どっしり飲みごたえのある日本酒5選 — 「重厚」は人気トップ100に1本も載っていない軸
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飲みごたえのある酒がほしい、と思ったときに人気ランキングを上から眺めても、たぶん見つかりません。探し方が悪いのではなく、そもそも重い酒はランキングにほとんど載っていないからです。
当サイトが利用しているさけのわデータの6軸フレーバー(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)で1346銘柄を集計すると、それが数字ではっきり出ます。
「重厚が顔」の37銘柄、人気トップ100は0本
6軸のうち最も値が大きい軸を「その銘柄の顔」として1346銘柄を分類し、それぞれの群から人気トップ100に何本入っているかを数えました。
| 最大軸 | 銘柄数 | うち人気100入り | 率 |
|---|---|---|---|
| 芳醇 | 884 | 58 | 6.6% |
| 軽快 | 220 | 34 | 15.5% |
| 穏やか | 105 | 2 | 1.9% |
| ドライ | 69 | 4 | 5.8% |
| 重厚 | 37 | 0 | 0.0% |
| 華やか | 31 | 2 | 6.5% |
重厚が最大軸の37銘柄からは、1本もランキングに入っていません。6軸で唯一のゼロです。母数が最も少ない軸でもあるので、収録1346銘柄のうち「重厚が顔」なのは2.7%しかない、ということでもあります。
人気トップ100の側から見ても同じです。100銘柄を最大軸で分けると芳醇58・軽快34・ドライ4・穏やか2・華やか2で、重厚は0。人気100のなかで重厚が0.5を超えるのは玉川(0.606)・菊姫(0.597)・悦凱陣(0.579)・天狗舞(0.517)の4本だけで、この4本もいずれも最大軸は芳醇です。
重厚は「人気の形」の真逆に動く
なぜこうなるのかは、軸同士の相関を見ると分かります。15通りの組み合わせのうち、相関が強い順に上下を並べるとこうなりました。
| 組み合わせ | 相関係数 |
|---|---|
| 華やか × 軽快 | +0.657 |
| 芳醇 × 重厚 | +0.448 |
| 重厚 × 穏やか | +0.217 |
| …(中略)… | |
| 芳醇 × 軽快 | -0.558 |
| 華やか × 重厚 | -0.703 |
| 重厚 × 軽快 | -0.775 |
15ペア中で最も強い負の相関が重厚×軽快(-0.775)、2番目が華やか×重厚(-0.703)です。そして最も強い正の相関は華やか×軽快(+0.657)。
つまり華やかと軽快はセットで動き、重厚はその両方と正面から反発するという構造になっています。
その「華やか+軽快」が、いまの人気銘柄の形です。全体平均と人気トップ100の平均を並べると差が出ます。
| 軸 | 全体平均(1346本) | 人気100平均 | 差 |
|---|---|---|---|
| 華やか | 0.339 | 0.425 | +0.086 |
| 軽快 | 0.422 | 0.484 | +0.062 |
| 芳醇 | 0.535 | 0.527 | -0.008 |
| 穏やか | 0.393 | 0.351 | -0.042 |
| ドライ | 0.310 | 0.276 | -0.034 |
| 重厚 | 0.328 | 0.258 | -0.070 |
人気銘柄は平均より華やかで軽快、そして重厚が最も大きく下に振れています。ランキングを追いかけるほど重い酒から遠ざかる、という構図です。
裏返すと、重厚で選ぶ人にはランキングという物差しが効かない。だから軸の数値そのもので探す必要があります。
今回の母集団:重厚0.6以上の帯
重厚は全体平均0.328・標準偏差0.112、最大値は0.902です。ここでは平均から標準偏差2つ分以上高い0.6以上の34銘柄を「本気で重い帯」として母集団にしました。
そこから3本を外しています。玉川(0.606)は燗酒に合う日本酒5選で主役にしているため。カワセミの旅(0.902)とIslander(0.852)は6軸のうち複数が0.000という極端な形で、他銘柄との比較が成立しにくいためです(この2本は後半で別に扱います)。
残った31銘柄の平均は、全体平均と比べてこうなります。
| 軸 | 重厚0.6以上の31本 | 全体平均 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 重厚 | 0.662 | 0.328 | 2.02倍 |
| 芳醇 | 0.589 | 0.535 | 1.10倍 |
| 穏やか | 0.334 | 0.393 | 0.85倍 |
| ドライ | 0.156 | 0.310 | 0.50倍 |
| 軽快 | 0.181 | 0.422 | 0.43倍 |
| 華やか | 0.140 | 0.339 | 0.41倍 |
31本すべてで軽快が0.3未満、30本で華やかが0.3未満、28本でドライが0.3未満。重い帯に入ると、軽さ・香り・キレの3つがまとめて落ちます。一方で芳醇は31本中25本が全体平均以上で、旨味は保たれたままです。
問題は、この31本が互いによく似ていることでした。総当たりのコサイン類似度(1に近いほどそっくり)は平均0.972、最大は山陰東郷×楽の世の0.999。重い酒は重いという一点で似てしまうため、5本選ぶ意味を出すには意識して散らす必要があります。
そこで31本から、都道府県が重ならず、最も似ているペアの類似度が最小になる5本の組み合わせを総当たりで探しました。選ばれた5本の最大ペア類似度は0.960、最小は0.868です。重厚の高い順に並べます。
1. 達磨正宗(岐阜県・白木恒助商店)|重さ以外を全部捨てた形
重厚0.814は全国3位(上位0.2%)。今回の5本で最も重い1本です。
特筆すべきはそれ以外の軸で、軽快0.042は全国1345位(1346銘柄中の下から2番目)、ドライ0.034は全国1341位、華やか0.041は全国1343位。3軸そろって全国最下位クラスという並びになります。穏やか0.227も全国1292位で、丸さの評価も出ていません。
残ったのは重厚0.814と芳醇0.530(全国761位=ほぼ中央)だけ。軽さも香りもキレも数値に出ず、重さだけが突出するという、6軸で描ける最も極端な「重い酒」の形のひとつです。
飲みごたえという言葉の一番濃い部分を指したい人には、ここが起点になります。逆に言えば、軽快0.042は「するする飲む」場面とは相容れない数値なので、一杯を時間をかけて飲む前提の1本です。
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2. 三光天賦(岡山県・三光正宗)|重さに丸さが乗る唯一の型
重厚0.686は全国11位。そこに**穏やか0.532(全国84位・上位6.2%)**が乗るのが、この銘柄の特徴です。
重厚×穏やかの相関は+0.217とわずかな正の関係しかなく、重い酒がそのまま丸いとは限りません。今回の5本のなかでも穏やかが0.5を超えるのはこの1本だけです。
代わりに芳醇0.465は上位85.3%(=下位15%圏)で、旨味の量は5本で最も低く出ています。華やか0.075・ドライ0.086・軽快0.136はいずれも全国1330位前後。旨味の押しは強くないが、重さと丸さで飲ませるという数値の並びです。
重い酒は角が立つ、と感じたことがある人向けの型です。Debutとの類似度0.868は今回の10ペア中の最小値で、5本のなかで最も個性がはっきり分かれています。
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3. Debut(福岡県・若竹屋酒造場)|重い帯のなかでは香りが立つ側
**重厚0.661(全国15位)と芳醇0.635(全国77位・上位5.7%)**を両立し、旨味の量は今回の5本で2番目です。
そのうえで華やか0.328は全国729位=ほぼ全体の中央値。重厚0.6以上の31本のうち華やかが0.3を超えるのは1本だけで、それがこの銘柄です。華やか×重厚が-0.703という強い逆相関を考えると、この組み合わせは統計的にかなり珍しい位置にあります。
一方で穏やか0.122は全国1338位(下位0.7%)。丸さの評価はほぼ最下位で、三光天賦とは正反対です。ドライ0.078・軽快0.177も全国1320位台。重さと旨味と香りがあり、丸さと軽さがないという、押しの強い形になります。
重厚の帯に入るとたいてい香りが消えます。それが物足りない人にとっては、この華やか0.328が効きます。
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4. 千両男山(岩手県・菱屋酒造店)|重いのにキレが残る
**重厚0.604(全国30位)に、ドライ0.359(全国370位・上位27.5%)**が同居します。
重厚0.6以上の31本はドライ平均0.156で、28本が0.3未満。そのなかでドライが上位25%圏に近い数値を持つこの銘柄は、重厚とドライ(-0.26)の逆相関から外れた形です。今回の5本のなかでもドライは断然の最高値で、残る4本はいずれも0.1前後にとどまります。
華やか0.150・軽快0.256は全国1260〜1275位で低く、穏やか0.370・芳醇0.531はどちらも全体のほぼ中央。重さと引き締まりだけを高く取り、香り・軽さ・丸さを平均以下か平均並みに置くという構成です。
重い酒は甘ったるく感じて苦手、という人の不満は、多くの場合ドライの低さに対応します。その意味でこの1本は、重厚帯のなかの「辛口寄りの入口」です。辛口の日本酒5選で扱ったキレの軸を、重さ側から見た形とも言えます。
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5. 鷹長(奈良県・油長酒造)|旨味の量が5本の最大
**芳醇0.641は全国65位(上位4.8%)**で、今回の5本の最高値。重厚0.601も全国32位です。
芳醇×重厚は+0.448と6軸で2番目に強い正の相関があり、旨味と重さを両方高く取るのは相関に沿った素直な形です。5本のなかではこの銘柄が最もその教科書どおりの位置にいます。
残りは華やか0.187(全国1224位)、ドライ0.099(全国1323位)、軽快0.204(全国1311位)と低く、穏やか0.377はほぼ中央。旨味と重さで正面から押し、それ以外は引くという並びで、重厚帯の標準形に最も近い1本です。
重厚0.6以上の31本の平均プロフィール(華やか0.140/芳醇0.589/重厚0.662/穏やか0.334/ドライ0.156/軽快0.181)と見比べると、鷹長はどの軸もその平均の近くにいます。「重い酒とはどういう数値の形か」をまず1本で知りたいなら、ここから入るのが分かりやすいはずです。
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5本の数値を並べる
| 銘柄 | 華やか | 芳醇 | 重厚 | 穏やか | ドライ | 軽快 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 達磨正宗 | 0.041 | 0.530 | 0.814 | 0.227 | 0.034 | 0.042 |
| 三光天賦 | 0.075 | 0.465 | 0.686 | 0.532 | 0.086 | 0.136 |
| Debut | 0.328 | 0.635 | 0.661 | 0.122 | 0.078 | 0.177 |
| 千両男山 | 0.150 | 0.531 | 0.604 | 0.370 | 0.359 | 0.256 |
| 鷹長 | 0.187 | 0.641 | 0.601 | 0.377 | 0.099 | 0.204 |
| (全体平均) | 0.339 | 0.535 | 0.328 | 0.393 | 0.310 | 0.422 |
重厚は0.601〜0.814と1.35倍の幅に収まるのに、穏やかは0.122〜0.532で4.36倍、華やかは0.041〜0.328で8.0倍、ドライは0.034〜0.359で10.6倍に開きます。重さの量はほぼ揃っていて、違いは重さに何が付くかで出るということです。
さらに振り切った側にあるもの
母集団から外した2本を含め、重厚の全国上位はこの並びです。
| 順位 | 銘柄 | 都道府県 | 重厚 | 華やか | 軽快 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | カワセミの旅 | 新潟県 | 0.902 | 0.060 | 0.000 |
| 2 | Islander | その他 | 0.852 | 0.387 | 0.342 |
| 3 | 達磨正宗 | 岐阜県 | 0.814 | 0.041 | 0.042 |
| 4 | 花の井 | 茨城県 | 0.771 | 0.137 | 0.072 |
| 5 | 死神 | 島根県 | 0.746 | 0.106 | 0.156 |
| 6 | 喜楽里 | 和歌山県 | 0.722 | 0.162 | 0.219 |
全国1位のカワセミの旅は重厚0.902に対して穏やか0.000・軽快0.000で、6軸のうち2軸が下限に張り付いています。比較の対象としては扱いにくい数値ですが、6軸のスケールで「重い」を振り切るとこうなるという上限の目安にはなります。
人気銘柄のなかで重さを取るなら
どうしても知っている名前から選びたい場合は、人気トップ100の重厚上位がこうなります。
| 銘柄 | 都道府県 | 重厚 | 重厚の全国順位 |
|---|---|---|---|
| 玉川 | 京都府 | 0.606 | 28位 |
| 菊姫 | 石川県 | 0.597 | 36位 |
| 悦凱陣 | 香川県 | 0.579 | 45位 |
| 天狗舞 | 石川県 | 0.517 | 89位 |
| 王祿 | 島根県 | 0.455 | 167位 |
| ソガペール エ フィス | 長野県 | 0.422 | 228位 |
| 七本鎗 | 滋賀県 | 0.405 | 265位 |
上の4本は燗酒に合う日本酒5選、王祿は肉料理に合う日本酒5選、七本鎗は同じく燗酒の記事で扱っています。ただし人気100の最高値である玉川ですら全国28位で、今回の5本の最下位(鷹長・全国32位)とほぼ同じ位置です。人気銘柄の範囲で選ぶと、重さの上限がここで止まることは知っておいて損がありません。
重い酒が多い県、少ない県
重厚0.5以上は全国で105銘柄。県ごとの収録数に対する比率を出すと、偏りがはっきりします。
| 都道府県 | 重厚0.5以上 | 収録数 | 比率 |
|---|---|---|---|
| 鳥取県 | 7 | 14 | 50% |
| 大阪府 | 4 | 14 | 29% |
| 島根県 | 5 | 25 | 20% |
| 石川県 | 7 | 36 | 19% |
| 兵庫県 | 9 | 56 | 16% |
| 岐阜県 | 6 | 37 | 16% |
| 滋賀県 | 5 | 32 | 16% |
| 新潟県 | 5 | 112 | 4% |
鳥取県は収録14銘柄の半分が該当します。逆に収録数が最大の新潟県は112銘柄中5本=4%で、新潟の辛口や新潟のおすすめで見たとおり、この県の重心は別のところにあります。重い酒を探すなら、産地の当たりを付ける段階から変えたほうが早いということです。
重厚な酒を選ぶときの順番
重厚0.6以上の帯ではどれを選んでも重さは足りています。決め手になるのは、重さに何を組み合わせるかです。
- 重さを最大化したい → 達磨正宗の型(重厚全国3位、軽快・ドライ・華やかが全国最下位クラス)
- 角のない重さがほしい → 三光天賦の型(穏やかが上位6.2%)
- 香りも欲しい → Debutの型(重厚帯では例外的に華やかが中央値)
- 甘く感じるのが苦手 → 千両男山の型(ドライが上位27.5%)
- 旨味の量で選びたい → 鷹長の型(芳醇が上位4.8%)
なお重厚と芳醇は+0.448で連動するので、この帯は旨味の話とも地続きです。旨味を主役に、重さは付けない側から入りたい場合は芳醇な日本酒5選を、温度を上げて飲む前提なら燗酒に合う日本酒5選を、料理に当てるなら肉料理に合う日本酒5選をどうぞ。6軸そのものの読み方は日本酒の選び方入門にまとめています。
自分の好みが本当に重い側にあるかどうかは、1分の日本酒診断で確かめられます。重厚は人気ランキングと最も相性の悪い軸なので、ここが好みだと分かった人ほど、数値で探す価値があります。