないのは、「まろやか」と「甘い/辛い」は別々に指定しないと決まらないということです。穏やかだけを頼りに選ぶと、ドライ0.021とドライ0.409のどちらに当たるかは運になります。

6軸そのものの読み方は日本酒の選び方入門に、最初の1本の選び方ははじめての日本酒にまとめています。温度を上げると穏やかな酒の印象は変わるので、燗酒に合う日本酒5選も合わせてどうぞ。

自分の好みが本当に穏やか寄りかどうかは、1分の日本酒診断で確かめられます。穏やかは人気ランキングに出にくい軸なので、ここが好みだと分かった人ほど、数値で探す価値があります。