福島の辛口日本酒5選 — 辛口率は全国28位、なのに「ドライ0.6超」は全国最多4本

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当サイトが利用しているさけのわデータには、飲んだ人の投稿から算出された6軸フレーバーベクトル(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)が収録されています。この「ドライ」の値で全国1346銘柄を並べたとき、上位25%の境界は0.367です。

福島県の収録77銘柄のうち、これを超えるのは12銘柄。該当率15.6%は収録10銘柄以上の40都道府県で28位です。数だけ見れば、福島は辛口の県ではありません。

ところが県内で最も高いドライ値は0.695で、この値だけで40都道府県を並べ直すと7位まで上がります。本数は28位、強さは7位。静岡が「強さより本数」の県だったのに対し、福島はその正反対です。

該当率28位・県内最高値7位という形

該当率の順位と県内最高ドライ値の順位を引き算して、差が大きい順に並べます。差が正なら「本数は少ないが突き抜けた1本がある」県です。

都道府県 収録数 該当本数 該当率(順位) 県内最高ドライ(順位) 差
兵庫県 56 6 10.7%(35位) 0.682(8位) +27
岩手県 29 6 20.7%(23位) 0.846(2位) +21
福島県 77 12 15.6%(28位) 0.695(7位) +21
愛知県 31 2 6.5%(38位) 0.525(22位) +16
埼玉県 23 3 13.0%(31位) 0.540(20位) +11
秋田県 45 13 28.9%(13位) 0.827(3位) +10
京都府 46 7 15.2%(29位) 0.542(19位) +10
岡山県 24 3 12.5%(33位) 0.512(23位) +10

参考に、これまで書いた県を同じ形で並べると青森が±0(該当率1位・最高値1位)、山形も±0、広島が−1、新潟が−2、静岡が−11です。福島の+21は、収録77銘柄という多さのなかでは特に目立ちます。

ドライ0.6超は全国23本、そのうち4本が福島

「突き抜けた1本」は1本では終わりません。ドライ値が0.6以上の銘柄は全国1346本中23本しかなく、その県別内訳がこうなります。

都道府県 ドライ0.6以上の本数
福島県 4
山形県 3
新潟県 3
青森県 3
秋田県 2
高知県 2
岐阜県・広島県・福岡県・兵庫県・石川県・岩手県 各1

福島が全国最多です。境界を全国ドライ上位25本(0.594以上)まで広げても福島は5本で最多、上位50本(0.525以上)でも新潟7本・高知6本に次ぐ3位に入ります。

該当率28位の県が、最上位の密度では全国1位。福島の辛口は12本しかないが、その上半分が極端に強いという形をしています。

実際、該当12本のドライ平均は0.511。該当銘柄が5本以上ある26県のなかで、高知(0.524)に次ぐ2位です。本数が少ないぶん、平均が下に引っ張られていません。

12本の中身は「痩せ型の辛口」

その代償がはっきり出ているのが、旨味と厚みの2軸です。該当12本の軸平均を、26県のなかで順位づけしてみます。

軸 福島の該当12本 26県中の順位 全国平均
華やか 0.290 10位 0.339
芳醇 0.427 26位 0.535
重厚 0.249 26位 0.328
穏やか 0.385 16位 0.393
ドライ 0.511 2位 0.310
軽快 0.468 3位 0.422

芳醇0.427と重厚0.249は、どちらも26県で最下位。全国平均からそれぞれ0.108・0.079下にあります。ドライ2位・軽快3位と合わせると、キレと軽さだけが上に振れて、旨味と厚みは全国のどの県よりも削られているという並びです。

数え方を変えても同じ方向が出ます。ドライが上位25%に入り、かつ芳醇が下位25%(0.497未満)に沈む銘柄は、福島の12本中8本。芳醇と重厚の両方が下位25%(重厚0.253未満)に入るものは6本で、12本の半分です。

軸の組み合わせで数えると、福島の12本に「ない形」も見えます。

組み合わせ(両方とも全国上位25%) 全国 福島
ドライ+芳醇 10本 0本
ドライ+華やか 24本 0本
ドライ+重厚 46本 2本
ドライ+穏やか 71本 1本
ドライ+軽快 87本 4本

辛口かつ旨味、辛口かつ華やかが1本もありません。福島の辛口で選べるのは、実質「辛口かつ軽快」が4本、「辛口かつ重厚」が2本、「辛口かつ穏やか」が1本という構成です。

12本の内側でドライ値と芳醇値の相関係数を取ると**−0.828**(全国1346銘柄では−0.505)。該当10本以上の13県では青森(−0.937)、岐阜(−0.904)、高知(−0.890)、秋田(−0.833)に次ぐ5番目の強さで、キレを強くするほど旨味が抜ける方向に並んでいます。ドライ×穏やかも−0.570、ドライ×華やかは−0.638です。

福島の人気銘柄は12本に1つも入らない

さけのわランキング100位以内に入る福島の銘柄を、ドライ値と並べます。

銘柄 ランキング ドライ 全国順位 穏やか 全国順位 該当
冩楽 10位 0.217 1103位 0.390 709位 —
飛露喜 19位 0.322 565位 0.480 217位 —
楽器正宗 27位 0.233 1041位 0.260 1234位 —
ロ万 53位 0.196 1177位 0.468 259位 —
廣戸川 54位 0.200 1159位 0.517 113位 —
天明 76位 0.237 1027位 0.347 943位 —

6銘柄すべてが該当外で、ドライ全国順位は最上位の飛露喜でも565位です。該当12本のほうは、逆に1本もランキング100位以内に入っていません。

県平均を見ると理由が分かります。福島77銘柄の穏やか平均0.426は40都道府県中4位で、77本のうち27本が穏やか上位25%(0.450以上)に入ります。華やか平均0.353も14位で、華やか上位25%は17本(福島のフルーティーな日本酒で書いたとおり全国4位の本数)。一方ドライ平均0.296は21位です。

福島の顔は穏やかと華やかの側にあり、辛口はその外側にある少数派——福島の日本酒おすすめ5選で選んだ5本と今回の5本が1本も重ならないのは、そういう構造によるものです。

12本は「似すぎている」側ではない

少数派とはいえ、12本の中身には幅があります。該当10本以上の13県について、群の内側の全ペアでコサイン類似度を取りました。値が小さいほど県内の辛口の形がばらけています。

都道府県 該当本数 群内の平均類似度
青森県 20 0.9185
秋田県 13 0.9328
高知県 11 0.9492
山形県 25 0.9517
福島県 12 0.9530
岐阜県 10 0.9591
福岡県 11 0.9638
新潟県 41 0.9718
広島県 13 0.9730
宮城県 13 0.9778
長野県 22 0.9781
静岡県 13 0.9797
北海道 10 0.9818

福島の0.9530は13県で5番目に小さい値で、静岡(0.9797)や北海道(0.9818)とは性質が違います。12本の軸レンジも、華やか0.135〜0.398、芳醇0.289〜0.576、穏やか0.228〜0.544と広く取れています。

以上を踏まえ、該当12銘柄から6軸それぞれの県内トップを拾う形で5本を選びました(芳醇と重厚は同じ1本が両方のトップなので5本に収まります)。軽快だけは県内1位の陣屋ではなく2位の雪小町を採っています。陣屋は華やかトップの龍が沢と類似度0.9886でほぼ同じ形になってしまい、5本の平均類似度が0.9457まで上がるためです。雪小町に替えると0.9368まで下がり、12本から総当たりで選べる最小値0.9280に近づきます。並び順はドライ値の高い順です。

1. 永寳屋(鶴乃江酒造)|ドライ0.695は全国10位=上位0.7%

ドライ**0.695は全国10位=上位0.7%**で、福島県内1位。前述のドライ0.6以上の23本にも、全国上位25本にも入る1本です。

そのぶん他の5軸がほぼ全方向に削られています。芳醇0.364は全国1311位=下位2.6%、穏やか0.228は1291位=下位4.1%、重厚0.185も下位5.4%。いずれも該当12本の最低値か、それに近い値です。華やか0.259は下位24.1%、軽快0.481は上位26.2%で、この2軸だけが中ほどに残っています。

つまり旨味・厚み・穏やかさを全部引いて、キレだけを残した形の数値です。全国平均ベクトルとの距離0.484は12本で2番目に遠く(1番は蔵太鼓の0.489)、今回の5本のうち3本とは類似度0.92前後まで離れます(笹正宗とは0.8835=当サイトの表示スコアで77点、ゆりとは0.9119=82点、龍が沢とは0.9164=83点)。

辛口という言葉から最も遠回りのない1本を、という条件に福島でいちばん近いのがこれです。

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2. 雪小町|重厚0.141は全国下位1.6%、それで軽快は上位14%

ドライ**0.610は全国21位=上位1.6%で県内4位。ここに軽快0.529(全国188位・上位14.0%)**が乗ります。

12本で唯一「ドライ0.6超かつ軽快が全国上位25%」に入る組み合わせです(ドライ+軽快の両方が上位25%の4本のうち、ドライが0.6を超えるのはこれだけ)。

削れ方が極端なのは厚みのほうで、重厚0.141は全国1324位=下位1.6%、芳醇0.289も1333位=下位1.0%。どちらも該当12本の最低値です。全国1346銘柄のなかでも、この値以下は芳醇が14本、重厚が23本しかありません。穏やか0.371は下位39.9%、華やか0.327は下位45.1%で中ほど。

厚みと旨味をほぼゼロまで引いて、キレと軽さに全部振ったという並びになります。1本目の永寳屋とは類似度0.9789(96点)で方向は近いものの、軽快0.481対0.529、重厚0.185対0.141と、より軽い側に寄っています。4本目の笹正宗との類似度0.8831は、12本の全66ペアで最も離れた組み合わせです。

なお、さけのわには蔵名が入っていない1件です(12本のうち2件がこの状態で、もう1つは蔵太鼓)。

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3. ゆり(鶴乃江酒造)|県内で唯一の「辛口かつ穏やか」

ドライ0.429は全国154位=上位11.4%。そこに**穏やか0.544(全国69位・上位5.1%)**が同居します。

ドライが上位25%に入り、かつ穏やかが全国上位10%(0.507以上)に入る銘柄は1346本中29本。福島の該当はこれ1本だけです。ドライ+穏やかの両方が上位25%という緩い条件でも福島は1本のみ(全国71本、新潟13本・山形6本・静岡5本が上位)。前章で見たとおり福島の12本はドライ×穏やかが−0.570と負に振れているので、県内の傾向にいちばん逆らっている1本になります。

一方、芳醇0.378は下位3.2%、重厚0.204も下位9.6%で、旨味と厚みの薄さは12本の傾向どおり。華やか0.329は下位46.0%、軽快0.476は上位28.4%とどちらも中ほどです。厚みは持たないまま、キレの角だけを丸めたという形の数値になります。

1本目の永寳屋と同じ蔵の銘柄ですが、穏やか0.228対0.544で12本の最下位と最上位にあたり、類似度も0.9119(82点)と離れています。今回は蔵の重複より、この2本が県内の両端を占めていることを取りました。

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4. 笹正宗(笹正宗酒造)|12本で唯一、旨味と厚みが削れていない

ドライ0.381は上位21.1%で境界寄り。そのかわり芳醇0.576が全国406位=上位30.2%、**重厚0.399が282位=上位21.0%**で、どちらも該当12本の1位です。

ドライと重厚の両方が全国上位25%に入る銘柄は全国46本。福島の該当は笹正宗と辰泉の2本だけで、ここまで見てきた「痩せ型の辛口」から唯一外れる並びです。12本の芳醇平均0.427に対して0.576、重厚平均0.249に対して0.399ですから、同じ県の辛口のなかで単独で別の場所に立っています。

そのぶん軽快0.372は下位28.7%で12本の最低値、華やか0.246も下位21.0%。穏やか0.406は中ほどです。香りと速さを落として、旨味と厚みを残したタイプで、2本目の雪小町(芳醇0.289・重厚0.141)とはちょうど裏返し、類似度0.8831=12本で最も遠いペアになります。

辛口の枠に入れつつ飲みごたえも欲しい、という条件に福島でいちばん近い選択肢です。なお辰泉との類似度は0.9984とほぼ同一ベクトルで、芳醇・重厚の両方が上の笹正宗を採りました。

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5. 龍が沢(榮川酒造)|12本の華やかトップ、それでも全国では上位29%

ドライ0.383は上位20.1%。**華やか0.398は全国392位=上位29.1%**で該当12本の1位ですが、上位25%の境界0.414には届いていません。

前章のとおり、ドライと華やかの両方が全国上位25%に入る銘柄は全国24本あるのに福島は0本です。つまりこれは「福島の辛口でいちばん香りが立っている1本」であって、全国基準の香り系ではありません。県内の華やか上位25%17本のほうは、ドライ値が低い銘柄で占められています。

6軸を見ると、芳醇0.489(下位21.6%)・重厚0.253(下位25.0%)・穏やか0.402(中ほど)・軽快0.479(上位27.0%)と、ドライと華やか以外はすべて全国平均の近くか少し下。全国平均ベクトルとの距離0.141は12本で最も近く、12本のなかでは最も極端さのない1本です。

1本目の永寳屋との類似度は0.9164(83点)。同じ県の辛口でも、華やか0.259対0.398、穏やか0.228対0.402と方向が違います。

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残る7本も見ておく

福島の該当12本を、ドライ値の高い順に全部並べます。太字が今回選んだ5本です。

銘柄 華やか 芳醇 重厚 穏やか ドライ 軽快
永寳屋 0.259 0.364 0.185 0.228 0.695 0.481
蔵太鼓 0.135 0.306 0.294 0.376 0.689 0.431
金澤屋 0.214 0.365 0.210 0.371 0.674 0.430
雪小町 0.327 0.289 0.141 0.371 0.610 0.529
自然郷さわやか 0.230 0.400 0.185 0.372 0.596 0.509
陣屋 0.390 0.417 0.248 0.319 0.465 0.542
弥右衛門 0.310 0.501 0.297 0.374 0.440 0.481
ゆり 0.329 0.378 0.204 0.544 0.429 0.476
辰泉 0.261 0.533 0.393 0.432 0.396 0.387
龍が沢 0.398 0.489 0.253 0.402 0.383 0.479
笹正宗 0.246 0.576 0.399 0.406 0.381 0.372
回 0.380 0.501 0.181 0.426 0.375 0.500

ドライ列を上から下まで見ると、0.695から0.375まで0.32の幅があります。そして芳醇列は上5本が0.400以下、下4本が0.489以上。上半分と下半分で中身が入れ替わるのが福島の12本です。

もう1段キレを強くしたいなら蔵太鼓(ドライ0.689・全国11位)か金澤屋(0.674・13位)ですが、蔵太鼓の華やか0.135は下位3.9%、芳醇0.306は下位1.2%で12本のなかでも極端です。軽さを最優先するなら陣屋(軽快0.542・12本1位)、キレと軽さの中間なら自然郷さわやか(ドライ0.596・軽快0.509)。旨味と厚みなら辰泉(芳醇0.533・重厚0.393でどちらも12本2位)、全体のバランスなら弥右衛門や回が全国平均に近い位置にいます。

福島で辛口を選ぶときの物差し

福島は該当率15.6%で40都道府県中28位、県のドライ平均も21位。県全体としては辛口の県ではありません。それでもドライ0.6以上の全国23本のうち4本、全国上位25本のうち5本を占めていて、上のほうの密度だけは全国1位です。

そして該当12本の芳醇平均0.427・重厚平均0.249は、どちらも26県で最下位。福島の辛口は、キレが強くなるぶん旨味と厚みが薄い——数値から読めるのはその形です。辛口かつ旨味、辛口かつ華やかは県内に1本もありません。

だから福島で辛口を選ぶときは、「どれくらいキレるか」よりも削られたぶんを何で埋めるかで決めるのが現実的です。軽さで埋めるなら雪小町や陣屋、穏やかさで埋めるならゆり、そもそも削らせたくないなら笹正宗か辰泉。ドライ値を上げるほど選択肢はこの順に減っていきます。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。辛口そのものの考え方は辛口日本酒入門、軽さについては軽快で飲み疲れしない日本酒、穏やかな味わいはまろやかで穏やかな日本酒もどうぞ。福島の酒全体は福島の日本酒おすすめ5選と福島のフルーティーな日本酒5選に、他県の辛口は静岡・広島・宮城・秋田・青森・新潟・山形・長野にまとめています。