秋田の辛口日本酒5選 — 人気7銘柄は1本も辛口ではない、それでも全国3位がいる県

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秋田の日本酒というと、新政や花邑のような「香りと甘み」の印象を持つ方が多いと思います。当サイトが利用しているさけのわデータの6軸フレーバーベクトル(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)で秋田県の45銘柄を並べると、その印象は数字の上でもだいたい合っていました。ただし、全体の平均から外れたところに1本だけ突き抜けた辛口がいるというおまけつきです。

収録1346銘柄のドライ値で上位25%の境界は0.367。秋田県の45銘柄のうち、これを超えるのは13銘柄です。

該当率28.9%は全国13位、県平均も全国平均並み

青森の辛口日本酒5選で見た青森が該当率60.6%だったのに対し、秋田はかなり穏当な数字です。

都道府県 収録数 該当本数 該当率 県平均ドライ
青森県 33 20 60.6% 0.408
高知県 20 11 55.0% 0.416
静岡県 25 13 52.0% 0.368
山形県 63 25 39.7% 0.356
新潟県 112 41 36.6% 0.342
秋田県 45 13 28.9% 0.317
長野県 93 22 23.7% 0.317

収録10銘柄以上の40都道府県のなかで秋田は該当率13位。県平均ドライ0.317は全国平均0.310とほぼ同じで、「辛口の県」とも「甘口の県」とも言えない位置にあります。

人気銘柄から入ると辛口には当たらない

秋田がおもしろいのはここからです。さけのわランキング100位以内に入っている秋田の銘柄は7つあり、これは新潟(10銘柄)に次ぐ全国2位の多さなのですが——

銘柄 ランキング ドライ 全国順位
新政 1位 0.165 1251位
雪の茅舎 25位 0.252 943位
花邑 30位 0.175 1236位
山本 38位 0.342 449位
一白水成 60位 0.290 744位
まんさくの花 89位 0.301 683位
飛良泉 91位 0.276 815位

7銘柄すべてが上位25%の境界0.367に届きません。それどころか7本中6本が全国平均0.310を下回り、ランキング1位の新政は0.165で全国1251位=**下位7.1%**です。

ランキング入りが4銘柄以上ある県のうち、該当ゼロなのは秋田・福島(6銘柄)・山口(6銘柄)の3県だけ。そのなかで秋田はランキング入り本数が最も多く、**「人気銘柄の数は全国2位なのに、そこから辛口は1本も出てこない」**という県になります。

秋田で辛口を探すなら、有名どころの外を見る必要があるということです。

全国3位のドライ値は秋田県の銘柄

一方で、全国のドライ値上位を見ると秋田が顔を出します。

順位 銘柄 都道府県 ドライ
1 りんごぽむぽむ 青森県 0.876
2 水神 岩手県 0.846
3 あざくら 秋田県 0.827
4 船中八策 高知県 0.788
5 ばくれん 山形県 0.761

ランキング1位の新政(0.165)とこのあざくら(0.827)は同じ県の銘柄ですが、6軸ベクトルのコサイン類似度は0.667。当サイトの表示スコアに直すと33点で、「似ていない」に分類される値です。同一県内でこれだけ離れた2本が並ぶのが秋田の特徴で、県内トップと2位のドライ値の差0.167も、収録10銘柄以上の県では岩手・岐阜に次ぐ3番目の大きさでした。

つまり秋田は、県全体としては辛口寄りではないのに、辛口方向の端に極端な1本を持っているという形をしています。

該当13本は互いに似ていない

該当銘柄が10本以上ある県について、県内の該当銘柄の全ペアで類似度を出して平均すると、秋田は青森に次いで2番目に低い値でした。

都道府県 該当本数 平均類似度
青森県 20 0.919
秋田県 13 0.933
高知県 11 0.949
山形県 25 0.952
新潟県 41 0.972
長野県 22 0.978
北海道 10 0.982

ただしこの0.933は、あざくら1本がかなり引き下げています。あざくらを除いた12本で計算し直すと0.958で、順位としては高知・山形あたりと同程度。青森のような「該当銘柄が全体的に散らばっている県」とは事情が違い、秋田は12本のまとまりと、そこから遠く離れた1本という構成です。

そのあざくらの数値の形も確認しておきます。ドライ0.827が全国3位である一方、芳醇0.192は全国1342位(下位0.4%)、重厚0.089は全国1341位(下位0.4%)、穏やか0.149は全国1332位(下位1.1%)。6軸のうち3軸が全国最下層に張り付いた、通常の日本酒のフレーバーベクトルからは外れた形です(全国平均は芳醇0.535・重厚0.328・穏やか0.393)。以下の5選には入れますが、他の4本とは別物として読んでください

以上を踏まえ、該当13銘柄から互いのコサイン類似度がなるべく低くなるように(=キレ以外の方向が重ならないように)5本を選びました。蔵は重複させていません。5本の全10ペアの平均類似度は0.869、最大でも0.949です。並び順はドライ値の高い順です。

1. あざくら(阿桜酒造)|全国3位、ただし形は特殊

ドライ0.827は全国3位(上位0.2%)。秋田県内はもちろん1位で、県内2位の白瀑(0.660)にも大きく差をつけています。

前述のとおり芳醇0.192・重厚0.089・穏やか0.149がいずれも全国下位1%台で、軽快0.292も下位9.2%。キレ以外のほぼすべてを削ぎ落とした数値の並びです。華やか0.405だけが上位27.6%と全国平均(0.339)を上回り、6軸のなかで唯一「残っている」軸になっています。

飲みごたえや旨味の厚みを求める方向ではまったくありません。キレの鋭さだけを一点で取りに行くならこれ、という位置づけの1本です。

同じ蔵には阿櫻(ドライ0.447・全国125位)もあり、こちらは芳醇0.524・重厚0.340と全国平均近辺。両者の類似度は0.812で、同じ蔵でも数値の形はかなり離れています。

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2. 白瀑(山本)|旨味を抜いて、軽さを足した辛口

ドライ0.660は全国14位(上位1.0%)。あざくらを外れ値として除けば、これが秋田の実質的な最辛口です。

芳醇0.371は全国1306位で下位3.0%、穏やか0.251も下位7.1%、華やか0.236は下位18.0%。旨味の厚み・丸み・香りの3つを同時に落としたうえで、軽快0.483を上位25.4%まで上げています。重厚0.274だけが下位33.6%と、そこまで極端ではありません。

旨味を抜いた分だけ軽さが前に出るという形で、1本目のあざくらと方向は同じながら(類似度0.915)、削り方は穏当です。

同じ蔵にはランキング38位の山本がいますが、そちらのドライは0.342で上位25%に届きません。両者の類似度は0.912。方向は近いものの、辛口かどうかの線はまたいでいます。人気銘柄では辛口に当たらない秋田で、同じ蔵の別銘柄なら当たるという、この県らしい構図です。

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3. 白神山地の四季(八重寿銘醸)|穏やか全国7位の辛口

ドライ0.409は上位15.2%と5本のなかでは中位ですが、注目は穏やか0.654です。全国1346銘柄中7位(上位0.5%)で、秋田県内1位。

穏やかとドライの両方で全国上位25%に入る銘柄は全国71本ありますが、穏やかの全国トップ10に限ると、ドライが上位25%に入るのは3本だけ(青森の八甲田おろし、高知の藤娘、そしてこの銘柄)です。

ほかの軸は、華やか0.154が下位5.8%、軽快0.327が下位15.5%、芳醇0.454が下位11.6%、重厚0.260が下位28.0%。香りも軽さも旨味も前に出さず、当たりの柔らかさだけを大きく取っているという並びになります。

キレのある酒はアルコールの当たりが強く出ることがありますが、この数値の形はその逆方向。1本目のあざくらとの類似度0.704は今回の全10ペアで最も低く、「秋田の辛口」という同じ括りのなかで最も離れた2本です。

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4. ゆきの美人(秋田醸造)|軽快上位4%、スイスイ飲める側の辛口

ドライ0.402は上位16.2%。そこに軽快0.592が乗ります。全国54位=**上位4.0%**で、秋田県内の該当13本では1位です。

軽快とドライの両方で全国上位25%に入る銘柄は87本。秋田はそのうち4本(ゆきの美人・栗林・千代緑・ど)を持ち、軽快が最も高いのがこの銘柄です。

残りの軸は、芳醇0.409が下位4.7%、重厚0.212が下位12.0%、穏やか0.346が下位29.3%、華やか0.394は上位30.6%と平均をやや上回ります。重さと旨味を落として、そのぶん流れの速さを最大化したという形です。

3本目の白神山地の四季とは、同じ「ドライ0.4前後」でありながら穏やか0.654対0.346、軽快0.327対0.592と正反対。ゆっくり流れるか、スッと流れるかの分かれ道になります。

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5. 北秋田(北鹿)|旨味を残したまま辛口側に置いた、全国10本のうちの1本

ドライ0.379は上位21.4%と、5本のなかでは最も控えめです。代わりに芳醇0.596が上位19.0%に入ります。

芳醇とドライの両方で全国上位25%に入る銘柄は、全国1346銘柄中**10本(0.7%)**しかありません。秋田はそのうち1本を持っており、それがこの北秋田です。

秋田の該当13本のなかでも、芳醇が全国平均0.535を超えるのは北秋田(0.596)と高清水(0.570)の2本だけ。1〜4本目が軒並み芳醇を落としている(0.192〜0.454)なかで、真逆のアプローチになります。

ほかの軸は、軽快0.361が下位24.8%、重厚0.277が下位34.8%、穏やか0.422と華やか0.340はほぼ全国平均。旨味の厚みを残したまま、キレをぎりぎり辛口側に置いたという、6軸のバランスとしては今回の5本で最も平均に近い1本です。

キレより先に旨味が欲しい、食事と長く付き合わせたい、という条件に数値上いちばん近い選択肢になります。

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もっとキレの強い方向に振りたいなら

秋田の該当13本をドライ値の高い順に並べた上位はこうなります。

銘柄 ドライ 芳醇 重厚 穏やか 軽快
あざくら 0.827 0.192 0.089 0.149 0.292
白瀑 0.660 0.371 0.274 0.251 0.483
0.505 0.380 0.294 0.347 0.569
刈穂 0.466 0.501 0.306 0.373 0.465
阿櫻 0.447 0.524 0.340 0.343 0.422
夏田冬蔵 0.409 0.412 0.259 0.585 0.438

この並びで目につくのは、ドライ値が下がるにつれて芳醇が0.192→0.524ときれいに上がっていくことです。秋田の辛口はキレを強くするほど旨味が削られるという関係がはっきり出ており、青森のように「ドライ0.5台でも重厚0.436を残す」といった型は見当たりません。該当13本で重厚が全国平均0.328を超えるのは高清水(0.366)と阿櫻(0.340)の2本だけです。

秋田で辛口を選ぶときの物差し

秋田は該当率28.9%で全国13位、県平均ドライ0.317は全国平均並み。ランキング入り7銘柄は1本も辛口側に入らず、それでいて全国3位のドライ値を持つ銘柄を抱えています。県の看板と、県の辛口が、まったく別の場所にあるというのが数値に出た秋田の姿です。

だから秋田で辛口を探すときは、まず有名銘柄のリストを一度離れる必要があります。今回の5本も、ドライは0.379から0.827に散らばる一方で、穏やかは0.149から0.654、軽快0.292から0.592、芳醇0.192から0.596、華やか0.154から0.405まで開きました。旨味を残すか削るか、当たりを柔らかくするか速くするか——決めるべきはそちらです。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。辛口そのものの考え方は辛口日本酒入門、他県の辛口については青森の辛口日本酒5選新潟の辛口日本酒5選山形の辛口日本酒5選長野の辛口日本酒5選もあわせてどうぞ。