静岡の辛口日本酒5選 — 辛口率は全国3位、なのに「穏やか」も全国1位の県

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当サイトが利用しているさけのわデータには、飲んだ人の投稿から算出された6軸フレーバーベクトル(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)が収録されています。この「ドライ」の値で全国1346銘柄を並べたとき、上位25%の境界は0.367です。

静岡県の収録25銘柄のうち、これを超えるのは13銘柄。該当率52.0%は収録10銘柄以上の40都道府県で全国3位です。

ところが県内で最も高いドライ値は0.581で、この値だけで40都道府県を並べ直すと14位まで落ちます。数は全国3位、強さは14位。静岡の辛口は、本数のわりに突き抜けた1本がない県です。

該当率3位・県内最高値14位という形

該当率の上位12県を、県内最高のドライ値と並べてみます。カッコ内は、県内最高値だけで40都道府県を並べ直したときの順位です。

順位 都道府県 収録数 該当本数 該当率 県内最高ドライ
1 青森県 33 20 60.6% 0.876(1位)
2 高知県 20 11 55.0% 0.788(4位)
3 静岡県 25 13 52.0% 0.581(14位)
4 北海道 22 10 45.5% 0.554(17位)
5 和歌山県 10 4 40.0% 0.594(13位)
6 山形県 63 25 39.7% 0.761(5位)
7 新潟県 112 42 37.5% 0.656(9位)
8 福井県 24 9 37.5% 0.573(15位)
9 愛媛県 17 6 35.3% 0.459(31位)
10 広島県 37 13 35.1% 0.632(10位)
11 宮城県 38 13 34.2% 0.542(18位)
12 福岡県 38 11 28.9% 0.628(11位)

該当率の順位と最高値の順位の差を取ると、静岡は**−11**。広島は両方10位で差ゼロ、秋田は該当率13位に対し最高値3位で「数は少ないが突き抜けた1本がある」形でした。静岡はその逆です。

それでも県のドライ平均0.368は40都道府県中3位。突出した1本はないのに、県ぜんたいが底上げされている——これが静岡の並びです。

「穏やか」が全国1位という例外

静岡が本当に珍しいのは、ドライではなくもう1軸のほうです。収録25銘柄の軸平均を、40都道府県のなかで順位づけしてみます。

軸 静岡25銘柄の平均 40都道府県中の順位 全国平均
華やか 0.294 34位 0.339
芳醇 0.516 34位 0.535
重厚 0.321 20位 0.328
穏やか 0.456 1位 0.393
ドライ 0.368 3位 0.310
軽快 0.406 28位 0.422

穏やか平均0.456は全国1位(2位は愛媛の0.440、3位は北海道の0.437)。穏やかが全国上位25%(0.450以上)に入る銘柄の割合も25本中12本=48.0%で全国1位です。

辛口率3位と穏やか1位が同じ県で起きています。ふつう、この2つは両立しません。

辛口にするほど穏やかが落ちる——静岡ではそれが起きない

該当銘柄が10本以上ある13県について、県内でドライ値と穏やか値の相関係数を取ってみます。

都道府県 該当本数 ドライ×穏やか
静岡県 13 +0.039
広島県 13 +0.010
長野県 22 +0.003
北海道 10 −0.319
高知県 11 −0.418
新潟県 42 −0.466
岐阜県 10 −0.472
宮城県 13 −0.481
福岡県 11 −0.499
福島県 12 −0.570
秋田県 13 −0.652
山形県 25 −0.684
青森県 20 −0.808

大半の県は大きく負に振れます。青森の−0.808や山形の−0.684は、キレを強くするほど穏やかさが削れていくという、辛口の常識どおりの並びです。

静岡の+0.039は13県で最も正の値。相関がほぼゼロということは、ドライ値が上がっても穏やかさが連動して落ちないということです。

実際、ドライ0.5以上(全国74本)かつ穏やかが上位25%に入る銘柄は、全国で2本しかありません。新潟の越乃寒梅と、静岡の駿州中屋です。

代わりに削れるのは香りのほうで、静岡13本のドライ×華やかは**−0.604**。福島の−0.638に次いで13県で2番目に負に振れています(全国1346銘柄では−0.251)。ドライ×軽快も−0.294で、広島の−0.313に次ぐ2位。

つまり静岡の辛口は、キレを強くすると香りと軽さが落ち、穏やかさだけが残る。数値上そういう方向を向いています。

13本の中身

該当13本の軸平均を全国平均と並べます。

軸 静岡の該当13本 全国平均
華やか 0.286 0.339
芳醇 0.498 0.535
重厚 0.313 0.328
穏やか 0.440 0.393
ドライ 0.426 0.310
軽快 0.423 0.422

穏やか0.440は、該当銘柄が5本以上ある26県のなかで3位(北海道0.453、富山0.441に次ぐ)。ドライと穏やかの両方が全国上位25%に入る銘柄は全国75本(5.6%)ですが、静岡はそのうち5本を占め、**13本中5本=38.5%**が該当します。

一方で気をつけたいのが、13本の互いの近さです。全78ペアのコサイン類似度の平均は0.9797で、該当10本以上の13県では北海道(0.9818)に次ぐ2番目。青森(0.9185)や秋田(0.9328)、広島(0.9730)と比べると、静岡の辛口は選択肢の幅が狭いということになります。

ちなみに、さけのわランキング100位以内に入る静岡の銘柄は1つだけです。

銘柄 ランキング ドライ 全国順位 穏やか 該当
磯自慢 40位 0.352 406位 0.471 —

県を代表する人気銘柄はドライ全国406位で該当外。ただし穏やか0.471は上位25%に入ります。静岡の顔は辛口ではなく穏やか側にある、という並びです。

以上を踏まえ、該当13銘柄から6軸それぞれの県内トップを1本ずつ拾う形で5本を選びました。蔵は重複させていません(重厚・芳醇のトップは駿州中屋と同じ蔵の高砂のため、両軸2位の國香を採っています)。5本の全10ペアの平均類似度は0.9642で、13本から総当たりで選んだ最小値0.9626とほぼ同じです。並び順はドライ値の高い順です。

1. 駿州中屋(富士高砂酒造)|「ドライ0.5超なのに穏やか」は全国2本だけ

ドライ**0.581は全国29位=上位2.2%**で、静岡県内1位。ドライ0.581以上は1346銘柄中29本しかなく、その1本です。

注目は同居している穏やか0.466(全国274位・上位20.4%)。前述のとおり、ドライ0.5以上かつ穏やか上位25%は全国2本だけで、もう1本は新潟の越乃寒梅です。強いキレと穏やかさを両立している数少ない並びになります。

削られているのは香りと旨味で、華やか0.165は全国1254位=下位6.8%、芳醇0.437も下位8.1%。どちらも13本の最低値です。重厚0.252も下位24.4%、軽快0.405は下位41.5%。

香りも旨味も厚みも引いて、キレと穏やかさだけを残したという形の数値です。13本のなかでも孤立していて、全国平均ベクトルとの距離0.353は13本で最も遠く、2番目の天虹(0.297)とも差があります。

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2. 臥龍梅(三和酒造)|13本で唯一の「辛口かつ軽快」

ドライ0.431は全国151位=上位11.2%。そこに**軽快0.511(全国238位・上位17.7%)**が乗ります。

ドライと軽快の両方で全国上位25%に入る銘柄は1346銘柄中89本。静岡はそのうち1本だけで、それがこれです(新潟10本、長野8本、宮城7本)。県内の傾向が「キレるほど軽くならない」方向に振れているぶん、13本のなかでは例外的な位置にいます。

穏やか0.354は13本で2番目に低く、芳醇0.459も下位12.7%、重厚0.261は下位28.5%。厚みと穏やかさを外して、キレと速さに寄せた並びです。華やか0.386も上位33.7%と13本では2位。

1本目の駿州中屋との類似度は0.9522(当サイトの表示スコアで90点)。同じ県の辛口でも、軽快0.405対0.511、穏やか0.466対0.354と正反対です。

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3. 若竹(大村屋酒造場)|穏やか0.522は全国上位7.7%

ドライ0.397は上位17.2%と中ほどですが、**穏やか0.522が全国103位=上位7.7%**で13本の最高値。

ドライが上位25%に入り、かつ穏やかが全国上位10%(0.507以上)に入る銘柄は全国29本。静岡はそのうち2本(若竹と正雪)を占めます。この記事の主題である「辛口なのに穏やか」を、県内でいちばん強く体現している1本です。

華やか0.229は下位16.4%、軽快0.385も下位34.2%と低め。芳醇0.521・重厚0.314は全国平均のすぐ下で、香りと速さを落として、旨味と厚みは平均どおりに残した形になります。

なお同じ13本の白隠正宗(穏やか0.492)とは類似度0.9986とほぼ同一ベクトルのため、穏やかが高い若竹を採りました。

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4. 花の舞(花の舞酒造)|県内唯一の「辛口かつ華やか」

ドライ0.380は上位21.2%と境界寄りですが、**華やか0.449が全国214位=上位15.9%**で13本の1位。上位25%の境界0.414を超えています。

ドライと華やかの両方で全国上位25%に入る銘柄は1346銘柄中25本で、静岡はこれ1本のみ(広島・長野・青森が各3本で最多)。前章で見たとおり静岡はドライ×華やかが−0.604と強く負なので、県内の傾向にいちばん逆らっている1本です。

穏やか0.336は13本の最低値で、下位25.5%。軽快0.464、重厚0.282、芳醇0.497と、香り以外は平均かそれ以下です。穏やかさを捨てて香りを取ったという並びで、1本目の駿州中屋との類似度0.9271=13本の全78ペアで最も離れた組み合わせ(表示スコア85点)になります。

一方、2本目の臥龍梅とは類似度0.9945。県内の「軽快トップ」と「華やかトップ」がほぼ重なるのも、静岡13本の幅の狭さを示しています。

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5. 國香(國香酒造)|厚みを残したまま辛口側に入った1本

ドライ0.378は上位21.5%で5本のなかでは最も控えめ。そのぶん重厚0.410が全国253位=上位18.8%、芳醇0.533も13本で2位です。

ドライと重厚の両方で全国上位25%に入る銘柄は1346銘柄中48本。静岡の該当は國香と高砂の2本で、高砂は1本目の駿州中屋と同じ蔵のため今回は國香を選びました(両者の類似度は0.9979とほぼ同一です)。

華やか0.269は下位27.3%、軽快0.377も下位30.8%。香りと速さを落として、旨味と厚みを残したタイプで、4本目の花の舞(重厚0.282・華やか0.449)とはちょうど裏返しの関係になります。両者の類似度は0.9661です。

辛口の枠に入れつつ飲みごたえも欲しい、という条件に13本でいちばん近い選択肢です。

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残る8本も見ておく

静岡の該当13本を、ドライ値の高い順に全部並べます。太字が今回選んだ5本です。

銘柄 華やか 芳醇 重厚 穏やか ドライ 軽快
駿州中屋 0.165 0.437 0.252 0.466 0.581 0.405
天虹 0.185 0.502 0.321 0.424 0.551 0.356
白隠政宗 0.296 0.480 0.294 0.458 0.439 0.440
臥龍梅 0.386 0.459 0.261 0.354 0.431 0.511
白隠正宗 0.214 0.511 0.343 0.492 0.411 0.406
おんな泣かせ 0.317 0.486 0.300 0.447 0.407 0.455
高砂 0.217 0.553 0.416 0.423 0.405 0.362
若竹 0.229 0.521 0.314 0.522 0.397 0.385
富士錦 0.302 0.491 0.356 0.433 0.396 0.443
志太泉 0.359 0.500 0.269 0.414 0.388 0.476
花の舞 0.449 0.497 0.282 0.336 0.380 0.464
國香 0.269 0.533 0.410 0.437 0.378 0.377
正雪 0.334 0.498 0.249 0.508 0.376 0.423

穏やか列を縦に見ると、0.336から0.522までのあいだに13本が収まり、0.450以上が5本あります。ドライ列の上から下まで、穏やかが一方向に動いていないのが分かります。

もう1本の穏やか型が欲しいなら正雪(穏やか0.508・13本中2位)、旨味と厚みなら高砂(芳醇0.553・重厚0.416でどちらも13本1位)。全国平均ベクトルにいちばん近いのは富士錦(距離0.116)で、極端さを避けたいときの基準になります。キレをもう一段強くしたいなら天虹(ドライ0.551・全国40位)ですが、軽快0.356は13本の最低値です。

なお白隠政宗と白隠正宗は、さけのわに表記違いで別々に収録されている2件です。

静岡で辛口を選ぶときの物差し

静岡は該当率52.0%で全国3位、県のドライ平均も3位。それでいて県内最高値は14位で、強さより本数で辛口の県です。

そして穏やか平均は全国1位。他県では辛口が強いほど穏やかさが落ちるのに、静岡ではドライ×穏やかの相関が+0.039とほぼ無関係で、ドライ0.5超でも穏やかが上位25%に残る銘柄が実在します。キレても角が立たないのが、数値から読める静岡の特徴です。

そのぶん13本の平均類似度は0.9797と高く、選択肢の幅は広くありません。迷ったら、13本のなかで振れている軸——穏やか(0.336〜0.522)と華やか(0.165〜0.449)——のどちら側に寄せたいかで決めるのが、いちばん結果の変わる選び方になります。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。辛口そのものの考え方は辛口日本酒入門、穏やかな味わいについてはまろやかで穏やかな日本酒もどうぞ。他県の辛口は広島・宮城・秋田・青森・新潟・山形・長野にまとめています。