栃木のフルーティーな日本酒5選 — 12本がいちばん「似ていない」県

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栃木県はさけのわデータに32銘柄が収録され、人気ランキング(全国100位まで)に入るのは仙禽(4位)と鳳凰美田(9位)の2銘柄です。そして、この2本はどちらも華やか値が全国上位25%に入っています。

フルーティー該当が5本以上ある26県のうち、全国トップ10の銘柄を2本抱えているのは三重県と栃木県だけ。香りの側に知名度が寄っている県、ということになります。

ところが12本を6軸で並べると、全国でいちばん形がそろっていないフルーティー帯が出てきました。

栃木のフルーティーは12本

当サイトが利用しているさけのわデータの収録1346銘柄で、華やか値の上位25%の境界は0.414。これを超える銘柄は全国で339本(25.2%)、栃木県は**32銘柄中12本=37.5%**です。

この該当率は26県で8位。長崎60%・山口57%・群馬50%には届きませんが、平均は上回ります。栃木が特異なのは率ではなく、12本の散らばり方のほうです。

データで見る栃木のフルーティー12本

12本の平均値を、全国のフルーティー該当339本、栃木32銘柄全体、全国1346銘柄と並べます。

軸 栃木12本 全国フルーティー339本 栃木32本 全国1346本
華やか 0.486 0.479 0.381 0.339
芳醇 0.536 0.523 0.550 0.535
重厚 0.212 0.236 0.298 0.328
穏やか 0.277 0.311 0.368 0.393
ドライ 0.220 0.253 0.264 0.310
軽快 0.500 0.498 0.441 0.422

26県で並べると、芳醇0.536は7位と高いほうです。それなのに重厚0.212は20位、穏やか0.277は19位、ドライ0.220は22位。華やか(10位)と軽快(12位)は中位です。

旨味の数字は高いのに、厚み・丸さ・キレがどれも低い。 芳醇と重厚の差は0.324で、これは26県の3位(高知0.345、岡山0.334)。旨味が厚みに化けないタイプの県です。

岐阜のフルーティー12本は芳醇3位・重厚2位で「旨味と厚みをセットで持つ」形でしたが、栃木は芳醇だけが残って重厚が落ちます。同じ「芳醇上位」でも中身が違います。

「重厚・穏やか・ドライが全部低い」が12本中5本

ひとつずつ数えます。12本のうちドライが全国下位25%(0.240以下)なのは8本=67%。全国のフルーティー339本では45%ですから、だいぶ高い比率で、26県中5位です。

穏やかが下位25%(0.335以下)なのは9本=75%(全国フルーティー61%、26県8位)、重厚が下位25%(0.253以下)なのは7本=58%(同63%、18位)。

そして3つすべてが同時に下位25%に入る銘柄が5本=42%(鳳凰美田・仙禽・かぶとむし・雪だるま・栃茜)。全国339本では69本=20%ですから倍以上で、26県では3位です(岡山50%、群馬46%)。

栃木のフルーティー帯は、厚みも丸さもキレも持たず、香りと旨味の輪郭だけが立つ方向に寄っています。32銘柄全体で見てもドライ平均0.264は収録10銘柄以上の40県中36位、重厚0.298は31位、穏やか0.368は33位なので、12本だけの話ではありません。

12本は、全国でいちばん似ていない

ここが栃木の本題です。

12本の全66ペアのコサイン類似度は平均0.9380。フルーティー該当が10本以上ある14県で、これは最下位です。上位の福島(0.9849)・岐阜(0.9813)とは0.04以上離れていて、26県全体でも下から4番目。

さらに、66ペアの最小値0.7088(雪だるま×栃茜)は、26県のどのペアよりも低い値でした。同じ県の同じ「フルーティー」の棚に、6軸ではほとんど別物の2本が同居しています。

散らばりの正体は両端にあります。

栃茜(白相酒造)の芳醇0.803は全国1位。2位は0.715ですから、0.088も離れた単独トップです。その一方で重厚0.012(全国下から2番目)・穏やか0.040(下から3番目)・ドライ0.035(下から7番目)・軽快0.251(下位6%)と、残り4軸が全部底に張り付いています。12本の平均ベクトルとの類似度0.8630は12本中最低。

反対側が十一正宗(森戸酒造)で、華やか0.599は全国18位(上位1%)なのに芳醇0.307は全国1329位(下位2%)。栃茜とは芳醇で0.496も違い、この2本の類似度0.7212が66ペアの2番目に低い値です。

もうひとつ、軽快の全国トップ10に栃木から2本(雪だるま0.737=8位、かぶとむし0.690=10位)が入っています。2本入っているのは栃木と福岡だけ。12本には軽快0.251(栃茜)から0.737(雪だるま)までが同居していて、幅は0.486あります。

固まっているのは6本だけ

とはいえ12本全部がバラバラなわけではなく、中核には固い塊があります。

霧降・望・燦爛・鳳凰美田・七水・九尾の6本は、15ペアすべてが0.9842以上、平均0.9921。値域は華やか0.445〜0.519、芳醇0.548〜0.639、重厚0.225〜0.320、ドライ0.181〜0.271、軽快0.399〜0.516です。栃木のフルーティーの「標準形」はここにあります。

66ペアのうち0.99以上は14ペアで、ほぼこの6本の内側に集中しています。最大ペアは望×燦爛の0.9976で、これは同じ蔵(外池酒造店)の2本です。

せんきんが12本中4本を占める

もうひとつの特徴として、12本の蔵は8蔵しかありません。うちせんきんが4本(仙禽・かぶとむし・霧降・雪だるま)で、12本の33%。フルーティー該当10本以上の14県では、宮城(新澤醸造店4/11=36%)に次ぐ2位の集中度です。

ただし同じ蔵でも6軸の形はそろっていません。4本の6ペアは0.9440〜0.9945で、仙禽×霧降が0.9945と近い一方、霧降×雪だるまは0.9440。軽快は0.508(霧降)から0.737(雪だるま)まで、芳醇は0.342(雪だるま)から0.548(霧降)まで開きます。蔵でまとめて選べる県ではありません。

5本の選び方

以下の5本は、12本を6軸ベクトルで比べ、蔵を重複させず、全10ペアの最大類似度が最も小さくなる組み合わせを選びました。

8蔵から5蔵を採る組み合わせ256通りを総当たりした結果、最大ペアが最も低いのがこの5本で0.9777。全10ペアは0.7212〜0.9777、平均0.8841です。岐阜の同じ選び方(0.9388〜0.9854、平均0.9708)と比べると、散らばりの差がそのまま出ています。

せんきんの4本からは、この条件でかぶとむしが代表として残りました。ランキング4位の仙禽と霧降・雪だるまは最終章の表に回しています。並び順は華やか値の高い順です。

1. 十一正宗(森戸酒造)|栃木の華やか1位、旨味は全国下位2%

華やか**0.599は全国18位(上位1%)**で栃木32銘柄の1位。そこから先が極端です。

芳醇0.307は全国1329位(下位1%)で12本の最下位、重厚0.128も全国1333位(下位1%)で12本中11位。かわりにドライ0.402は12本で唯一の全国上位25%(218位/上位16%)、穏やか0.361は12本中2位、軽快0.488は上位24%です。

つまり、香りを最大まで立てて旨味と厚みを抜き、後口だけはっきり切る形。前章で見た「栃木=旨味は残る」という平均像から最も外れた1本で、12本の平均ベクトルとの類似度0.9425は下から2番目です。よく冷やして、香りを邪魔しない軽い料理と。

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2. 栃茜(白相酒造)|芳醇が全国1位、残り4軸は全部底

華やか0.537は全国42位(上位3%)で栃木の2位。ただしこの1本の代表値は芳醇です。

芳醇0.803は全国1346銘柄中の1位。2位(0.715)に0.088差をつけた単独トップで、12本平均0.536の1.5倍にあたります。そのうえで重厚0.012(下から2番目)・穏やか0.040(下から3番目)・ドライ0.035(下から7番目)・軽快0.251(下位6%)。

旨味の数字だけが振り切れて、厚み・丸さ・キレ・軽さが全部ないという、1346銘柄のなかでもかなり珍しい形です。雪だるまとの類似度0.7088は26県の全ペア中の最小値で、十一正宗とも0.7212。栃木のフルーティーの散らばりは、ほぼこの1本が作っています。温度を上げても軽快側に逃げる数値ではないので、冷やして少量ずつ、味の濃い料理と向き合わせる側です。

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3. 鳳凰美田(小林酒造)|全国9位、栃木の「標準形」の香り上限

華やか0.519は全国66位(上位5%)で12本中3位、人気ランキングは全国9位です。

芳醇0.617は12本中3位(全国157位/上位12%)で旨味はしっかりある側。いっぽう重厚0.225(下位16%)・穏やか0.271(下位10%)・ドライ0.182(下位9%)はすべて全国下位25%で、前章の「3軸同時に下位25%」に該当する5本のひとつです。軽快0.439は12本中9位と、意外に軽さの数字は高くありません。

香って旨味も乗るが、厚みも丸さもキレもない——この記事で見てきた栃木の平均像を、ランキング上位の銘柄がそのまま持っているかたちです。前章の6本クラスタのなかで華やかが最も高いのもこれ。平均ベクトルとの類似度0.9937は12本中5位。冷やして、味の輪郭がある料理に。

似た形の銘柄を探すなら鳳凰美田が好きな人におすすめの似ている日本酒にまとめています。

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4. かぶとむし(せんきん)|軽快が全国10位、穏やかは下位1%

華やか0.517は全国69位(上位5%)で12本中4位。特徴は後半の軸です。

軽快**0.690は全国10位(上位1%)で12本中2位。そのぶん芳醇0.414は12本中10位(全国1275位/下位5%)、重厚0.141は下位2%、穏やか0.159は全国1329位(下位1%)**まで落ちます。ドライ0.201は下位14%なので、キレで切るタイプでもありません。

香って、とにかく軽く、旨味も厚みも丸さも乗せない。鳳凰美田とは華やかで0.002しか違わないのに、芳醇で0.203、軽快で0.251の差があります。せんきんの4本からはこの1本を代表として採りました(4本の形は0.9440〜0.9945とそろっていません)。よく冷やして、食事の最初か、脂のある料理を流す側で。

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5. 開華(第一酒造)|12本で唯一、穏やかが中央より上

華やか0.440は上位18%で12本中11位。境界をわずかに超えた位置です。

この1本だけの特徴は穏やか0.412で、12本の最高値(全国574位/上位43%)。12本のうち9本が穏やかで全国下位25%に沈むなか、唯一ほぼ中央にいます。重厚0.298も12本中3位(全国734位/ほぼ中央)、ドライ0.248は12本中4位、芳醇0.525・軽快0.460は12本の中位です。

香りは控えめに立って、丸さと厚みが平均並みに残る。栃木の12本でいちばん「尖っていない」1本で、栃茜との類似度0.8020、十一正宗とも0.9356。この記事で見てきた栃木の特徴(薄い・丸くない・切れない)から外れた位置にあるので、12本のなかでは最も温度を上げて飲める数値です。10〜15度あたりで厚みが出ます。

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残る7本も見ておく

12本のうち、上の5本以外は次の7本です。華やか値の高い順に並べます(銘柄名・蔵名はさけのわデータの表記のままです)。

銘柄 華やか 芳醇 重厚 穏やか ドライ 軽快
仙禽(せんきん) 0.487 0.491 0.216 0.306 0.200 0.584
霧降(せんきん) 0.487 0.548 0.242 0.336 0.181 0.508
燦爛(外池酒造店) 0.465 0.568 0.307 0.267 0.231 0.493
七水(虎屋本店) 0.459 0.639 0.255 0.283 0.210 0.439
九尾(天鷹酒造) 0.449 0.613 0.320 0.302 0.263 0.399
望(外池酒造店) 0.445 0.560 0.263 0.282 0.271 0.516
雪だるま(せんきん) 0.423 0.342 0.137 0.308 0.216 0.737

補足します。人気ランキング全国4位の仙禽は軽快0.584(全国59位/上位4%)が12本中3位で、芳醇0.491は下位23%、重厚0.216・穏やか0.306・ドライ0.200は3軸そろって下位25%。香りと軽さに寄った形です。似た銘柄は仙禽が好きな人におすすめの似ている日本酒にまとめました。

**雪だるまの軽快0.737は全国8位(上位1%)**で12本の最高値。芳醇0.342は12本の下から2番目、重厚0.137は下から3番目で、栃茜とは真逆の方向に振り切れています。この2本の類似度0.7088が26県の最小ペアです。

七水の芳醇0.639は栃茜を除けば12本の最高値(全国67位/上位5%)、九尾の重厚0.320とドライ0.263はどちらも栃木12本の1位。「旨味と厚みのある栃木」を探すならこの2本が上限で、互いの類似度も0.9951と近いです。

霧降・燦爛・望は前章の6本クラスタの中核で、望×燦爛の0.9976は66ペアの最大値(同じ蔵の2本)。平均ベクトルに最も近いのは霧降(0.9973)、次が望(0.9965)です。迷ったらこのあたり、という位置づけになります。

栃木でフルーティーを選ぶときの物差し

  • 形がそろっていない:66ペアの平均類似度0.9380は該当10本以上の14県で最下位。最小ペア0.7088(雪だるま×栃茜)は26県の全ペア中の最小値
  • 旨味は残るが厚みは残らない:12本の芳醇0.536は26県7位なのに重厚0.212は20位。芳醇−重厚の差0.324は3位
  • 切れない・丸くない:ドライ下位25%が8本(67%)、穏やか下位25%が9本(75%)。「重厚・穏やか・ドライが全部下位25%」が5本(42%)で26県3位
  • 固い塊は6本だけ:霧降・望・燦爛・鳳凰美田・七水・九尾の15ペアが0.9842以上。残り6本は両極に散る
  • 蔵は8つ、うちせんきんが4本:ただし同じ蔵でも0.9440〜0.9945と形はそろわない

つまり栃木の棚では、「華やかかどうか」を確かめただけでは味が決まりません。実際に分かれるのは軽快(0.251〜0.737、幅0.486)と芳醇(0.307〜0.803、幅0.496)の2軸です。軽さを取るなら雪だるま・かぶとむし・仙禽、旨味を取るなら栃茜・七水・九尾・鳳凰美田、中間なら6本クラスタ、という3分割がいちばん素直な切り方になります。

香りより旨味そのものを軸に選ぶなら旨味とコクの芳醇な日本酒、軽さを最優先するなら軽快で飲み疲れしない日本酒が参考になります。フルーティー全般の選び方はフルーティーな日本酒の選び方にまとめました。

他県と比べたい場合、栃木と最も対照的なのは岐阜(芳醇3位・重厚2位で、12本が固く固まっている県)です。軽さの方向なら群馬、香りの上限なら長野・山形・秋田、丸さなら京都・福島、本数なら新潟が、それぞれ栃木とは違う形をしています。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。