ワイン好きにすすめたい日本酒5選 — 好きなワインのタイプから選び分ける
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ワインを飲み慣れた人が日本酒売り場で止まるのは、好みを伝える言葉が通じないからです。ワインなら「ソーヴィニヨン・ブランが好き」と言えば、店員は香りの立つ辛口の白を出してきます。品種と産地が味の方向をほぼ説明してしまう。ところが日本酒のラベルに書かれているのは精米歩合や純米・吟醸といった造りの区分で、これは香りが立つのか、どっしりしているのか、甘いのかをほとんど教えてくれません。
そこで使えるのが、飲んだ人のレビューから算出されたフレーバーデータです。当サイトが利用しているさけのわデータは、各銘柄を華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快の6軸で数値化しています。収録1346銘柄を集計すると、ワイン好きにとって意味のある事実が二つ出てきます。
日本酒にも「白か赤か」に相当する分岐がある
ひとつめ。「華やか」と「重厚」は強く逆相関します(1346銘柄での相関係数 -0.703)。香りが派手に立つ酒ほど飲みごたえは軽く、どっしりした酒ほど香りは引っ込む。しかも華やか上位10%と重厚上位10%の両方に入る銘柄は、1346銘柄のなかで0本でした。
これはワインの白と赤の関係によく似ています。アロマティックな白ワインに赤ワインのタンニンと厚みを求めても両取りはできない——日本酒でも同じで、まず「香りで楽しむ方向」か「厚みで楽しむ方向」かを決める必要があります。ここを決めずに選ぶと、期待と逆のものが来ます。
ふたつめ。「芳醇」と「ドライ」も逆相関します(-0.505)。旨味が乗った酒はキレが鈍り、キレる酒は旨味が薄い。ワインで言えば、果実の凝縮感と酸のシャープさのバランスをどこで取るかという話です。「旨味たっぷりでキレッキレ」という注文は、データ上ほぼ成立しません。
以下では、さけのわランキング100銘柄を対象に、好きなワインのタイプ別で5本を選びました。5本のうち味の方向が最も離れているのは1番の甲子と3番の悦凱陣(コサイン類似度0.755)で、同じ「ワイン好きにすすめたい日本酒」でも中身はここまで違います。逆に最も近いのは2番のくどき上手と4番のロ万(0.975)です。
1. ソーヴィニヨン・ブラン/リースリングが好きなら — 甲子(千葉県・飯沼本家)
「華やか」0.514が全1346銘柄で上位5.8%(ランキング100銘柄で15位)、「軽快」0.571も同じく上位5.8%(同15位)。香りと軽さが揃って最上位クラスにある一方、「芳醇」は上位87.6%、「重厚」は上位95.4%、「穏やか」は上位95.5%と下位に沈みます。香りと軽さだけで組み立てられた構成で、「ドライ」0.338が上位35.0%(同26位)と平均よりは効いているため、後味に甘さが残りません。
アロマティックな辛口白ワインに求めるものと、この並びはほぼ一致します。グラスに注いだ瞬間に香りが来て、口に入ると軽く、飲み込んだあとに重さが残らない。厚みのある酒に慣れていない人がいちばん最初に「わかる」と感じやすいタイプでもあります。白ワインと同じく、よく冷やしてワイングラスで飲むと香りが立ち上がります。
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2. 樽熟成のシャルドネが好きなら — くどき上手(山形県・亀の井酒造)
「芳醇」0.626が全体上位7.9%、ランキング100銘柄では4番目に高い1本。「重厚」0.322も上位45.5%(同13位)と中位以上にあり、「華やか」0.435は上位19.2%。対して「軽快」は上位73.5%(同94位)と低く、旨味に厚みがあって、軽くはないという構成です。
樽熟成のシャルドネに惹かれる人が求めているのは、果実の香りよりも口の中でのふくらみと余韻の長さです。この並びはそれに近い。香りも上位2割には入りますが主役ではなく、舌に乗る旨味の量が味の中心にあります。軽い酒を物足りなく感じるタイプのワイン好きには、1番より先にこちらを試す価値があります。冷やしすぎると旨味が閉じるので、冷蔵庫から出して少し置くか、白ワインと同じ10〜12℃あたりが扱いやすい温度です。
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3. 赤ワインが好きなら — 悦凱陣(香川県・丸尾本店)
「重厚」0.579が全体上位3.3%(ランキング100銘柄で3位)、「芳醇」0.611も上位13.7%(同10位)。厚みと旨味がどちらも最上位です。そして「華やか」0.132は上位96.2%、「軽快」0.219は上位96.6%で、ランキング100銘柄のなかで揃って99位——香りも軽さも、ほぼ持ちません。
赤ワインを日常的に飲む人が日本酒に失望しやすいのは、「フルーティーでおすすめ」と渡された1本が軽すぎて、味の芯がないように感じるからです。必要なのは逆方向の酒です。この構成は上で述べた「華やか×重厚は両立しない」の重厚側の端にあり、香りを捨てた分を全部厚みに振っています。「穏やか」0.402が上位47.8%(同24位)と中位にあるので、厚いのに角が立ちません。赤ワインを室温で飲むのと同じ感覚で、常温からぬる燗にすると旨味が開きます。
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4. 甘口の白(シュペトレーゼ・ソーテルヌ)が好きなら — ロ万(福島県・花泉酒造)
「穏やか」0.468が全体上位19.2%(ランキング100銘柄で10位)と高く、「ドライ」0.196は上位87.4%(同84位)と低い。まろやかさが上位で、キレが下位という、今回の5本で唯一の組み合わせです。加えて「華やか」0.447が上位16.5%、「芳醇」0.552が上位44.1%と、香りと旨味も中位以上に揃います。
甘口の白ワインが好きな人にとって、辛口に寄せた日本酒は味の中心が抜けて感じられます。探すべきは「ドライが低く、穏やかが高い」組み合わせで、データ上はこの軸の組み方が甘やかさの目印になります。香りも立つので、デザートワインと同じく食後にゆっくり飲む使い方に向きます。ただし甘みのある酒は量が進みにくいので、小さめのグラスで少しずつが無理のない飲み方です。
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5. シャンパーニュ・辛口スパークリングが好きなら — 大信州(長野県・大信州酒造)
「ドライ」0.497が全体上位5.8%、ランキング100銘柄では3位。そこに「軽快」0.482(上位25.9%)と「華やか」0.404(上位27.8%)が重なり、一方で「芳醇」0.455は上位88.2%、「重厚」0.222は上位85.2%と厚みは持ちません。キレを軸に、軽さと香りを少し添えた構成です。
辛口スパークリングの役割は、香りで食欲を開き、酸とキレで口を切り、料理の脂を流すことです。泡は日本酒では再現できませんが、キレ・軽さ・香りという働きの組み合わせは再現できます。食事の最初の1杯として使ったり、揚げ物や脂の多い料理に合わせたりする場面で、この並びは素直に機能します。冷やして使うのが前提のタイプで、温度が上がるとキレが鈍ります。
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「冷やしてワイングラス」は、半分だけ正しい
ワイン好きに日本酒をすすめるとき、よく「ワイングラスで冷やして」と言われます。これは1番や5番のような香り・軽さ・キレで組まれたタイプには当てはまります。グラスの広がりが香りを集め、低い温度がキレを立てるからです。
ただし3番のような厚みに振った酒を冷やすと、旨味が閉じて渋さだけが前に出ます。赤ワインを冷蔵庫から出してすぐ飲まないのと同じ理屈で、厚みのある酒は温度を上げたほうが本来の幅が出ます。2番のように旨味が中心のタイプも、冷やしすぎは損です。つまりグラスと温度は銘柄の性格で変えるべきで、「日本酒は冷やす」と一括りにすると、せっかく選んだ厚い酒を一番おいしくない状態で飲むことになります。
もうひとつ、ワインとの決定的な違いは開けたあとの時間です。ワインは抜栓後に空気と触れて開くことを期待できますが、日本酒は香りの立つタイプほど開栓後に表情が落ちやすいので、1番や5番のような構成は早めに飲み切るほうが得です。逆に3番のような厚いタイプは数日かけても崩れにくく、少しずつ飲む使い方に耐えます。
好みをさらに絞るなら、香り方向が気になった人はフルーティーな日本酒5選、2番のような旨味方向は芳醇な日本酒5選、3番の厚み方向はどっしり飲みごたえのある日本酒5選、4番の甘み方向は甘口日本酒入門が続きになります。ワインと同じ発酵食品であるチーズとの合わせ方はチーズに合う日本酒5選にまとめました。自分がどの方向に寄っているかは1分の日本酒診断で4問に答えるだけでわかるので、売り場に行く前に一度確かめておくと選びやすくなります。