福岡の辛口日本酒5選 — 辛口にしても旨味が減らない、26県で唯一の県

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当サイトが利用しているさけのわデータには、飲んだ人の投稿から算出された6軸フレーバーベクトル(華やか・芳醇・重厚・穏やか・ドライ・軽快)が収録されています。この「ドライ」の値で全国1346銘柄を並べたとき、上位25%の境界は0.367です。

福岡県の収録38銘柄のうち、これを超えるのは11銘柄。該当率28.9%は収録10銘柄以上の40都道府県で12位で、本数としては中の上です。

ただ、福岡の辛口が面白いのは本数ではありません。福島の辛口を書いたときに見えたのは「キレを強くするほど旨味と厚みが抜ける」という構造でしたが、福岡ではそれが起きていない。該当5本以上の26県で、辛口群の旨味がいちばん減らない県です。

辛口群と県全体を引き算する

各県について「ドライ上位25%に入る銘柄の軸平均」から「県全体38銘柄の軸平均」を引きます。マイナスが大きいほど、辛口を選ぶと失われる量が多いということです。

都道府県 該当本数 芳醇の差 重厚の差 軽快の差
福岡県 11 −0.015(26県中1位) +0.022(2位) −0.033(26位)
北海道 10 −0.018(2位) +0.020(3位) −0.020(23位)
静岡県 13 −0.018(3位) −0.009(7位) +0.018(12位)
高知県 11 −0.032(8位) +0.034(1位) −0.031(24位)
山形県 25 −0.052(15位) −0.004(6位) +0.012(13位)
秋田県 13 −0.070(22位) −0.028(15位) +0.005(17位)
福島県 12 −0.100(25位) −0.048(22位) +0.035(6位)
兵庫県 6 −0.111(26位) −0.017(12位) +0.072(1位)

芳醇の差が**−0.015で26県中1位**、重厚は**+0.022で2位**。そして軽快は**−0.033で26県中最下位**です。

福島や兵庫が「旨味と厚みを落として軽さを足す」方向なのに対し、福岡は旨味を保ったまま厚みを足して、軽さを引くという逆の並びになっています。「重厚の差がプラスかつ軽快の差がマイナス」になるのは26県中4県(高知・福岡・北海道・宮城)だけで、そのなかで芳醇の減りが最小なのが福岡です。

該当11本の軸平均

11本の軸平均を、該当5本以上の26県のなかで順位づけします。

軸 福岡の該当11本 26県中の順位 全国平均 全国の辛口335本の平均
華やか 0.272 21位 0.339 0.296
芳醇 0.509 4位 0.535 0.479
重厚 0.340 4位 0.328 0.296
穏やか 0.397 13位 0.393 0.394
ドライ 0.443 14位 0.310 0.453
軽快 0.407 24位 0.422 0.442

全国の辛口335本は重厚平均0.296で、全国平均0.328より下にあります。福岡の11本は0.340で、全国平均そのものより上。辛口群でこれができている県は26県中6つ(奈良・兵庫・茨城・福岡・北海道・島根)だけで、そのうち該当本数が10本以上なのは福岡と北海道の2県です。

ドライ平均0.443は14位で、全国の辛口平均0.453よりわずかに下。つまりキレの強さは平凡なのに、旨味と厚みだけが残っているという形です。

本数で数えても同じ方向が出ます。

条件 全国の辛口335本 福岡の該当11本
芳醇が全国平均0.535以上 62本(18.5%) 4本(36.4%)
重厚が全国平均0.328以上 97本(29.0%) 6本(54.5%)
芳醇が下位25%(0.497未満) — 5本
芳醇と重厚の両方が下位25% 77本 1本

福島では「芳醇と重厚の両方が下位25%」が12本中6本でしたが、福岡は11本中1本。該当群のうち芳醇が全国平均以上という割合36.4%は、26県で奈良(50.0%)・北海道(40.0%)に次ぐ3位です。

「辛口かつ旨味」は全国10本、うち2本が福岡

軸の組み合わせで数えると、福岡の位置がはっきりします。

組み合わせ(両方とも全国上位25%) 全国 福岡 県別上位
ドライ+芳醇 10本 2本 石川2・福岡2・秋田1
ドライ+重厚 46本 3本 山形3・福井3・福岡3・茨城3
ドライ+穏やか 71本 3本 新潟13・山形6・静岡5
ドライ+軽快 87本 3本 新潟10・長野8・宮城6
ドライ+華やか 24本 0本 広島3・長野3・青森3

ドライと芳醇の両方が全国上位25%に入る銘柄は、全国1346本のうち10本しかありません。そのうち2本(萬代・蒼田)が福岡で、石川と並ぶ全国最多タイです。ドライ+重厚の3本も4県での最多タイ。

一方でドライ+華やかは0本。11本の内側でドライ値との相関を取ると、華やかが−0.100、芳醇が−0.624、重厚が−0.403、穏やかが−0.499、軽快が+0.480です。芳醇との−0.624は該当10本以上の13県で7番目の弱さで、青森(−0.937)や福島(−0.828)とは差があります。

ただし芳醇と軽快の相関は**−0.662**。福岡では旨味を取るか軽さを取るかが二者択一になっていて、これが軽快平均24位の中身です。

人気2銘柄はどちらも該当外

さけのわランキング100位以内に入る福岡の銘柄は2つです。

銘柄 ランキング ドライ 全国順位 軽快 該当
田中六五 58位 0.245 978位 0.513 —
庭のうぐいす 95位 0.304 662位 0.515 —

2銘柄とも該当しません。どちらもドライは全国600位以下で、そのかわり軽快が0.51台(上位17%前後)。福岡の日本酒おすすめ5選で見たとおり、福岡は6軸すべての県平均が全国平均±0.02に収まる県で、軽快だけは県平均0.440が40県中10位と高めです。

県全体の顔は軽快の側にあり、辛口11本はその反対側にいる——軽快の差が26県最下位になるのは、この裏返しです。

11本のばらつきと選び方

該当10本以上の13県について、群の内側の全ペアでコサイン類似度を取りました。値が小さいほど県内の辛口の形がばらけています。

都道府県 該当本数 群内の平均類似度
青森県 20 0.9185
秋田県 13 0.9328
高知県 11 0.9492
山形県 25 0.9517
福島県 12 0.9530
岐阜県 10 0.9591
福岡県 11 0.9638
新潟県 41 0.9718
広島県 13 0.9730
宮城県 13 0.9778
長野県 22 0.9781
静岡県 13 0.9797
北海道 10 0.9818

福岡の0.9638は13県で7番目。軸のレンジは華やか0.146〜0.368、芳醇0.400〜0.661、重厚0.231〜0.475、穏やか0.278〜0.528、ドライ0.371〜0.628と、どの軸も0.2以上の幅があります。

11本から6軸それぞれの県内トップを拾うと、華やかと軽快のトップが同じ1本なので5本に収まります。この5本(寒北斗・九州菊・天心・大賀・蒼田)の平均類似度は0.9470で、11本から5本を選ぶ全462通りのうち8番目に小さい値(最小は0.9444)。別々の方向を指す5本になっているので、これをそのまま採りました。並び順はドライ値の高い順です。

なお寒北斗と蒼田は福岡の日本酒おすすめ5選でも選んでいます。この2本は県内のドライ1位・芳醇1位なので、県全体を見ても辛口だけを見ても端に出てきます。

1. 寒北斗(寒北斗酒造)|ドライ0.628は全国19位=上位1.4%

ドライ**0.628は全国19位=上位1.4%**で福岡県内1位。県内でドライ0.6を超えるのはこの1本だけです(2位の三井の寿が0.546)。

11本のなかでは例外的に、他の軸が削られています。**芳醇0.400は全国1288位=下位4.4%**で11本の最低値、穏やか0.307も下位17.0%、重厚0.231は下位18.0%、華やか0.243は下位20.0%。軽快0.489だけが上位24.3%に残っています。

つまり**この1本だけは「痩せ型の辛口」**で、前章までに見てきた福岡の傾向から外れた位置にいます。全国平均ベクトルとの距離0.387は11本で最も遠く、次に遠い九州菊(0.302)とも差があります。11本の全55ペアで類似度が低い組み合わせの上位6つは、すべて寒北斗が入っている側です(最も遠いのは美田との0.9156=当サイトの表示スコアで83点、次が菊美人との0.9191=84点、蒼田との0.9195=84点)。

キレの強さだけを基準にするなら、福岡でこれより上はありません。

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2. 九州菊(林龍平酒造場)|ドライ上位6.7%と重厚上位9.9%が同居

ドライ**0.479は全国90位=上位6.7%で県内2位。そこに重厚0.475(全国133位・上位9.9%)**が乗ります。

ドライと重厚の両方が全国上位10%(順位で134位以内)に入る銘柄は、1346本のなかでこの九州菊だけです。前章のドライ+重厚(上位25%)は全国46本ありますが、両方を上位10%まで押し上げているのは1本しかありません。芳醇0.542も全国669位でちょうど中央、全国平均0.535より上です。

削られているのは香りと軽さのほうで、**華やか0.165は全国1254位=下位6.9%**で11本の最低値、軽快0.339も1102位=下位18.2%。穏やか0.331は下位24.1%です。

香りと軽さを引いて、キレと厚みの両方を取ったという数値の並びで、1本目の寒北斗(重厚0.231)とは類似度0.9345=87点と離れています。福岡の11本で「辛口なのに旨味と厚みが残る」をいちばん極端にやっているのがこれです。

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3. 天心(溝上酒造)|11本の華やかトップ、それでも全国では41%

ドライ0.439は全国138位=上位10.3%で県内3位。軽快0.514は全国225位=上位16.7%、華やか0.368は556位で、どちらも11本の1位です。

ただし華やか0.368は全国で見れば上位41.3%で、上位25%の境界0.414には届いていません。前章のとおり福岡にはドライ+華やかが0本なので、これは「福岡の辛口でいちばん香りが立っている1本」であって全国基準の香り系ではありません。

芳醇0.444は下位9.2%で11本の2番目に低く、重厚0.292・穏やか0.354はどちらも中ほど。旨味を落として、香りと軽さに振った形です。福岡の辛口では少数派の方向で、ドライ+軽快の3本(寒北斗・天心・杜の蔵)のうち軽快がいちばん高いのがこれになります。

2本目の九州菊とは類似度0.9415=88点で、華やか0.165対0.368、軽快0.339対0.514とちょうど裏返しです。なお軽快2位の杜の蔵(0.511)とは類似度0.9936=99点でほぼ同一ベクトルなので、華やかと軽快の両方が上の天心を採りました。

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4. 大賀(大賀酒造)|穏やか0.528は全国上位6.8%

ドライ0.398は上位17.0%。そこに**穏やか0.528(全国91位・上位6.8%)**が同居します。11本の穏やかトップです。

ドライが上位25%に入り、かつ穏やかが全国上位10%(0.507以上)に入る銘柄は1346本中29本。福岡の該当はこれ1本だけです。11本の内側ではドライ×穏やかの相関が−0.499なので、県内の傾向にいちばん逆らっている1本になります。

重厚0.357も全国431位=上位32.0%で全国平均より上。一方で軽快0.347は下位20.1%、芳醇0.460は下位13.1%、華やか0.322は中ほどです。キレの角を丸めて、厚みは残したまま速さを落としたという並びになります。

1本目の寒北斗とは穏やか0.307対0.528で11本の最下位と最上位にあたり、類似度も0.9262=85点と離れています。辛口の枠に入れつつ当たりを穏やかにしたい、という条件に福岡でいちばん近い選択肢です。

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5. 蒼田(喜多屋)|芳醇0.661は全国23位=上位1.7%

ドライ0.371は上位23.8%で境界ぎりぎり。そのかわり**芳醇0.661が全国23位=上位1.7%**で、11本どころか福岡県38銘柄すべての1位です。

前章の「ドライ+芳醇が全国10本」に入る1本で、もう1本の萬代(芳醇0.600・全国240位)より0.061上。全国1346本で芳醇がこの値以上なのは25本しかありません。

削られているのは穏やかさで、穏やか0.278は全国1201位=下位10.8%。11本の最低値です。軽快0.381も下位32.8%、重厚0.284は中ほど、華やか0.350は上位47.0%。旨味に全部振って、穏やかさと軽さを引いた形です。

1本目の寒北斗との類似度は0.9195=84点。芳醇0.400対0.661、ドライ0.628対0.371と、同じ県の辛口でも正反対の端にいます。福岡の11本で「辛口なのに旨味が減らない」を最も強く示しているのがこの1本で、キレより旨味を優先するならここから入るのが早いです。

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残る6本も見ておく

福岡の該当11本を、ドライ値の高い順に全部並べます。太字が今回選んだ5本です。

銘柄 蔵 華やか 芳醇 重厚 穏やか ドライ 軽快
寒北斗 寒北斗酒造 0.243 0.400 0.231 0.307 0.628 0.489
三井の寿 みいの寿 0.310 0.424 0.283 0.353 0.546 0.470
九州菊 林龍平酒造場 0.165 0.542 0.475 0.331 0.479 0.339
天心 溝上酒造 0.368 0.444 0.292 0.354 0.439 0.514
萬代 小林酒造本店 0.255 0.600 0.333 0.374 0.423 0.382
花の露 花の露 0.292 0.527 0.368 0.468 0.412 0.336
杜の蔵 杜の蔵 0.327 0.443 0.269 0.450 0.401 0.511
大賀 大賀酒造 0.322 0.460 0.357 0.528 0.398 0.347
美田 みいの寿 0.146 0.527 0.441 0.472 0.391 0.363
菊美人 菊美人酒造 0.211 0.572 0.403 0.449 0.382 0.344
蒼田 喜多屋 0.350 0.661 0.284 0.278 0.371 0.381

ドライ列は0.628から0.371まで0.26の幅。芳醇列を見ると、上2本が0.400・0.424で下9本(0.443以上)から離れていて、最もキレる2本だけが痩せ型という形です。3本目の九州菊以降は芳醇0.443〜0.661で、全国平均0.535をまたぐ位置に並びます。

もう1段キレを強くしたいなら三井の寿(ドライ0.546・全国41位=上位3.0%)。旨味なら萬代(芳醇0.600・ドライ+芳醇の全国10本の1つ)、厚みなら美田(重厚0.441・11本2位)か菊美人(0.403・3位)。穏やかさと厚みの両方なら花の露(穏やか0.468・重厚0.368)、軽さなら杜の蔵(軽快0.511・11本2位)です。

なお美田と菊美人の類似度は0.9957=99点、花の露と大賀も0.9953=99点でほぼ同じ形。厚みと穏やかさを足した方向には、似たベクトルの銘柄が集まっています。

福岡で辛口を選ぶときの物差し

福岡の該当率28.9%は40都道府県中12位、ドライ平均0.312は17位。数字としてはどちらも中の上で、県を代表する特徴ではありません。

特徴は中身のほうにあります。該当11本の芳醇平均0.509・重厚平均0.340は26県でどちらも4位、県全体との差で見れば芳醇が1位・重厚が2位。全国の辛口335本の重厚平均0.296を上回り、全国平均0.328よりも上です。そのかわり軽快の差は26県で最下位でした。

つまり福岡で辛口を選ぶと、旨味と厚みは残るが軽さは落ちる——これが数値から読める形です。11本のなかで芳醇と軽快の相関が−0.662なので、この2つは同時に取れません。

だから福岡では「どれくらいキレるか」の前に、旨味を取るか軽さを取るかを決めるのが早いです。旨味なら蒼田か萬代、厚みも欲しいなら九州菊、軽さなら天心か杜の蔵、穏やかさなら大賀。キレだけを最優先するなら寒北斗ですが、これは11本で唯一旨味が削れている1本になります。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。辛口そのものの考え方は辛口日本酒入門、旨味の側は旨味とコクの芳醇な日本酒、厚みはどっしり飲みごたえのある日本酒、軽さは軽快で飲み疲れしない日本酒もどうぞ。福岡の酒全体は福岡の日本酒おすすめ5選に、他県の辛口は福島・静岡・広島・宮城・秋田・青森・新潟・山形・長野にまとめています。