三重のフルーティーな日本酒5選 — 12本中11本が「厚みなし」

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三重県はさけのわデータに28銘柄が収録され、人気ランキング(全国100位まで)に入るのは而今(2位)と作(7位)の2銘柄です。どちらも華やか値が全国上位25%に入っています。

フルーティー該当が5本以上ある26県のうち、全国トップ10の銘柄を2本抱えているのは三重県と栃木県だけ。しかも三重は2位と7位で、この2県のなかでも上です。

ただ、12本を6軸で並べてみると、香りの数字はどれも中位でした。全員がそろっているのは別の軸——厚みのなさのほうです。

三重のフルーティーは28銘柄中12本

当サイトが利用しているさけのわデータの収録1346銘柄で、華やか値の上位25%の境界は0.414。これを超える銘柄は全国で339本(25.2%)、三重県は**28銘柄中12本=42.9%**です。

この該当率は26県で4位。長崎60.0%・山口57.1%・群馬50.0%に次ぐ高さで、収録28銘柄以上の20県では最上位(2位は栃木37.5%)になります。三重の棚は、半分近くが香り側に寄っている計算です。

データで見る三重のフルーティー12本

12本の平均値を、全国のフルーティー該当339本、三重28銘柄全体、全国1346銘柄と並べます。

軸 三重12本 全国フルーティー339本 三重28本 全国1346本
華やか 0.473 0.479 0.368 0.339
芳醇 0.517 0.523 0.542 0.535
重厚 0.217 0.236 0.308 0.328
穏やか 0.338 0.311 0.394 0.393
ドライ 0.262 0.253 0.282 0.310
軽快 0.511 0.498 0.436 0.422

26県で並べると、華やか0.473は17位、芳醇0.517も17位、重厚0.217も17位。ドライ0.262と軽快0.511は10位です。香り・旨味・軽さのどれを見ても真ん中あたりで、県の個性が出ません。

数字として上にあるのは穏やか0.338で26県5位(1位は福島0.361、2位は京都0.360)。フルーティー帯は穏やかが落ちるのが普通ですが、三重はそこが相対的に高い側です。

とはいえ平均値だと、三重の特徴はほとんど見えません。1本ずつ数えると形が変わります。

「厚みがない」だけが12本の共通項

軸ごとに、全国の上位25%・下位25%に何本入るかを数えます。

  • 重厚が全国下位25%(0.253以下):11本=92%(全国フルーティー339本では63%)
  • ドライが上位25%(0.367以上):1本のみ(三重の寒梅)
  • 芳醇が上位25%(0.586以上):1本のみ(福和蔵)
  • 軽快が上位25%(0.484以上):6本=50%(全国フルーティー55%)
  • 穏やかが全国中央値(0.398)以上:2本=17%(同11%)

12本中11本が重厚の全国下位25%という比率は、26県で2位です(1位は群馬12/13=92.3%、三重は11/12=91.7%でほぼ並び)。さらに12本の重厚の最大値は高砂の0.290で、これは全国789位——つまり三重のフルーティー帯には、厚みが全国平均を超える銘柄が1本もありません。この「12本の重厚最大値」を26県で比べると、三重は下から7番目です。

いっぽうで、尖っている方向はばらけています。ドライの上位25%も芳醇の上位25%も1本ずつしかなく、軽快の該当率は全国平均並み。岐阜が芳醇3位・重厚2位、群馬が軽快2位という形で立っているのに対し、三重は**「薄い」以外に全員で共有している特徴がない**県です。

28銘柄全体でも同じ傾向が出ています。収録10銘柄以上の40県で、三重28本の重厚0.308は28位、ドライ0.282は26位、華やか0.368は10位。12本だけの話ではありません。

12本は固まっている——ばらつきは1本が作っている

12本の全66ペアのコサイン類似度は平均0.9798。26県で7位、フルーティー該当が10本以上ある14県では4位(1位福島0.9849、2位岐阜0.9813、3位山口0.9804)です。固まっているほうの県になります。

66ペアのうち0.98以上が43ペア、0.99以上が18ペア。最大は鈴鹿川×田光の0.9977で、これは別の蔵(清水清三郎商店と早川酒造)同士の組み合わせです。

そのうえで、低いペアは1本に集中しています。66ペアの最小値0.9343は三重の寒梅×KAWABUで、下位9ペアはすべて三重の寒梅を含みます。三重の寒梅を外した11本の55ペアは平均0.9853・最小0.9628。12本の重心(平均ベクトル)との類似度も、三重の寒梅だけが0.9654で、残り11本は0.9876〜0.9964に収まります。

三重のフルーティー帯は、11本の塊+外れ値1本という構造です。軸ごとの幅を見ると芳醇が0.321〜0.609(幅0.288)で最も広いのですが、三重の寒梅を外すと0.464〜0.609(幅0.145)まで縮みます。華やかの幅はもともと0.422〜0.544の0.122しかありません。

栃木の同じ12本が平均0.9380(14県で最下位)・最小0.7088だったのと比べると、三重は正反対の県です。

而今と作は、数字上ほぼ同じ形

三重の2大銘柄についても書いておきます。

而今(0.454 / 0.575 / 0.253 / 0.381 / 0.218 / 0.454)と作(0.526 / 0.543 / 0.210 / 0.345 / 0.231 / 0.460)の類似度は0.9952。66ペア中7位の高さで、数字の上ではほぼ同じ形です。違いは華やかが0.072、穏やかが0.036あるくらいで、残り4軸は0.02前後しか離れていません。

しかも而今の華やか0.454は12本中9位。全国2位の人気銘柄が、県内のフルーティー帯では香りの下から4番目にいます。かわりに重厚0.253は12本の2位、穏やか0.381は4位で、**12本のなかでは「厚みと丸さがある側」**という位置づけです。

同じ蔵の2本どうしも近く、而今×高砂(木屋正酒造)が0.9964、作×鈴鹿川(清水清三郎商店)が0.9952。例外は早川酒造の早春×田光で0.9741——軽快が0.616対0.470、芳醇が0.464対0.533と、同じ蔵でここだけ開きます。

それぞれに似た銘柄は而今が好きな人におすすめの似ている日本酒・作が好きな人におすすめの似ている日本酒にまとめています。

5本の選び方

以下の5本は、12本を6軸ベクトルで比べ、蔵を重複させず、全10ペアの最大類似度が最も小さくなる組み合わせを選びました。

9蔵から5蔵を採る456通りを総当たりすると、最大ペアが最も低いのは三重の寒梅・福和蔵・早春・花芽実・高砂の0.9858でした。ただしこの組み合わせは、ランキング入りの而今と作をどちらも落とします(前章のとおり、この2本は互いに0.9952で、どちらかを入れると散らばりが悪化するため)。

そこで全国2位の而今を必ず含める条件を足して同じ基準で選び直したのが、次の5本です。最大ペアは0.9868で、無条件の最適解との差は0.0010。この0.9868を満たす組み合わせは花芽実を採るか寒紅梅を採るかの2通りだけで、平均が低い前者(0.9695対0.9697)を選びました。全10ペアは0.9343〜0.9868、平均0.9695です。作は最終章の表に回しました。並び順は華やか値の高い順です。

1. 三重の寒梅(丸彦酒造)|三重の華やか1位、旨味は全国下位2%

華やか**0.544は全国39位(上位3%)**で三重28銘柄の1位。ここから先が12本のなかで孤立します。

芳醇0.321は全国1346銘柄中1328位(下から19番目/下位2%)で、12本平均0.517を0.196下回ります。重厚0.161も下から39番目(下位3%)。かわりにドライ0.408は12本で唯一の全国上位25%(207位/上位15%)、軽快0.534も上位13%です。

つまり、香りだけを高く立てて、旨味と厚みを抜き、後口をはっきり切る形。12本の重心との類似度0.9654は12本中最下位で、KAWABUとの0.9343が66ペアの最小値です。前章の「三重は11本の塊+1本」の、その1本がこれです。よく冷やして、味の軽い料理と合わせる側になります。

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2. KAWABU(河武醸造)|穏やかが全国下位4%、軽さで押す1本

華やか0.492は全国109位(上位8%)で12本中3位。特徴は後半の軸にあります。

穏やか0.225は全国1295位(下から50番目/下位4%)で12本の最下位。重厚0.206も下位10%、ドライ0.187も下位11%です。そのうえで**軽快0.553は全国121位(上位9%)**で12本中4位、芳醇0.569は12本中3位(上位34%)。

旨味は平均より上なのに、丸さも厚みもキレもなく、軽さだけが強い形です。重厚・穏やか・ドライが3軸そろって全国下位25%に入る3本(KAWABU・福和蔵・早春)のひとつで、そのなかでも穏やかの落ち方が最大。三重の寒梅とは0.9343、而今とは0.9806。しっかり冷やして、脂のある料理を流す方向で使える数値です。

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3. 早春(早川酒造)|軽快が全国34位、12本でいちばん軽い

華やか0.475は全国144位(上位11%)で12本中5位。この1本の代表値は軽快です。

**軽快0.616は全国34位(上位3%)**で12本の最高値、平均0.511を0.105上回ります。そのぶん芳醇0.464は12本中11位(全国1154位/下位14%)、重厚0.197は下位8%、ドライ0.178は下位9%まで落ちます。

香って、とにかく軽く、旨味も厚みも後口の切れも乗せない。同じ早川酒造の田光(軽快0.470・芳醇0.533)とは0.9741で、12本の同蔵ペアのなかで唯一離れている組み合わせです。KAWABUとは0.9868(この5本の最大ペア)で近いものの、KAWABUが穏やかで落ちるのに対し早春は0.330と12本の中位にあり、軽さの出方が違います。よく冷やして、食事の最初の1杯に向く数値です。

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4. 花芽実(大田酒造)|重厚は下位4%、でも丸さとキレは中央

華やか0.465は全国166位(上位12%)で12本中7位。目立つのは軸のばらけ方です。

重厚0.174は全国1287位(下から60番目/下位4%)で12本中11位。ところが穏やか0.390は全国709位、ドライ0.311は617位と、どちらもほぼ全国中央値。12本のなかで穏やか3位・ドライ4位です。軽快0.535は上位12%、芳醇0.468は12本中10位。

厚みだけを抜いて、丸さと後口は平均どおりに残す形。KAWABUとの0.9726は、この5本から三重の寒梅を含むペアを除いたなかでは最小で、同じ「重厚が下位」でも中身が違うことが数字に出ています。三重の12本で「薄いけれど尖ってはいない」位置にあるので、冷やしすぎず8〜12度あたりで飲める数値です。

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5. 而今(木屋正酒造)|全国2位、12本では「厚みのある側」

華やか0.454は全国199位(上位15%)で12本中9位。人気ランキングは全国2位です。

6軸は0.454 / 0.575 / 0.253 / 0.381 / 0.218 / 0.454。芳醇0.575は12本中2位(全国413位/上位31%)、重厚0.253は12本中2位、穏やか0.381は4位。軽快0.454は12本中11位で、ドライ0.218は下位18%です。

香りは控えめに立って、旨味と丸さが12本の上限近くに残り、軽さでは押さない——この記事で見てきた「薄い三重」のなかでは、最も厚み側にいる1本です。重心との類似度0.9940(12本中6位)で、県の標準形からも外れません。全国2位の銘柄が香りの尖りではなく中央寄りの数字で立っているのが、三重の面白いところです。12本のなかでは温度を上げても崩れにくい数値で、10〜15度あたりが扱いやすい範囲になります。

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残る7本も見ておく

12本のうち、上の5本以外は次の7本です。華やか値の高い順に並べます(銘柄名・蔵名はさけのわデータの表記のままです)。

銘柄 華やか 芳醇 重厚 穏やか ドライ 軽快
作(清水清三郎商店) 0.526 0.543 0.210 0.345 0.231 0.460
福和蔵(井村屋) 0.490 0.609 0.193 0.281 0.226 0.472
若戎(若戎酒造) 0.471 0.532 0.245 0.242 0.241 0.564
鈴鹿川(清水清三郎商店) 0.456 0.542 0.220 0.403 0.265 0.466
寒紅梅(寒紅梅酒造) 0.445 0.499 0.210 0.291 0.321 0.568
田光(早川酒造) 0.436 0.533 0.250 0.378 0.316 0.470
高砂(木屋正酒造) 0.422 0.548 0.290 0.436 0.244 0.434

補足します。人気ランキング全国7位の作は華やか0.526が12本の2位(全国57位/上位4%)。而今とは0.9952、同じ蔵の鈴鹿川とも0.9952で、**12本の重心にいちばん近い1本(0.99645。2位の鈴鹿川0.99642とはほぼ同値)**でもあります。三重のフルーティーの「標準形」を1本で確かめたいならここです。

福和蔵の芳醇0.609は12本で唯一の全国上位25%(198位/上位15%)。一方で重厚0.193は下位7%、穏やか0.281は下位11%なので、「旨味の数字だけが上に出て厚みが伴わない」タイプです。

高砂は12本で唯一、重厚が下位25%を外れた1本(0.290/全国789位)で、穏やか0.436も12本の1位(上位31%)。軽快0.434は12本の最下位です。而今とは0.9964で、同じ蔵の2本が県内の「厚み側の上限」を占めています。

若戎と寒紅梅は軽快が0.564・0.568(全国上位7%・6%)で、早春に次ぐ軽さ。この2本の類似度は0.9941です。寒紅梅のドライ0.321は12本の2位で、軽さと後口の切れを同時に取りたいときの選択肢になります。

鈴鹿川と田光の0.9977は66ペアの最大値。穏やか0.403対0.378、ドライ0.265対0.316と、別の蔵なのに6軸がほぼ重なっています。どちらも穏やかが12本の上位で、鈴鹿川の0.9975は而今に最も近い値(2位は高砂0.9964、3位は作0.9952、田光は0.9940で4位)。而今と同じ方向の形を12本のなかから探すなら、この順番になります。

三重でフルーティーを選ぶときの物差し

  • 該当率が高い:28銘柄中12本=42.9%で26県4位。収録20本超の県では最上位
  • 全員に共通するのは「薄さ」だけ:重厚が全国下位25%の銘柄が11本=92%(26県2位)。12本の重厚最大値0.290は全国789位で、平均超えが1本もない
  • 平均値では個性が出ない:華やか・芳醇・重厚はどれも26県17位。やや上なのは穏やか(5位)
  • 形はそろっている:66ペア平均0.9798は該当10本以上の14県で4位。三重の寒梅を外した11本は平均0.9853・最小0.9628
  • 有名2本はほぼ同形:而今×作は0.9952(66ペア7位)。而今の華やかは12本中9位で、香りの尖りではなく中央寄りの数字

つまり三重の棚では、「華やかかどうか」だけでなく「どれも厚みは期待できない」という前提で選ぶのが早いです。実際に分かれるのは軽快(0.434〜0.616)と穏やか(0.225〜0.436)の2軸。軽さを取るなら早春・寒紅梅・若戎・KAWABU、丸さと厚みを取るなら高砂・而今・鈴鹿川・田光、香りだけを最大にするなら三重の寒梅、という3分割がいちばん素直な切り方になります。

香りより旨味そのものを軸に選ぶなら旨味とコクの芳醇な日本酒、軽さを最優先するなら軽快で飲み疲れしない日本酒、逆に厚みが欲しくなったときはどっしり飲みごたえのある日本酒が参考になります。フルーティー全般の選び方はフルーティーな日本酒の選び方にまとめました。

他県と比べたい場合、三重と最も対照的なのは栃木(同じ12本で平均類似度0.9380、14県最下位)です。厚みの方向なら岐阜、軽さなら群馬、香りの上限なら長野・山形・秋田、丸さなら福島・京都、本数なら新潟が、それぞれ三重とは違う形をしています。

自分がどの軸に寄っているかは、1分の日本酒診断で確かめられます。