秋田のフルーティーな日本酒5選 — 辛口ゼロだった人気7銘柄が、こちらでは4本該当する

※ 本記事にはアフィリエイト広告(PR)のリンクを含みます

前回の秋田の辛口日本酒5選で、さけのわランキング100位以内に入る秋田の7銘柄が1本も辛口側(ドライ上位25%)に入らないという結果を書きました。

同じ7銘柄を、今度は「華やか」で見ます。当サイトが利用しているさけのわデータの収録1346銘柄で、華やか値の上位25%の境界は0.414。これを超える秋田の銘柄は45本中15本で、7銘柄のうち4本がそこに含まれます。

辛口では0本、フルーティーでは4本。秋田の看板銘柄が数字の上でどちら側に立っているかは、これではっきりします。

秋田の華やか県平均は全国9位

収録10銘柄以上の40都道府県で、華やか値の県平均を並べます。

収録数 県平均 華やか 該当本数 該当率
長崎県 10 0.407 6 60.0%
山口県 21 0.405 11 52.4%
群馬県 26 0.398 13 50.0%
佐賀県 22 0.388 9 40.9%
埼玉県 23 0.384 9 39.1%
高知県 20 0.382 8 40.0%
栃木県 32 0.381 12 37.5%
長野県 93 0.380 33 35.5%
秋田県 45 0.379 15 33.3%
三重県 28 0.368 12 42.9%

秋田は県平均全国9位、該当率33.3%は全国10位、該当本数15本は長野・新潟・山形・福島に次ぐ全国5位です。

前回見たドライは県平均0.317(全国平均0.310とほぼ同じ)、該当率28.9%で全国13位でした。同じ県が、辛口では平均どまりで、香りでは上位1/4に入る。秋田の6軸のうち前に出ているのは華やかのほうだ、というのが数字の結論です。

人気7銘柄のうち4本が該当する

前回と同じ表を、ドライではなく華やかで作り直します。

銘柄 ランキング 華やか 全国順位 上位25%
花邑 30位 0.503 92位 該当
新政 1位 0.501 95位 該当
山本 38位 0.454 199位 該当
一白水成 60位 0.429 277位 該当
雪の茅舎 25位 0.387 449位
まんさくの花 89位 0.377 509位
飛良泉 91位 0.371 544位

該当は4本ですが、外れた3本も0.371〜0.387で全国平均(0.339)を上回っています。7銘柄すべてが華やか側で、ドライのとき7本中6本が全国平均を下回っていたのとちょうど裏返しです。

ランキング入りが4銘柄以上ある8県で比べると、こうなります。

ランキング入り 華やか該当 ドライ該当
山口県 6 5 0
山形県 6 4 1
福島県 6 4 0
秋田県 7 4 0
長野県 5 3 1
新潟県 10 4 5
宮城県 6 2 2

秋田はランキング入り本数が8県で最も多く、そのうえで華やか4・ドライ0。人気の入口が香り側に一本化されている県という位置づけになります。新潟が華やか4・ドライ5と両方に分かれているのと対照的です。

15本の形は「香り+軽さ」

該当15本が、華やか以外のどの軸で上位25%に入るかを数えました。華やか該当が10本以上ある14県との比較です。

本数 芳醇 重厚 穏やか ドライ 軽快
群馬県 13 2本 0本 0本 0本 11本(85%)
兵庫県 10 2本 0本 0本 0本 7本(70%)
宮城県 11 2本 0本 0本 1本 7本(64%)
茨城県 11 2本 1本 0本 2本 7本(64%)
秋田県 15 2本 0本 0本 1本 9本(60%)
栃木県 12 4本 0本 0本 1本 7本(58%)
長野県 33 5本 1本 0本 3本 17本(52%)
福島県 17 2本 0本 2本 0本 7本(41%)
山形県 18 5本 0本 2本 1本 5本(28%)
岐阜県 12 7本 0本 0本 1本 3本(25%)

秋田は**軽快が15本中9本(60%)**で、14県中5番目の高さ。重厚と穏やかは0本、ドライも1本だけです。

軸ごとの範囲でも同じことが出ます。

15本の範囲 15本平均 全国平均
華やか 0.419〜0.616 0.481 0.339
芳醇 0.463〜0.609 0.522 0.535
重厚 0.200〜0.349 0.255 0.328
穏やか 0.152〜0.414 0.329 0.393
ドライ 0.144〜0.376 0.251 0.310
軽快 0.352〜0.579 0.488 0.422

穏やかは最大値0.414でも上位25%の境界0.450に届きません。実際、華やかと穏やかの両方が上位25%に入る全国9本(山形2・新潟2・京都2・福島2・宮崎1)に、秋田は1本も入っていません福島のフルーティーな日本酒5選で書いた「香りに丸みを足す」型は、秋田では選べないということです。

一方で華やか×軽快が両方上位25%の銘柄は全国181本あり、秋田は9本。長野(17本)・群馬(11本)・新潟(11本)に次ぐ全国4位で、収録45本という母数を考えると比率20.0%は収録20本以上の県で9位に入ります。秋田のフルーティーは、香りに軽さを足す方向にほぼ一本化されています

香りに振っても旨味が減らない、唯一の県

もうひとつ、14県のなかで秋田だけに出た数字があります。県平均から華やか上位群への変化です。

芳醇の差 ドライの差 穏やかの差 軽快の差
福島県 +0.019 -0.050 -0.065 +0.043
山形県 +0.015 -0.085 -0.046 +0.023
新潟県 +0.014 -0.100 -0.104 +0.067
秋田県 -0.000 -0.066 -0.052 +0.042
長野県 -0.011 -0.029 -0.058 +0.045
群馬県 -0.027 -0.023 -0.075 +0.079
茨城県 -0.031 +0.006 -0.056 +0.092

秋田の芳醇は、県平均0.52182に対して華やか上位15本の平均が0.52167。差はマイナス0.00016で、14県のなかで最も0に近い値です。

前回の辛口記事では、秋田の該当13本について「キレを強くするほど旨味が削られる」(ドライ0.827の銘柄で芳醇0.192、ドライ0.379の銘柄で芳醇0.596)という関係を書きました。香り側では、この取引が発生しません。秋田で華やかを選んでも、旨味の水準は県の平均どおり残ります。

代わりに削れるのはドライ(-0.066)と穏やか(-0.052)です。秋田で香りを取ると、失うのはキレと丸みで、旨味ではない——というのが14県比較で見えた秋田の形です。

15本の内訳と、選び方の前提

15本の蔵元を数えると、新政酒造が3本(新政・やまユ・佐藤卯兵衛)、天寿酒造が2本(天寿・鳥海山)、残り10本はすべて別々でした。同じ蔵が固まっているぶん群がまとまって見えるのでは、と疑って105ペアを分けると、同じ蔵どうしの4ペアの平均類似度は0.9887、違う蔵どうしの101ペアは0.9763。最も近いペアは0.9992で、これは山本(山本)と鳥海山(天寿酒造)という別々の蔵の2本でした。

15本の群内平均類似度は0.977で、14県中8番目に低い値。6軸の幅の合計は1.213で、福島(1.025)よりは広く、山形(1.776)や栃木(2.205)よりは狭い、中間の県です。

そこで15銘柄から、蔵を重複させず、互いのコサイン類似度がなるべく低くなる5本を選びました。全10ペアの類似度は0.912〜0.981、平均0.959です。並び順は華やか値の高い順。

なお新政・花邑・山本・一白水成もこの15本に入りますが、知名度が高いぶん比較の役に立ちにくいので、後半の表にまとめました。

1. 稲とアガベ(稲とアガベ醸造所)|華やか全国12位、穏やかは下位1.1%

華やか0.616は収録1346銘柄中全国12位(上位0.9%)で、秋田県45銘柄の1位です。

同時に穏やか0.152が全国1331位=下位1.1%、ドライ0.155も下位5.6%。芳醇0.463は下位13.9%、重厚0.256は下位26.4%と、この2軸も平均以下です。残るのは軽快0.543で、こちらは全国137位(上位10.2%)

香りと軽さの2軸だけを大きく取り、残り4軸をまとめて平均以下に落としたという、6軸のなかで最も極端な形です。とくに穏やかの低さは、当たりの柔らかさをほぼ残していない水準になります。

15本の105ペアのうち**最も離れているのが、この銘柄と4本目の千歳盛のペア(0.912)**でした。秋田のフルーティーの両端がこの2本です。

稲とアガベの味わいチャートを見る楽天で探す(PR)Amazonで探す(PR)

2. 佐藤卯兵衛(新政酒造)|15本で最も穏やかが高く、最もドライが低い

華やか0.521は全国63位(上位4.7%)で、秋田県内3位です。

この銘柄が15本のなかで持っている記録は2つ。穏やか0.414は15本の最高値(全国558位・上位41.5%)で、ドライ0.144は15本の最低値(全国1285位・下位4.5%)です。穏やかは全国基準では平均をやや下回りますが、上限0.414というこの群のなかでは天井にあたります。

ほかは芳醇0.500が下位27.4%、重厚0.294が下位44.1%、軽快0.447が下位59.1%。軽快を上位25%に乗せていない6本のうちの1本でもあり、1本目とは軽快0.447対0.543、穏やか0.414対0.152と逆を向きます。

香りは高い位置で取りつつ、キレの刺激をできるだけ避けたい——という条件では、15本のなかでこれが端です。

同じ蔵からはやまユ(華やか0.533・全国47位)と新政(0.501・全国95位)も該当しており、3本の相互類似度は0.984〜0.994。蔵の内側では方向がよく揃っています

佐藤卯兵衛の味わいチャートを見る楽天で探す(PR)Amazonで探す(PR)

3. 千代緑(奥田酒造店)|15本で唯一、キレも上位25%に入る

華やか0.455は全国194位(上位14.4%)。この銘柄の特徴はドライ0.376で、15本のなかで唯一、ドライの上位25%(境界0.367)を超えます

華やかとドライの両方が全国上位25%に入る銘柄は、1346本中**24本(1.8%)**しかありません。秋田の該当はこの千代緑1本だけです。

さらに軽快0.521が上位15.3%。香り・キレ・軽さの3つが同時に上位25%側にある構成で、そのぶん芳醇0.470は下位16.1%、重厚0.218は下位13.8%、穏やか0.333も下位24.5%まで落ちています。

前回の辛口記事で「秋田のフルーティーは辛口に当たらない」という話をしましたが、その例外がこの1本です。香りのある酒で飲み終わりが甘く残るのを避けたいなら、秋田では選択肢がここに絞られます。

千代緑の味わいチャートを見る楽天で探す(PR)Amazonで探す(PR)

4. 千歳盛(千歳盛酒造)|軽快を捨てた側、15本で重厚が最も高い

華やか0.420は上位23.1%で、15本のなかでは下から2番目。かわりに他の軸が全体平均の近くに残ります。

重厚0.349は15本の最高値(全国464位・上位34.5%)、ドライ0.354は15本の3位(上位29.3%)、芳醇0.573は上位31.8%。そして軽快0.352は15本の最低値タイ(花邑と同値、全国1055位・下位21.6%)です。穏やか0.353は下位33.0%。

つまり軽快60%の群のなかで、軽さを取らずに厚みと重さを残した1本。1本目の稲とアガベとは、軽快0.352対0.543、重厚0.349対0.256、芳醇0.573対0.463と3軸で逆を向き、類似度0.912は15本105ペアの最小値になります。

香りは欲しいが、スイスイ流れる飲み口ではなく、口のなかに留まる厚みが欲しい。秋田の15本でその条件に最も近いのがこれです。

千歳盛の味わいチャートを見る楽天で探す(PR)Amazonで探す(PR)

5. マルヒ(飛良泉本舗)|香りは15本の下限、旨味は上位16%

華やか0.419は15本の最低値で、上位25%の境界0.414をぎりぎり超えた位置(上位23.3%)です。

そのかわり芳醇0.604が**全国219位(上位16.3%)**まで来ます。15本では花邑(0.609)に次ぐ2位。華やかと芳醇の両方が上位25%に入る全国64本のうち、秋田の2本がこの花邑とマルヒです。

ほかは穏やか0.270が下位9.7%、ドライ0.227が下位21.1%、重厚0.336が上位40.1%、軽快0.472が上位29.7%。香りは控えめに、旨味の厚みを前に出し、丸みを削ったという並びで、香りの量では今回の5本で最も穏当な選択肢になります。

同じ蔵にはランキング91位の飛良泉がいますが、そちらは華やか0.371で該当しません(両者の類似度0.985)。人気銘柄は該当しないが、同じ蔵の別銘柄なら該当する——前回の辛口記事で山本蔵に見たのと同じ構図が、香り側でも起きています。

マルヒの味わいチャートを見る楽天で探す(PR)Amazonで探す(PR)

人気銘柄から選ぶなら

該当15本のうち、さけのわランキングに入っている4銘柄です。

銘柄 ランキング 華やか 芳醇 重厚 穏やか ドライ 軽快
新政 1位 0.501 0.492 0.268 0.292 0.165 0.568
花邑 30位 0.503 0.609 0.260 0.393 0.175 0.352
山本 38位 0.454 0.500 0.201 0.291 0.342 0.549
一白水成 60位 0.429 0.567 0.262 0.362 0.290 0.459

華やかは0.429〜0.503とほぼ同じ帯にありますが、軽快が0.352から0.568まで開きます。新政(0.568・上位6.4%)と山本(0.549・上位9.7%)が軽さ側、花邑(0.352・下位21.6%)が厚み側で、花邑だけは芳醇0.609(上位14.7%)と組み合わさって別方向を向いています。

ドライは新政0.165・花邑0.175と全国下位10%以内の2本に対し、山本0.342・一白水成0.290が全国平均前後。同じ「秋田の人気フルーティー」でも、キレの残り方は2倍以上の差があります

もっと香りの強い方向に振りたいなら

華やか値だけを追うなら、秋田の上位はこの並びです。

銘柄 全国順位 華やか 芳醇 穏やか ドライ 軽快
稲とアガベ 12位 0.616 0.463 0.152 0.155 0.543
やまユ 47位 0.533 0.501 0.385 0.157 0.502
佐藤卯兵衛 63位 0.521 0.500 0.414 0.144 0.447
花邑 92位 0.503 0.609 0.260 0.175 0.352
新政 95位 0.501 0.492 0.292 0.165 0.568
NEXT5 115位 0.490 0.511 0.407 0.190 0.497

県内最高の稲とアガベは全国12位。華やか該当が10本以上ある14県のうち、県内最高値がこれより上なのは長野(0.678)だけで、秋田は14県で2番目に高い天井を持っています。

そして注目は右端から2列目です。華やか上位6本のドライは0.144〜0.190で、全て全国下位12%以内。秋田では香りを追うほどキレが消えるという関係が、上位ほど極端に出ます。キレも残したいなら、華やかは0.42〜0.46の帯——今回の3本目・4本目や山本のあたりで止めるのが、データ上の落としどころです。

秋田でフルーティーを選ぶときの物差し

秋田は華やか県平均0.379で全国9位、該当15本で全国5位。ランキング入り7銘柄のうち4本が該当し、前回の辛口では0本だったのと正反対の結果になりました。秋田は辛口の県ではなく、香りの県というのが、2回に分けて同じ45銘柄を見た結論です。

そのうえで15本の性格ははっきりしています。軽快が9本(60%)、重厚と穏やかは0本、ドライは1本。香りに足せるのは軽さで、丸みと重さはほぼ選べない。福島や山形にあった「華やか×穏やか」は秋田に1本もありません。

決めるべきは2つです。ひとつは軽快(0.352〜0.579)で、スッと流すか口に留めるか。もうひとつは芳醇(0.463〜0.609)で、旨味の厚みをどこまで乗せるか。秋田は香りに振っても旨味の県平均が落ちない唯一の県なので、後者は妥協せずに選べます。

フルーティー全般の選び方はフルーティーな日本酒の選び方、秋田の逆側は秋田の辛口日本酒5選、他県の香り系は長野新潟山形福島にまとめています。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。