広島の辛口日本酒5選 — 該当率も最高値も全国10位、なのにキレるほど軽くならない県

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当サイトが利用しているさけのわデータには、飲んだ人の投稿から算出された6軸フレーバーベクトル(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)が収録されています。この「ドライ」の値で全国1346銘柄を並べたとき、上位25%の境界は0.367です。

広島県の収録37銘柄のうち、これを超えるのは13銘柄。該当率35.1%は収録10銘柄以上の40都道府県で全国10位です。

そして県内で最も高いドライ値は0.632。この値で40都道府県を並べ直しても、広島はやはり10位に入ります。数と最高値の順位がぴたりと重なる県は多くありません。

該当率10位・県内最高値10位という珍しい形

該当率の上位12県を、県内最高のドライ値と並べてみます。カッコ内は、県内最高値だけで40都道府県を並べ直したときの順位です。

順位 都道府県 収録数 該当本数 該当率 県内最高ドライ
1 青森県 33 20 60.6% 0.876(1位)
2 高知県 20 11 55.0% 0.788(4位)
3 静岡県 25 13 52.0% 0.581(14位)
4 北海道 22 10 45.5% 0.554(17位)
5 和歌山県 10 4 40.0% 0.594(13位)
6 山形県 63 25 39.7% 0.761(5位)
7 新潟県 112 42 37.5% 0.656(9位)
8 福井県 24 9 37.5% 0.573(15位)
9 愛媛県 17 6 35.3% 0.459(31位)
10 広島県 37 13 35.1% 0.632(10位)
11 宮城県 38 13 34.2% 0.542(18位)
12 福岡県 38 11 28.9% 0.628(11位)

宮城の辛口日本酒5選で見た宮城は、該当率11位に対して県内最高値は18位。秋田は逆に該当率13位・最高値3位で、こちらは「数は少ないが突き抜けた1本がある」形でした。

広島はそのどちらでもなく、数も最高値も同じくらいある県です。県全体のドライ平均0.347も40都道府県中7位で、該当13本だけでなく県ぜんたいが辛口側に寄っています。

キレるほど軽くならない

ところが、県内の並び方には全国と逆の癖があります。該当13本をドライ値の高い順に並べ、上位6本と下位7本で軸平均を比べます。

軸 上位6本(ドライ0.414以上) 下位7本(0.414未満)
華やか 0.280 0.346
芳醇 0.480 0.507
重厚 0.286 0.288
穏やか 0.415 0.383
ドライ 0.505 0.386
軽快 0.408 0.472

キレが強い側のほうが、軽快も華やかも低いという並びです。13本でドライと軽快の相関係数を取ると**−0.313**。全国1346銘柄では+0.163とゆるく正の関係なので、向きが反転しています。

該当銘柄が10本以上ある13県で同じ計算をすると、広島の−0.313が最も負に振れた値でした(静岡−0.294、秋田−0.311、福岡は+0.480)。

つまり広島では、「キレるから軽い」が成り立たない。強い辛口を選ぶと、代わりに軽さと香りが落ちていきます。

「辛口で華やかで軽快」は全国15本、うち3本が広島

その一方で、ドライの境界付近には正反対の一群がいます。ドライ・華やか・軽快の3軸すべてで全国上位25%(0.367/0.414/0.484)に入る銘柄は、全国で**15本(1.1%)**しかありません。

都道府県 該当本数
広島県 3(富久長・賀茂金秀・本州一)
茨城県 2
神奈川県 2
ほか8県 各1

最多は広島です。ドライと華やかの2軸だけで見ても全国25本中3本を占め、長野(収録93銘柄)・青森(同33銘柄)と並んで最多。収録37銘柄という規模からするとかなりの密度です。

前章の傾向と合わせると、広島の辛口はドライ0.5超の「引き算型」と、境界付近の「香って軽い型」に分かれていることになります。同じ県の辛口でも、どちらを選ぶかで飲み口はまるで変わります。

旨味では選べる県

該当13本の軸平均を全国平均と並べます。

軸 広島の該当13本 全国平均
華やか 0.316 0.339
芳醇 0.494 0.535
重厚 0.287 0.328
穏やか 0.398 0.393
ドライ 0.441 0.310
軽快 0.443 0.422

平均値だけ見れば、辛口らしく芳醇と重厚が全国平均を下回る、よくある形です。ただし中身は割れていて、芳醇が全国平均0.535に届く銘柄が13本中4本あります。宮城は13本中0本、山形は25本中1本、福島は12本中1本だったので、広島は旨味を残した辛口が比較的見つかる県です。

重厚も13本中4本が全国平均超え。県全体(37銘柄)の軸平均順位は、ドライ7位に対し、華やか21位・穏やか18位・軽快18位・芳醇26位・重厚27位と中位に収まります。

ちなみに、さけのわランキング100位以内に入る広島の銘柄は2つです。

銘柄 ランキング ドライ 全国順位 該当
雨後の月 36位 0.344 439位 —
賀茂金秀 96位 0.371 320位 ○

人気銘柄から辛口に当たる確率は高くありません。広島の辛口は、ランキングの外から探すことになります。

以上を踏まえ、該当13銘柄から互いのコサイン類似度がなるべく低くなるように5本を選びました。蔵は重複させていません。5本の全10ペアの平均類似度は0.963、最も離れた組み合わせは0.940(当サイトの表示スコアで88点)です。並び順はドライ値の高い順です。

1. 宝剣(宝剣酒造)|ドライ0.632は全国18位

ドライ**0.632は全国18位=上位1.3%**で、広島県内1位。全国でドライ0.6を超えるのは1346銘柄中23本しかなく、その1本です。

削り方が徹底していて、芳醇0.389は全国1295位=下位3.8%。華やか0.225も下位15.5%、重厚0.225は下位16.3%で、いずれも該当13本の最低値です。残ったのは軽快0.460(上位34.6%)と穏やか0.369だけ。旨味も香りも厚みもまとめて落として、キレだけを立たせたという数値の形になります。

前章で見た「キレるほど軽くならない」の極端な例でもあります。ドライは全国18位なのに、軽快は全国466位止まり。スイスイ流れるタイプではなく、痩せて鋭いタイプという読み方になります。

5本のなかでも孤立していて、いちばん近い2本目の幻との類似度でも0.966。全国平均ベクトルとの距離も0.388で、該当13本では突出して遠い1本です(13本中2番目に遠い宝劔で0.249)。

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2. 幻(中尾醸造)|香るのに軽くない、全国2本の並び

ドライ0.501は全国72位=**上位5.3%で、該当13本では4位。ここに華やか0.397(上位29.6%)と軽快0.357(下位23.3%)**が同居します。

華やか0.397以上・軽快0.357以下という組み合わせは全国13本。そのうちドライが上位25%に入るのは幻と秋田のあざくらの2本だけです。香りは立つのに流れは速くない、という並びは数値上ほとんど存在しません。

軽快0.357は該当13本で最低値。芳醇0.473は下位16.9%、重厚0.253も下位25.0%と薄い側です。香りとキレを取って、軽さを捨てた——1本目の宝剣が香りも捨てたのに対し、こちらは香りだけ残した形になります。

宝剣との類似度0.966は、前半2本としてはむしろ近い値ですが、軽快0.460対0.357、華やか0.225対0.397という差がそのまま両者の分かれ目です。

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3. 瑞冠(山岡酒造)|県内で唯一の「辛口かつ厚い」1本

ドライ0.414は全国185位=上位13.7%。注目は**重厚0.386(全国317位・上位23.6%)**で、上位25%の境界0.381を超えています。

ドライと重厚の両方で全国上位25%に入る銘柄は1346銘柄中48本。広島のその1本がこれだけです。芳醇0.552も該当13本で最高値で、全国平均0.535を上回ります。

代わりに落ちているのが香りと軽さで、華やか0.237は下位18.4%、軽快0.398は下位38.8%。旨味と厚みを残したまま、甘さの印象だけを引いたという形です。

同じく旨味側の酔心(芳醇0.542・重厚0.356)とは類似度0.994とほぼ重なるため、今回はより重厚が高い瑞冠を採りました。

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4. 賀茂金秀(金光酒造)|軽快は全国上位6%、県内唯一のランキング入り辛口

ドライ0.371は上位23.8%と境界すれすれですが、軽快0.569が全国81位=上位6.0%。該当13本で1位です。華やか0.417も上位24.1%で、前述の「辛口・華やか・軽快の全国15本」の一角にあたります。

そのぶん重厚0.206は下位10.3%で13本中最低、芳醇0.445も下位9.3%、穏やか0.352も低め。厚みと旨味を外して、香りと速さに寄せた並びで、1本目の宝剣とは類似度0.940=今回の5本で最も離れた組み合わせになります。同じ「広島の辛口」でも、中身は正反対です。

さけのわランキング96位という知名度があるのもこの銘柄。ただし県内のもう1つのランキング銘柄雨後の月(36位)はドライ0.344で全国439位と該当外で、両者の類似度は0.992。人気銘柄の並びのなかでは、辛口側にわずかにはみ出した1本という位置づけになります。

なお富久長との類似度は0.9998とほぼ同一ベクトルのため、今回は賀茂金秀のみを選びました。

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5. 白鴻(盛川酒造)|13本でいちばん平均に近い辛口

ドライ0.370は上位24.3%と、5本のなかでは最も控えめ。そのぶん6軸が崩れていません。

華やか0.316・芳醇0.508・重厚0.312・穏やか0.430・軽快0.472は、いずれも全国平均(0.339/0.535/0.328/0.393/0.422)の近く。全国平均ベクトルとの距離を該当13本で計算すると、白鴻が0.095で最も近い(2位の天寶一が0.096、最も遠い宝剣は0.388)。13本のなかでの軸別順位も華やか6位・芳醇6位・重厚6位・穏やか3位・軽快4位と、きれいに真ん中です。

1〜4本目が香り・厚み・軽さのどれかを大きく削っているのに対し、これはどこも削らずにドライだけ境界を越えたタイプ。辛口の枠には入れたいが極端な味は避けたい、という条件に数値上いちばん近い選択肢になります。

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残る8本も見ておく

広島の該当13本を、ドライ値の高い順に全部並べます。太字が今回選んだ5本です。

銘柄 華やか 芳醇 重厚 穏やか ドライ 軽快
宝剣 0.225 0.389 0.225 0.369 0.632 0.460
宝劔 0.305 0.454 0.242 0.414 0.525 0.443
亀齢萬年 0.246 0.526 0.309 0.397 0.504 0.394
幻 0.397 0.473 0.253 0.419 0.501 0.357
亀齢 0.271 0.536 0.340 0.405 0.445 0.401
夜の帝王 0.237 0.500 0.344 0.489 0.424 0.395
瑞冠 0.237 0.552 0.386 0.400 0.414 0.398
天寶一 0.328 0.551 0.322 0.369 0.400 0.435
本州一 0.450 0.498 0.218 0.287 0.396 0.513
酔心 0.250 0.542 0.356 0.490 0.383 0.362
賀茂金秀 0.417 0.445 0.206 0.352 0.371 0.569
白鴻 0.316 0.508 0.312 0.430 0.370 0.472
富久長 0.425 0.452 0.213 0.353 0.368 0.557

表を縦に見ると、冒頭の傾向がそのまま出ています。ドライ上位4本の軽快は0.357〜0.460、下から3本(賀茂金秀・白鴻・富久長)は0.472〜0.569。表の上ほど重く、下ほど軽いという並びです。

もっと穏やかさを取りたいなら酔心(穏やか0.490・13本中1位)や夜の帝王(0.489・2位)、香りをいちばん強くしたいなら本州一(華やか0.450・13本中1位)。旨味重視なら天寶一(芳醇0.551)も瑞冠とほぼ並びます。

13本の全78ペアで最も離れた組み合わせは宝剣と本州一の0.936(表示スコア87点)。県内平均の類似度は0.973で、宮城(0.978)や長野(0.978)よりは散らばり、青森(0.919)や秋田(0.933)ほどは割れていません。

広島で辛口を選ぶときの物差し

広島は該当率35.1%も県内最高値0.632も全国10位で、県のドライ平均は7位。辛口が「数も強さも」そろっている県です。

ただし選ぶときに効くのは、県内でドライが強いほど軽快が下がるという逆向きの関係です。ドライ0.5を超える上位グループは軽快0.357〜0.460と流れが遅く、境界付近の賀茂金秀・富久長・本州一は軽快0.513〜0.569で香りも立つ。同じ「広島の辛口」でも、この2つは別物です。

強いキレが欲しいなら上から、軽さと香りが欲しいなら下から——広島の13本は、表の上下で選ぶのがいちばん分かりやすい形をしています。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。辛口そのものの考え方は辛口日本酒入門、他県の辛口については宮城・秋田・青森・新潟・山形・長野もあわせてどうぞ。