冩楽が好きな人におすすめの似ている日本酒5選 — フレーバーデータで探す「次の1本」

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冩楽の次の1本を「旨味のある濃い酒」で探すと、たいてい想像より重い酒に当たります。芳醇な酒を集めると、どっしりした飲みごたえが一緒についてくるのが全体の傾向で、冩楽の「濃いのに重くない」感じはそこから外れた位置にあるからです。

そこでこの記事では、当サイトが利用しているさけのわデータの6軸フレーバーベクトル(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)を使い、冩楽とベクトルの向きが近い銘柄をコサイン類似度で計算して選びました。飲んだ人のレビューから算出された数値なので、イメージではなく実際の味の傾向にもとづく比較になります。

まず、冩楽はどういう味のプロフィールなのか

冩楽(福島県・宮泉銘醸)のフレーバー値と、収録1346銘柄のなかでの位置は次の通りです。

  • 芳醇 0.618(全体平均0.535)— 上位12%の旨味の濃さ
  • ドライ 0.217(同0.310)— 下位18%
  • 重厚 0.244(同0.328)— 下位21%
  • 華やか 0.436(同0.339)— 上位19%
  • 穏やか 0.390(同0.393)— ほぼ平均
  • 軽快 0.411(同0.422)— ほぼ平均

形を言葉にすると、旨味が濃くて後口は甘やか、そのうえ重さがない。香りは高めだが突き抜けてはおらず、丸みと身軽さは平均ちょうどという座標です。6軸のうち2つが平均ぴったりに収まっているのが、まずこの酒の特徴になります。

この組み合わせが珍しい理由は、芳醇0.60以上のグループを見ると分かります。収録中242本(全体の18.0%)あり、その平均は重厚0.399・軽快0.328・華やか0.302。旨味を濃くすると重さが出て身軽さと香りが落ちるのが全体の傾向です。実際、芳醇と重厚の相関は+0.448、芳醇と軽快は−0.558。冩楽はこの242本のなかで重厚0.244が下位6%、軽快0.411が上位14%、華やか0.436が上位13%——連動から3軸同時に外れています。

さらに、穏やかと軽快がともに全体平均±0.05に収まる銘柄は297本ありますが、そのなかで芳醇0.60以上・ドライ0.22以下・重厚0.25以下を満たすのは十四代・東洋美人・冩楽の3本だけでした。芳醇0.60以上かつ重厚0.25以下という条件だけでも18本(1.3%)に絞られ、ランキング入りは十四代・鳳凰美田・東洋美人・尾瀬の雪どけ・冩楽の5本です。

以下の5本は、その形が冩楽に近い順に並べています。いずれもさけのわランキング入りの人気銘柄です(冩楽自身は10位)。

1. 而今(三重県・木屋正酒造)|類似度 0.9979

収録銘柄のなかで、冩楽とベクトルの形が最も近い1本です。ドライ0.218は冩楽の0.217とほぼ同値、穏やか0.381も0.009低いだけ。後口の甘やかさと口当たりの丸みが、ほぼそのまま重なります。

違いが出るのは濃さと軽さです。芳醇0.575は冩楽より0.043低く全体では上位31%、代わりに軽快0.454は0.043高い上位37%、華やか0.454も0.018高い上位15%。つまり旨味の厚みを少し削って、香りと飲み進めやすさに振り替えたバランスになります。冩楽の方向性は好きだけれど、もう少し軽やかに杯が進むほうがいい——という人向け。さけのわランキング2位と、5本で最上位の人気銘柄でもあります。

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2. 宮寒梅(宮城県・寒梅酒造)|類似度 0.9979

類似度は而今との差が0.00004しかなく、実質同着の2本目です。6軸の並びも而今によく似ていて、芳醇0.583(上位26%)・軽快0.453(上位38%)・重厚0.253(下位24%)と、冩楽より一段軽い側に立ちます。

而今との違いは2軸。ドライ0.206は冩楽より0.011低い下位15%、穏やか0.369は0.021低い下位39%です。後口の甘やかさは冩楽より強く、口当たりの輪郭は少しはっきりする方向になります。華やか0.461は5本のなかで3番目の高さ(上位13%)。ランキング67位なので、5本のうちでは名前の知られ方がいちばん控えめな1本です。知っている銘柄を一周してしまった人の次の手として有効です。

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3. 東洋美人(山口県・澄川酒造場)|類似度 0.9975

5本のなかで、旨味の濃さがいちばん近い1本です。芳醇0.623は冩楽の0.618より0.005高いだけの上位9%。重厚0.238(下位20%)も冩楽とほぼ同じで、「濃いのに重くない」という冩楽の核心部分がそのまま保たれています。

差が出るのは香りと身軽さです。華やか0.488は冩楽より0.052高い上位9%、軽快0.392は0.019低く5本の最低値、穏やか0.350も0.040低い。つまり濃さを維持したまま、香りを足して身軽さを引いたプロフィール。ドライ0.203も冩楽より低いので後口は甘やか側に寄ります。1杯をゆっくり味わう飲み方、味の濃い料理と合わせる場面に向きます。冩楽の「濃さ」を気に入っている人には、5本のなかでいちばん素直な選択肢です。

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4. 十四代(山形県・高木酒造)|類似度 0.9967

軽快0.418が冩楽の0.411とほぼ同値で、飲み進めやすさの感触がいちばん近い1本です。芳醇0.602(上位17%)も冩楽より0.016低いだけ、重厚0.239は5本の最低値(下位20%)です。

はっきり違うのはドライ0.183で、冩楽より0.034低い下位9%——5本の最低値です。あわせて華やか0.498は0.062高い上位7%で、こちらは5本の最高値。香りの高さと甘やかな余韻を一段ずつ足した方向になります。穏やか0.353は冩楽より0.037低いので、輪郭は少しくっきりします。冩楽の濃さと身軽さのバランスは変えず、香りと甘さだけを強めたいときに。さけのわランキング5位の銘柄です。

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5. 七田(佐賀県・天山酒造)|類似度 0.9950

5本のなかで、いちばん食事寄りに振れた1本です。重厚0.301は冩楽より0.057高くほぼ全体平均(上位53%)で5本の最高値、ドライ0.237も0.020高い5本の最高値、軽快0.468も0.057高い上位32%。飲みごたえと後口のキレを足して、杯の進む方向に寄せた組み合わせです。

その代わり華やか0.405は冩楽より0.031低く、5本のなかで唯一冩楽を下回ります(それでも上位27%)。芳醇0.582は0.036低い上位27%。要するに香りの主張を抑えて、味の芯と切れ上がりを前に出したタイプ。冩楽の旨味は気に入っているが、単体で飲むと少し甘く長く感じる——という人、常温や燗でじっくり飲む機会が多い人に向きます。ランキングは63位です。

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なお6番目は花邑(秋田県・両関酒造)で、類似度0.99496。七田の0.99503とは0.00007差の事実上の同着です。華やか0.503(上位7%)・ドライ0.175(下位8%)・軽快0.352(下位21%)なので、七田とは真逆——香りと甘やかさを足して身軽さを削る方向。七田の説明を読んで「逆がいい」と思った人は、こちらを見てください(花邑の味わいチャート)。

似ている酒の探し方のコツ

冩楽系の酒を探すときの落とし穴は、芳醇の数字だけで選ぶことです。前述の通り、芳醇0.60以上の242本は平均重厚0.399・平均軽快0.328。冩楽(重厚0.244・軽快0.411)と比べると、母集団全体が「もっと重くてもっと鈍重」な方向に偏っています。ここから適当に引けば、旨味は似ているのに腰が重い酒に当たる確率のほうが高いわけです。

条件を足すなら次の3つです。ひとつは重厚0.30以下。今回の5本は0.238〜0.301で、242本の平均0.399を全員が大きく下回ります。芳醇を上げると重厚がついてくる(相関+0.448)ので、ここが最初の上限になります。ふたつめはドライ0.24以下。5本は0.183〜0.237で、冩楽の甘やかな余韻を外さないための条件です。みっつめは芳醇0.57以上。5本は0.575〜0.623に収まります。

この3条件(芳醇0.57以上・ドライ0.24以下・重厚0.30以下)を同時に満たす銘柄は1346本中47本、そのうちランキング入りは11本でした。十四代・鳳凰美田・尾瀬の雪どけ・而今・東洋美人・亀泉・花陽浴・花邑・冩楽・たかちよ・宮寒梅です(七田は重厚0.301でわずかに外れます)。冩楽の棚の隣を探すなら、この11本が出発点になります。

5本の性格を並べると、「而今=ほぼ同じ形で少し軽い/宮寒梅=而今に近く、甘やかさがより強い/東洋美人=濃さは同じで香りを足し身軽さを引く/十四代=軽さは同じで香りと甘さを強く/七田=香りを抑えて飲みごたえとキレ」となります。自分が冩楽のどこを気に入っているか——旨味の濃さなのか、重くならない軽さなのか、甘やかな後口なのか——で選べば外しません。

なお、冩楽と同じ福島県の銘柄では、ランキング53位のロ万の類似度が0.9941で、県内では最も近い形でした。ただし穏やか0.468(冩楽0.390)と口当たりの丸みがかなり強い方向にずれます。76位の天明は0.9911で軽快0.507の軽さ寄り、19位の飛露喜は0.9840でドライ0.322とキレ寄り、27位の楽器正宗は0.9696で軽快0.563・重厚0.159の軽さ型。同じ県だから味も近い、とはならないのが数値に出ています(県内の比較は福島県の日本酒おすすめ5選に書いています)。

今回1位の而今と4位の十四代については、それぞれ而今が好きな人におすすめの似ている日本酒5選・十四代が好きな人におすすめの似ている日本酒5選で逆方向からの比較も書いています。冩楽の芳醇の高さで選びたい人は旨味とコクの芳醇な日本酒5選、ドライの低さが気に入っている人は甘口の日本酒もどうぞ。

自分の好みがどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。同じ冩楽好きでも、旨味の濃さに惹かれている人と後口の甘やかさに惹かれている人ではおすすめの1本は変わります。まず自分の座標を知ることから始めてみてください。