京都のフルーティーな日本酒5選 — 該当13本、その全部が「キレない」県

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前回の京都の日本酒おすすめ5選で、京都府46銘柄の県平均が全国平均とほとんど区別できないことを書きました。6軸すべてで差が0.023以内、唯一わずかに立っていた軸が**穏やか(40県中8位)**です。

その「わずかに立っていた軸」が、香りの側を切り出すとはっきり形になります。当サイトが利用しているさけのわデータの収録1346銘柄で、華やか値の上位25%の境界は0.414。これを超える京都の銘柄は46本中13本で、本数は全国6位タイです。

そしてこの13本には、他県のフルーティー帯にはあまりない共通点がありました。13本すべてが、ドライで全国平均を下回っています。

データで見る京都のフルーティー13本

13本の平均値を、全国のフルーティー該当339本、京都46銘柄全体、全国1346銘柄と並べます。

京都13本 全国フルーティー339本 京都46本 全国1346本
華やか 0.464 0.479 0.351 0.339
芳醇 0.525 0.523 0.543 0.535
重厚 0.251 0.236 0.317 0.328
穏やか 0.360 0.311 0.416 0.393
ドライ 0.240 0.253 0.287 0.310
軽快 0.481 0.498 0.417 0.422

比べるべきは左の2列です。全国のフルーティー帯より、華やかは低く(-0.015)、穏やかは高い(+0.049)。差が最も大きいのが穏やかで、ここが京都のフルーティーの性格になります。

フルーティー該当が5本以上ある26県で並べると、この帯の穏やか平均は京都が2位(1位は福島の0.361、京都0.360、3位は山形の0.354)。一方で華やか平均は26県中21位です。香りの強さでは下のほう、丸さでは上から2番目。この組み合わせが京都です。

突き抜けた1本がない

13本の華やか値は0.414から0.527まで、幅にして0.113しかありません。上限の0.527は全国1346銘柄中56位です。

26県の上限を並べると、京都より上限が低いのは岩手(0.482)・富山(0.504)・千葉(0.523)の3県だけで、下から4番目。該当13本という本数は6位タイなのに、いちばん香る1本は26県中23番目、ということになります。長野の上限は0.678、全国最高は神奈川の亮で0.765ですから、そこまでの高さは京都にありません。

つまり京都のフルーティーは、境界線のすぐ上に厚く積み上がっている形です。前回の記事で見た「中央に厚く、端に少数」という県全体の分布が、香りの側でもそのまま繰り返されています。

キレる1本は、13本のうち0本

もうひとつが冒頭のドライです。13本のドライ値は0.158〜0.304。最高値の香田(0.304)でも全国662位で、1346銘柄のちょうど真ん中。全国平均0.310を超える銘柄が、13本のなかに1本もありません。

該当5本以上の26県でこれが起きるのは京都・岡山・福岡・佐賀・長崎の5県だけで、そのうち本数が最も多いのが京都の13本です。

京都県内にキレる酒がないわけではありません。前回紹介した酒呑童子はドライ0.542(全国43位)で、京都46銘柄の1位です。ただしその華やかは0.310で、今回の13本には入りません。京都では、香りが立つ棚とキレが立つ棚が分かれている——これが数字から見える構造です。

以下の5本は、その13本を6軸ベクトルで比べ、互いのコサイン類似度が最も低くなる組み合わせを選びました(蔵は重複させていません)。5本の全10ペアは0.906〜0.986に収まり、最小ペアの0.906は13本78ペア全体の最小値でもあります。並び順は華やか値の高い順です。

1. 日日 武者修行(日々醸造)|京都で最も香る1本、ただし全国56位

華やか0.527は京都46銘柄の1位。全体では上位4%(全国56位)に入ります。

残りの数値は下方向にそろっていて、重厚0.190は下位6%、ドライ0.169は下位7%、芳醇0.481も下位20%。代わりに軽快0.563が上位7%です。香りと軽さだけを残して、厚み・旨味・キレを全部落とす形で、13本のなかでは最も「香り一点」に寄っています。

京都の上限がここだ、という位置づけの1本。逆に言えば、全国基準で「香りが突き抜けた酒」を探している人は、京都の棚では満たされにくいということでもあります。冷やして単体で。

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2. 与謝娘(与謝娘酒造)|香りに旨味と厚みが残り、キレは13本で最低

華やか0.493は上位8%(全国108位)で、京都46銘柄では3位の高さ。そこに芳醇0.582(上位28%)と重厚0.312が乗ります。

注目はドライ0.158で、13本中の最低値、京都46銘柄でも下から2番目、全体では下位6%です。重厚0.312は13本中の最高値で、ちょうど全体の中央(上位50%)。香りがしっかり立つのに、旨味も厚みもそのまま残り、キレだけが抜けているという数値になります。

1本目の日日 武者修行とは華やかで0.034しか違いませんが、芳醇で0.10、重厚で0.12、軽快で0.16の差があります。同じ「京都のフルーティー」でも中身はかなり違う、という例です。味の濃い料理にも押し負けません。

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3. 白木久(白杉酒造)|13本でただ一つ、丸さを削っている

華やか0.459は上位14%。芳醇0.580(上位29%)と重厚0.347(上位36%)は13本中で最も高い部類です。

この1本の特徴は穏やか0.254で、13本中の最低値(全体では下位7%)。冒頭で見たとおり京都のフルーティーは穏やか平均が26県中2位の帯なので、その平均像から最も外れた1本がこれになります。軽快0.449、ドライ0.257はどちらも中央付近です。

丸く収めず、輪郭を出す方向。後述の坤滴とは穏やかが0.254対0.594と正反対で、5本のなかで最もはっきりした対比になっています。

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4. 澤屋まつもと(松本酒造)|13本で唯一のランキング入り、そして最も外れ値

さけのわランキング61位。13本のなかで唯一、ランキング100に入っている銘柄です。

数値は軽快0.689が全体の上位1%(全国11位)で、京都46銘柄の2位。一方で芳醇0.369は下位3%、重厚0.172は下位4%、穏やか0.288も下位13%です。華やか0.433は13本中の下から2番目で、香りで選ばれているというより、軽さで選ばれている形の1本といえます。

13本の平均ベクトルとのコサイン類似度は0.958で、これが13本中の最下位。京都のフルーティーの平均像から最も遠いのが、唯一の人気銘柄という構図です。次の坤滴との0.906は13本78ペア中の最小値でもあります。

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5. 坤滴(東山酒造)|穏やか0.594、京都のフルーティーの性格を最も押した1本

穏やか0.594は全体の上位2%(全国30位)で、京都46銘柄中の2位(1位は前回紹介した古都千年の0.610)。13本のなかでは1位です。

華やか0.418は境界をわずかに超えた位置で、重厚0.175は下位5%、ドライ0.205は下位15%、芳醇0.475も下位18%。軽快0.417はほぼ全体平均です。香りは控えめに立つが、角になるものが何もない——今回見てきた「京都のフルーティー=穏やか2位・キレゼロ」という性格を、13本で最も強く押した1本になります。

澤屋まつもととの類似度0.906が最小ペア、白木久との対比が最も分かりやすい、という意味で、この記事の結論そのものの位置にいます。単体か、薄味の料理で。

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残る8本も見ておく

13本のうち、上の5本以外は次の8本です。華やか値の高い順に並べます。

銘柄 華やか 芳醇 重厚 穏やか ドライ 軽快
京姫(京姫酒造) 0.495 0.574 0.275 0.336 0.256 0.415
白嶺(ハクレイ酒造) 0.492 0.562 0.275 0.281 0.282 0.457
日日(日々醸造) 0.474 0.373 0.164 0.383 0.192 0.652
十石(松山酒造) 0.462 0.483 0.206 0.464 0.290 0.459
神蔵(松井酒造) 0.457 0.547 0.290 0.316 0.213 0.513
香田(ハクレイ酒造) 0.454 0.589 0.284 0.359 0.304 0.381
桃の滴(松本酒造) 0.453 0.588 0.248 0.345 0.247 0.456
月桂冠(月桂冠) 0.414 0.618 0.319 0.357 0.244 0.396

いくつか補足します。京姫の0.495は日日 武者修行に次ぐ京都2位の華やか値です。香田のドライ0.304が13本の最高値で、それでも全国662位という話は前述のとおり。月桂冠の0.414は境界ちょうどで13本の下限にあたりますが、芳醇0.618は13本の最高値(上位12%)で、香りより旨味が主役の数値をしています。

日日は軽快0.652・重厚0.164で、澤屋まつもととの類似度0.988。京都で「軽さ側のフルーティー」を選ぶなら、この2本はほぼ同じ形です。十石は穏やか0.464が13本中2位で、坤滴の穏やかさをもう少し中庸にした位置にあります。

京都でフルーティーを選ぶときの物差し

京都は華やか該当13本で全国6位タイ、本数だけ見れば選択肢の多い県です。ただし中身は他県と違います。

  • 上限が低い:13本の華やかは0.414〜0.527に収まり、上限は該当26県中23位(下から4番目)
  • キレない:13本すべてがドライ全国平均未満。該当5本以上の26県で、こうなる県は5つだけ
  • 丸い:穏やか平均0.360は26県中2位

だから「香りが強い日本酒」を京都で探すのは、データ上あまり向いていません。全国で香りの強さを追うなら長野秋田山形福島新潟の棚のほうが上限が高く、幅もあります。

代わりに京都が向いているのは、「香りは欲しいが、キリッとさせたくない」という選び方です。香りが立ったうえで角が立たない帯が、他県より厚い。13本のなかで決めるべきは2つで、ひとつは穏やか(0.254〜0.594)——白木久のように輪郭を出すか、坤滴のように丸めるか。もうひとつは軽快(0.381〜0.689)——香田のように口に留めるか、澤屋まつもとのように流すかです。

丸さの方向をもっと見たい場合はまろやかで穏やかな日本酒、フルーティー全般の選び方はフルーティーな日本酒の選び方にまとめています。京都の他の顔(キレ・厚み・平均)は京都の日本酒おすすめ5選のほうが詳しいです。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。